リクカイクウ
「それじゃあ…引こう………」
マルク達が遠征から帰ってきてから一日、久しぶりの大人数で寝たアヨニは早朝の日課であるその他ガチャを引こうとしていた。
少し寝惚けながら召喚台に手を置いて起動した。
「まっ!眩しい!!」
台が今までにない演出を起こしてアヨニの目を眩ませる程の光量を放っていた。
「ど!どうしたのですか?!!」
薄暗い時間に正午の様な光が拠点を包んだ為、マルク達が異変を感じて急いで駆けつけた。
そこには光で全く見えないアヨニの姿があった。
そして、徐々に光が収まると何かを持ったアヨニがそこに立っていた。
「アヨニ様!大丈夫ですか!!!」
「うん、大丈夫………」
アヨニは心配そうに近づいてきたマルクを落ち着かせていた。
「さっきの何だったんだ?」
「あれは多分大当たり演出だと思う……」
ガチャシステムにある大当たり演出は最高レアのものが確定で当たるものであり、かなり運が良い演出だった。
それで当たったのが、このアヨニの手にあるものだった。
「これは?シャーレですか?」
「たぶん?」
ヘェイがアヨニに手に持っているものが前世でよく見た事があるシャーレに酷似している事に気がついた。
大当たり品にしては小さく変哲のないシャーレに見えた。
アヨニの手にはそのシャーレについての説明書も付いていた。
「変異菌、リク、カイ、クウ。」
「変異菌?」
変異菌リクカイクウ
このシャーレでは常に変異菌リクカイクウが培養されている。
リクカイクウは生物に付着後、体内に侵入してその生物が細胞を再生、増殖する度に細胞を変異させる。
汚染された生物が産んだ子は変異個体として必ず産まれてくる。
リクは陸、カイは水中、クウは空中に棲んでいる生物に付着しより適応した変異になりやすくなる。
「これ………ミミズに付着したら新しい生物を見つけた事にならないかな?」
「そうですね。進化を促すと書いてありますから。ミミズだけでは流石に無くなる………のでしょうか?」
マルクはミミズが変異して足や手が生えた姿を想像してムカデには見えるけど、それ以上変異しても蜘蛛になったり、蜻蛉になったりする光景が見えなかった。
「原生生物の定義によりますが、この星で育ったのには変わらないのですから。大丈夫だと思います。」
「アヨニ様、それを使えばより植物園の植物の品種改良が進みます。」
ヴムも植物園から光を見てこっちに来ていた。
変異菌を見てこれは植物にも使えると直感的に判断していた。
例えば、これを五味花に使えば未知の六味になる可能性があった。
「シャーレを開けると自動的に散布されるから。一日外で開けていたら風に乗って世界中に繁殖、適応していくらしい。」
この変異菌は菌自体も変異をし続けて汚染した生物をより変異させる様に進化するのである。
「その後、シャーレをコンポスターに投入したらいいかな?」
「はい、コンポスターの中で菌を繁殖させたら肥料に含まれます。」
肥料から植物に菌を付着されそのまま変異させる。
それからアヨニのためになる個体を残す事でより良い植物を作り出せると言う算段であった。
「取り敢えず、外に行ってミミズに直接付けてから空中にシャーレへ散布して何週間様子を見てみよう。」
アヨニ達は運良くいたミミズに菌付着させるとわざと逃がした。
その後、拠点の外にシャーレを開けて置いておく事にした。菌自体は菌らしく一切見えずちゃんと付着しているかは分からなかった。