ピーキー
「あ、え、これを………」
やっと落ち着いた少年はマルクに名刺サイズのカードを渡した。
「これはステータスカードじゃないですか?!幾ら味方だからって他人に見せて良いものではないですよ!」
マルクは自身の事を主が意外と信頼してくれているのではと思って主人の顔を見てみるとあっ、これは上手く話せないから渡したんだなと分かるくらいオドオドしていた。
ステータスカード
所有者グオワ・アヨニ
種族神の眷属
レベル1
規模・村
ステータス
オールE(特異性のみS)
スキル
隠キャの壁
信頼のある者ほど壁が薄くなる。
壁がなくなればその者は信頼を勝ち取ったと言う事である。
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……………
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………………………
以下………これがずっと続いている。
「凄い極端なステータスですね。」
「主様の名前、アヨニ様って言うですね。」
「様なんて、やめて……」
そんな悲痛なアヨニのか細い叫びはアヨニのステータスカードを見ている騎士達の声によってあっさりと消されていた。
「特異性以外オールEですか。」
「凄いよね。この文字化けが凄いスキル含めてこれが特異性がSなのかな?」
「主様にはこのスキル群が読めるのですか?」
「よ、読めるよ。効果を理解しないと分からないだけで知ったら分かる様になっているから。」
か細い声で応答するアヨニに幾らか慣れてくれたとマルクは少し安心した。
「なら、私たちにもスキルを教える必要はありません。」
「そうだね。敵に知られる可能性を限りなく下げた方がいいね。」
隠キャの壁みたいに偶然知ってしまったスキルは仕方ないとして、主様自ら教える必要性は主様のステータスからデメリットしかないとマルク達騎士団は考えた。
「このステータスならバレたらいけない系が多いだろうしね。」
「あぁ、アヨニ様の安全のためにはこのまま知らない状態を継続してもらった方が安全だろう。」
それによって自分らが死ぬ様なミスに繋がったとしても仕える主人に危害が及ばないならそれで良いという騎士団の統一意思から判断した。
「それにしてもピーキーね。訓練で多少は伸ばせるとしてもあまり変わらないでしょう。」
「そうだな。それならレベルを上げてもらって長所を伸ばしてもらう方が良いだろう。」
トントン拍子に自分の育成計画が勝手に進んでいくのを見て自分はどうしたら良いだろうとアヨニはオドオドしていた。
「まぁ、落ち着け。まずはこのサバイバル状況下になっている状態をどうにかしないと主様を鍛える前に全滅してしまう。主様。」
「な、な、何かな?」
いきなり話しかけれて挙動不審な態度を取って慌てていた。それをマルクはアヨニのそう言う行動には慣れたので笑顔で流した。
「まだ、回していないガチャがあるではないですか?」
「う、うん。まずは部下ガチャからかな?って思ったから他はまだ回していない、よ。」
部下ガチャとはその名の通り部下になってくれるものが出てくる召喚装置であり、人だけではなくありとあらゆるものが出てくる。
他にも建造物ガチャや食糧ガチャなどがあるが、部下ガチャ以外は召喚権があれば回せると言うわけではない。
最初は部下ガチャ以外の5種がランダムで手に入るのである。種類がかぶることはないが、白い部屋一つしかないこの星で生きていくには最初の運が肝心なのである。
「私達に今最も必要なのは食糧です。それも今は質より量です。」
マルク達騎士団が召喚された事によって最初に渡された2週間分の食糧と水(二人分)では圧倒的に足りないのであった。
本来なら当たりの部類に入る筈のマルクなのだが、このインフラも何も整っていない状態では餓死エンドがあり得るハズレになっていた。
「外で食糧を取って来れるかも知れませんが、窓から見える景色は赤茶色な砂漠しか見えない状況で食糧探しは危険です。此処はどうかガチャで何か当てて欲しいところです。勿論、いざとなれば主様が飢えない様に死力をとして頑張る所存です。」
マルク達は最悪カニバしてでも主の為に生き残ろうとしていた。
「ぼ、僕は要らないから気にしないで下さい。」
「そんな!遠慮はいりません!この場の誰よりも主様が大切なのです。」
マルクはアヨニが自分達を気を使っての発言だと思った。
「そうじゃなくて僕にとって食事も睡眠も娯楽で、生きるだけなら光があれば大丈夫だよ。」
「え?そうなのですか?」
神の眷属とはそう言うものなのかとマルクは不思議に思ったが、アヨニのスキルにそう言うものがあるそうだ。
「だから、僕の事は気にしないで。」
凄く弱々しく言うアヨニを疑う訳ではないが、マルクは本当なのかと不安になっていたが、結局のところ分かる訳がないのでそんな仮定は無視する事にした。
「では、主様はどんなガチャをゲットしたのですか?」
「建造物ガチャ、素材ガチャ、武器ガチャ、種子ガチャ、ランダムガチャの5つだよ。」
四つのガチャは名前の通りだが、ランダムガチャとは全てのガチャの内容が出るが、狙ったものが出る確率は限りなくゼロなガチャである。つまり、闇鍋ガチャである。
「そうですか。取り敢えず、建造物ガチャから引きましょう。」