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信頼

「2階はまた雰囲気が変わりますね。」


 皆は一階には枯れ草以外特に見るべきものがないと判断して、上に続く階段を登った。


「今度はちゃんと緑色の葉っぱが生えているな。」


「人参の葉に似ている?」


「それは食べ物の葉ですか?」


 アヨニが2階に生えている葉の形が家庭菜園で育てたことのある人参に似ていると思った。

 マルク達の世界には人参がなかったので、それが何なのか分からなかった。

 アヨニが根菜だと頷くと、抜いてみようと騎士の一人が近づいた。


「待って!サウナ!」


「!どうしたんだよ。いきなり大きな声を出すなよ。」


 頭に響くくらいの大声で止められたサウナは耳を抑えながら訴えた。


「それを抜いたらダメ。」


 騎士の一人が2階の解説板を指差しながら見てと言った。


「マンドラゴラ(狂乱(きょうらん))?」


「マンドラゴラは抜いたら催眠性の大声を発して相手を発狂させる危険は植物です。」


 アヨニはマンドラゴラのことを知らなかったので、マルクが説明し出した。


「狂乱とはこのマンドラゴラの品種名の様ですね。」


「でも、名前と違って発狂性は無くなっている様ですよ。」


 マンドラゴラ(狂乱)

 精神安定剤として最高級の物を造るのに、絶対に必要な物であるとともにこれ自体が発狂性を持つ危険な植物である。

 根のところに顔に似た部分がある。

 口に似た部分から発狂性の声が聞こえてくると奇跡的に廃人にならなかった者達が証言してきた為、昔はマンドラゴラは声を発すると信じられてきた。

 その正体は高濃度の幻覚成分がマンドラゴラを土から抜いた時についた傷から気体として漏れ出すのが原因であることが研究から分かった。

 そんなマンドラゴラを品種改良して産まれたのがこの狂乱である。

 この種は皮が硬い為、土から抜いた程度では気体を発生させることがないのである。

 それに加えて、薬効を高めることにも成功した。

 この種は一歩間違えれば超強力な麻薬にもなるが、使い方次第では最高な精神安定剤が作れる物である。


「じゃあ、抜いても良かったじゃないか?」


「ガサツなアンタが抜いて、マンドラゴラに傷でも付けてみなさい。アヨニ様にも迷惑が掛かるのよ!」


「な!なんだと!!」


 サウナは自分が侮辱された事に憤慨して騎士団の中で一番小さい騎士に怒鳴り出した。


「私の何処が!ガサツだって言うんだ!」


「此処に来る前からずっとガサツでしょう!生け取りの任務でいつも半殺しどころか!九分九厘殺しているじゃない!」


 周りの騎士達はまた始まった。と言う風に呆れていた。

 どうやら、この二人は犬猿の仲のようだ。


「お前ら!それぐらいにしろ!主様に恥を晒すな!」


「「年増の行き遅れは黙ってろ!!」」


 一瞬にして空気が凍り、他の騎士達も我関せずを表しながら、アヨニに被害が行かないように前に立ってこれから起きる惨状を見せないようにしていた。


「ほう、よく吠えたな。貴様ら。」


「あ、ち、違うんだ!団長、これは言葉の綾で………」


「そ、そうよ。誰も、団長が結婚できないババアなんて思ってないわよ。」


 プチンと言う音がアヨニには聞こえた気がした。

 その瞬間、凄い轟音と共に犬猿の二人がマンドラゴラの様に神だけ地上に出て地に沈んでいた。


「だ、大丈夫なの?あれ?」


「大丈夫でございます。我々の騎士団の頑丈さはどの騎士団より丈夫でしたので、あの程度の事は日常茶飯事でした。」


 こんな事をしているから。頑丈さナンバーワンになったのではとアヨニは呆れると同時に安心していた。


「む、お前達、先の発言は許そう。もう出てきて良いぞ。」


「ど、どうしたんだ?団長、今回はやけに仕置きが少ないな。」


 この後、無理矢理地面から引き抜かれて説教を永遠とされるのがいつものマルクの仕置きだったが、地面に叩き込まれるだけで終わった事に不気味なものを見るようにサウナはマルクを見ていた。


「そうね。何があったの?」


「サウナも、ヤニも、そんな疑わしい目で見るな。主様を見て分からぬか。」


 サウナとヤニは顔を少しだけ地面から出して視線をアヨニに向けてみたが、さっきまでと何も変わらずにオドオドしているようにしか見えなかった。


「何も変わりがないように見えるが?」


「そうね。私達を見て心配しているようにしか見えないわ。」


 マルクは二人の感想を聞いて、まだまだだなと言った風に目を向けて答えを言った。


「主様の纏っている鎧が薄くなっている。さっきの仕置きと他の者が説明したのだろう。我々の実力を見て少しばかり信頼してくれたのだ。」


 そう言われた二人は目を凝らして見たら、確かに少々薄くなっているように見えるが、どう見ても誤差判定をくらいそうな変化であり、それを見た瞬間理解できたマルクが異常なだけで私たちに分かるか!と思った。


「最初はあまりの鎧の厚さに落ち込んだが、信頼とは目に見えないから。不安になる事も、揺らぎやすくもあるが、目に見えて信頼を勝ち取っていっていることが分かるとモチベーションが上がるというものだな。」


 それは二人も同意見だった。

 主人に裏切られる事も、仲間を裏切った事もある修羅場を生き抜いてきた騎士団がアヨニを慕うのは分かりやすい指標があるのも一因だった。

 この鎧が無くなった時、アヨニから全面の信頼を得られていると思うと皆はやる気を上げていた。


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