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万能植物園

「団長。なんで建造物ガチャからなんですか?」


 マルクの言い方から何か理由があって、建造物ガチャを先に使う様にアヨニに言っていることを長年の付き合いの団員達は分かった。


「建造物ガチャの結果によっては今後の動きが変わってくるからだ。」


「ど、どう言うこと?」


 アヨニは結局ガチャは回すのに、順番がそこまで大事なのかと思っていた。

 全てのガチャを引いた後に今度の事を方針を固めようと思っていたからだ。


「分かりやすく言えば建造物ガチャの結果次第では他のガチャは見送ると言う事です。」


 ガチャに使用期限はない。

 回数も溜まっていく方式なので、今回さないといけないわけではないが、この何もかもが足りない状態で溜めておく理由はない筈だった。


「例えば、素材ガチャでかなりレアな素材が当たったとします。」


「うん。」


 未だに理解出来ていないアヨニの為に例えを交えてマルクは説明し出した。


「ですが、それが保存が難しいものだった場合、活かせる頃にはダメになっている可能性が高いのです。」


 それは素材ガチャだけに言えることではなかった。

 種子ガチャでもそれは言えた。

 窓から一切水源や明らかに植物を育てるのに適している様に見えない土壌からは種子ガチャを回しても保存も出来ずにダメにする可能性が高かった。


「なので、建造物ガチャの結果次第では素材と種子が使える。少なくとも冷凍保存ができるまで回さない方がいいと具申します。」


「確かに、そう…だね。」


 マルクの説明にアヨニは納得して建造物ガチャを回す事にした。

 ガチャの種類を変える方法は召喚台で設定を変えるだけの簡単設計になっている。


「え?」


「あ、主様!大丈夫ですか?!」


 アヨニが台に手を置いた瞬間、一瞬にして生えた棘がアヨニの手を突き刺した事に驚いて騎士達は慌てていた。


「大丈夫だよ。」


「し、しかし………」


 明らかに貫通しているアヨニの手を見てマルクは困惑していた。さっきまで弱気で人見知りなアヨニからは想像できない痛みへの耐性とその異常性を何も感じていないアヨニに不気味さを感じていた。

 生来のものではない事は今までのアヨニの動きなどからは推察する事ができた。

 どう見ても素人な動きと条件反射もしない痛みの耐性で特異性Sは自分達が思っているより主であるアヨニに影響しているのではないかと考え出した。

 そうこう考えていると台が光り出した途端、地震が起き出した。


「これは、当たりかな?」


 建造物ガチャ

 万能植物園。

 夏季の植物だろうと、冬季の植物だろうと一緒に育てる事が可能。

 ちゃんと世話したら一切病気にもならず、生育する事が可能。

 10メートル以内なら樹木も生育が可能である。

 三階建てである。

 おまけに三つの種が付いている。


「こんなのが当たった。」


「やりましたね!植物園なら何か食べ物もあるでしょう。もし、すぐに食べれるものが無くても植物を育てる為の水がある筈です。」


 これで水分不足で死ぬ事はない上に、もしかしたら食糧問題を解決するものが植えてあるかもしれないと己の主人であるアヨニの運の良さに騎士達は感謝していた。

 戦争で餓死の苦しさは味わい死にかけた事のある騎士達からしたら態度には出していなくても内心は焦っていた。


「横に扉が出来てる。」


 さっきまで外に出る扉と窓しかなかった部屋の外壁に新しく扉が出来ていた。


「行ってみましょう。」


 ガチャで出来てきた植物園の簡易説明書ではもう分かることがないので、何があるか分からないが植物園に入ってみる事にした。


「いい空気だなぁ。」


「そうですね。澄んだ空気ですね。」


 アヨニが和んでいると、マルクが同意してきた。

 それに少しビクッとなったが、マルクに慣れてきたのか、少し息を整えたら落ち着いた。


「でも、枯れた草しかない。」


「おかしいな?説明書にはどんな植物も育つと書いてあったよな?」


 一階部分には枯れた草が一面に広がっていた。

 皆が説明書と違うと疑問に思っていた。そんな中、周りを探索していた者達が戻ってきた。


「これが正常な状態みたいよ。」


「どういう事だ?」


「そう言う種だって書いてあった。」


 見回りしていた者の案内で植物園らしい解説板がある所までやって来た。


「枯れ草?」


「そうです。この草は枯れている様に見えているこの状態が正常だと書いてあります。」


 アヨニが解説板を読んでみるとそこには枯れ草とこの植物の説明が書いてあった。

 枯れ草

 乾燥した地帯に生えている草であり、乾燥に強く生命力が高いため、一年に一回も雨が降らなくても死ぬことがない特性を持つ。

 草を刈り取れば、そのまま干し草として活用する事が可能であり、家畜を育てるのに有効である。

 昔はその細くて頑丈な繊維から糸や布を織っていたと言われている。


「おぉ、これはかなり優良なものが早速当たりましたね。」


 アヨニは家畜がいない今の状況ではそこまで当たりの様に思えなかったが、マルク達はそうではない様だ。


「主様、これを加工したら暫くの衣服や寝床を整えることが出来ます。」


 騎士団は野宿や遭難を経験していた為、プロには及ばないが、衣服やベッドを造る程度の技術を持っていた。

 暫くは硬い床や召喚時の鎧の下に着ていた服を着回す事を覚悟していたので、これは喜ばしい事だった。


「…………思っていたより皆んなって優秀?」


「やっと分かってくれたの?主様、そうだよ!僕達はこう見えてエリートなんだから。」


 一人の元気っ娘がアヨニの騎士団に対する印象が好印象に傾いたのを見て、ここぞとばかりに優秀さを主張し始めた。


「コリー、落ち着け。主様が怖がっている。」


「陽キャ、怖い。」


「あれ?」


 枯れ草に隠れて丸まるアヨニを見て自分の予想とは違う反応にコリーは不思議がっていた。

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