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帰還

コロナも治って気力と体力が回復したので投稿を再開します。宜しくお願いします。

 アヨニは砂漠に一人立っていた。


「あ………」


 砂漠の奥からゆらゆらと揺れ動く人影が薄らと見えた。それはこちらに近づいて来て人影が鮮明になってきた。


「おかえり。」


「ただいま帰りました。アヨニ様。」


 息絶え絶えながら歩いて来るマルク達は声をかけられてようやくアヨニの存在に気がついた。

 マルク達の服装は所々服が破れては血が乾いていた。

 その凄惨な姿からアヨニは砂漠の調査を大変さを理解した。


「無事で良かった……」


「アヨニ様はこんな所で何を?」


 此処は拠点がすぐそこにあるとはいえ外である滅多に外しかも扉から離れたこんな場所にいることがマルクには不思議だった。

 思考が鈍っている他の団員達もそれを聞いて確かになぜ?と共に自分達を待っていてくれたのではと思ってしまった。

 中々帰って来ない自分達を心配して少し山状に高くなっているこの場所で自分達の帰りを待っていたのではと考えてしまった。


「うーん………心配だったから……ね」


 アヨニは恥ずかしそうに言った。

 それを聞いた団員達はあれほど心を開いてくれなかったアヨニ様が少しは開いてくれていたのだと疲れた心も相待って涙を浮かべる者もいた。

 そんな中真っ先に喜んで歓喜の涙を流しそうなマルクが無表情でアヨニを見ていた。

 マルクは団員達の前に立っている為、他の団員達はその事に気がついていなかった。

 アヨニはそんなマルクが見えている筈なのになんとも思う事なく早く帰ろうと拠点に足を動かした。


「なんとなく分かりました…」


「団長?何か言いました?」


「いや、急ごう。」


 マルクは隠す様に笑顔で団員に答えた。

 それは今まで見たマルクの笑顔で一番綺麗で不気味な笑みだった。


「おかえりなさいませ。皆様。」


 拠点に入ればそこにはフードからドレスに衣装変更したドライアドの姿があった。


「イメチェンではなさそうだな。」


「えぇ、やっと身体を作り終えましたから。衣装にも気を使う事が出来たんです。」


 言わばこの衣装こそが自分達の本当の服である。

 見た目も美人だとハッキリ分かる顔立ちをしていた。ヴムの顔は何処となくマルクに似ている気がした。


「ヴムって?団長に似てない?」


「皆様の中でマルク様の容姿を中心に参考させて頂きました。」


 ヴムはそう言うとマルクを中心とした容姿と肉体に自分なりのオリジナル要素を入れつつ他の団員でイメージを補完しながら作ったそうだ。

 だから、マルクに似ているが、姉妹程度の違いにはなっている。


「じゃあ、私の事を姉ちゃんと言ってくれて良いのよ!」


 それを聞いたマルクはそれなら自分の姉妹の様なものなのだから。

 自分の事を姉と呼べと強要してきた。


「遠慮しときます。」


 ヴムは苦笑いを浮かべながら断った。

 団員達はそりゃそうだと思った。


「他のドライアドは?」


 他のドライアドに目線を向けたが、そこにはまだフードのままのドライアド姉妹の姿があった。


「私達はまだ誰を基本ベースにするか、決めてない。」


「その内、決めますわ!」


 気にしていない風を装っているが、肉体を構成していないと色々不便なので話しながら今も肉体構成に思考の大部分を使っている。


「皆様、これを。」


「これは何?」


 ヴムが渡したのは黄色や橙色に近い茶色の小さな球体だった。

 少しベタつく感触と硬い感触が指から伝わった。


「マルク達は?飴を知らないのか?」


「飴ですか?私達の世界には無かったですね。宝石の類ですか?」


 ヴムが渡したのは飴玉だった。

 アヨニが保存食と携帯食用に五味蜜を火にかけて水分を飛ばして球状に成形したのである。

 でも、マルク達の世界には飴という菓子は存在しなかったようで宝石か?と光に照らして眺めている。


「これはこうやって舐めて舌で溶かして食べるものだよ……」


 アヨニは恥ずかしそうに舌で飴を転がすところを見せてマルク達に食べ方を教えた。

 ジッと見るマルク達の目線に怯えて飴を吐き出しそうになるのを堪えて口元を隠した。


「なるほど、これ確かに甘くて美味しい上に蜜と違って手もあまり汚れない上に食べやすいですね。」


「おっ!いしいーー!!」


「五味蜜の味も更に良くなっている。」


 飴の食べやすさに感心する者、飴の味を楽しんでいる者、飴の材料となっている五味蜜の質が自分達が遠征に行った前より良くなっている事に驚いている者に反応が分かれていた。


「まぁ、水分を飛ばして作っているから。舐めすぎていると喉が渇くんだけどね……」


 砂漠の遠征用には不適切な携帯食な為、そんなに焦って作らなかったが、アヨニはお菓子の中でも飴が特に好きだったから。作りたかったのである。

 だから、マルク達がいなくてやることが制限されている遠征中に作ってみたのである。


「果物があったらより美味しくなるんだけどね……」


 アヨニが残念そうに言っているのをマルクだけは見逃していなかった。

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