ドライアド姉妹
「それでアンタ達は何が出来るの?」
騎士団の皆はヴム達ドライアドの事を何も知っていなかった。
説明書には詳しく書かれていたかもしれないが、あんな目次もなく雑に書かれた説明書なんて読むだけでも億劫である。
紙を安定供給することが出来るなら速攻で説明書を作り直す事にしている。
これからやって来るであろう新人達のためにもこう言うのは予め用意している方が色々楽になるのである。
そんな事は置いておいて、1日では今重要な部分を抜粋して読むことしか出来なかったのである。
「なんで?ヤニはあんなに高圧的なんだ?」
「ほら、アイツ、元から新入りには当たり強いだろう。」
ヤニは仲間を誰よりも大切に思っているが、それゆえにまだ仲間と認めていない者に対しては冷たく当たる傾向があった。
それに部下ガチャはまだ回す予定はなかったので、出るとしたらその他ガチャだかであるが、それも部下は出なかった。
だから、当分は後輩は出来ないと安心していたのである。
「あぁ、見えてアイツ、アヨニ様酷くないけど人見知り気質だからな。」
「そこ!うるさい!」
自分の事を言われている事に気がついたヤニが恥ずかしさで顔を赤くしながら怒りを仲間にぶつけた。
「それでアナタ達は何が出来るのよ!」
その怒りはヴム達にも八つ当たりしていた。
「私達は植物園の完全管理とそれぞれの階層にある植物の特徴から能力を得られます。」
「完全管理と能力取得?」
後半はなんとなく分かるが、前半は管理と何が違うのかと思っていた。
「あの植物園は私たちがいないと未完成なのです。」
「え?そうなの?」
マルクはあの便利な植物園が未完成だと聞いて驚く共にガチャ召喚の際に付与された知識にあったものを思い出した。
「施設拡張のこと?」
「あら?知っていましたか。その通りです。植物園は私達という付属品が出来て本来の効果が得られます。」
施設拡張とは召喚された施設にまた新たに技術者か、ガチャで作られた併設施設や付属品が付いて完全な施設の効果を発揮するというものである。
そういうものは大抵が施設拡張をしていないくても充分機能している為、その施設に施設拡張という成長性に気がつかない事が多い。
「その効果は?」
ヘェイはメモ帳とペンを取り出してヴムの言葉をまとめようとしていた。
このメモ帳とペンはヘェイが召喚時から持っていたヘェイの付属品である。騎士団の皆んなが着ている鎧と変わらない物である。
ただ紙の補充がない状況ではこの変哲のないメモ帳でも貴重な為、説明書など他で代用できる物がある場合は使わない様にしていた。
因みに砂漠の調査で小さい地図としてメモをしていた。
今回は拡張機能で増える機能が植物園の機能が載っているとは限らないのでメモっておく事にしたのである。
「私達はマスターが望む方向に品種改良、そして、植物園外の土壌改善が出来ます。」
例えば五味花は美味い蜜を作る奴だけを残して蜜の味を固定にしようとしているが、それを円滑にする事が出来ると言っているのである。
その他には今は食べないと蜜の味を確認する事ができないが、3階担当のトゥに掛かればそんな事は見ただけで分かるのである。
「え?私、お役御免?」
それが出来るという事は昨日まで蜜を食べては選定していたアーシはしなくていいという事になるのである。
「そんな事はありませんわ。私達はまだ産まれたてなので味に関してまだ成長段階なんですわ。なので、この蜜の味で良いのか意見が欲しいのですわ。」
自分だけの役割を貰えたと思っていたアーシはそれが無くなって落ち込んでいた。
それをトゥはそんな事はないと別の仕事を言ったのである。
味覚を成長させるのにも思考のリソースが必要なので、節約したいトゥとしてはそれを手伝ってくれる人がいるなら大歓迎であった。
「待って。絶対にアーシだけには聞くなよ。他の者の意見も聞けよ。」
「はい?分かりましたわ。」
このまま進めていけば後々大変な事になりそうだったので、トゥにアーシだけではなく他の味覚も取り入れろと念を押したのである。
何を当たり前のことを?首を傾げる産まれたてのトゥにこれは伝えて正解だなと騎士団の皆は思ったのである。
「それで土壌改善ってどうするのよ?」
こんな水も見当たらなかった砂漠で植物がちゃんと育つとは思えなかった騎士団は外での菜園拡大は半ば諦めていた。
それに土壌改善しようにも改善する物が今、何もない状態だった為、植物園が当たったのは幸運だと思っていたのである。
そんな中での土壌改善の可能性は吉報だった。
「実践する前にそちらの肉塊を使って良いですか?」
「あぁ、私たちが食べる分を残してくれたら、後は使って良い。元々、植物園の肥料にするつもりだったからな。」
植物園には肥料生成する巨大コンポスターが設置されていた。
そこに倒したミミズの肉を食べきれない分を入れようとしていたのである。
「まぁ!そうだったのですね。ありがとうございます。では、遠慮なく使わせて貰いますね。」
自分達にもお土産があった事が嬉しくてヴムは張り切り出した。
肥料は自分らの肉体構成の参考にもなるので肥料用に残しておく事にしていた。
そもそも、肉体構成情報も数多の肥料から参考にする筈なのだ。
何度も言うが、こんなに早く産まれる訳がないのである。
「これは肉塊から芽が出ている。」
「この色の葉は枯れ草かな?」
「その通りです。私の階層は枯れ草しかありませんので誕生時に付与された能力は全て枯れ草の特徴に起因するものになりました。」
本当だったら長年の植生から多種多様の能力が産まれるはずのドライアドの特性が一種しか植えられた事のない階層だった事によってヴムの能力は枯れ草に集中したのである。
「この植物は枯れ草ですが、私の力によって生命力と繁殖能力を強化された種です。死骸の肉も、骨も、培養土に変えてそこから発芽するのです。そして、そこからまた種を散布して広く繁栄していきます。」
ヴムが獲得したのは枯れ草の生命力と繁殖能力、そして、自分の階層にある植物を強制的に発芽させて植えた環境に適応できる様に強制改良させる能力である。
「それに私の植物が繁栄している場所を知覚する事も可能です。」
「おお〜便利ですね〜」
ヴムの能力は多種多様の能力を得られなかった代わりにその全てを一種の能力に集中した結果、探索するのにおいて最高位の能力を得られたのである。
これがこの砂漠がどこまで続いているのか、水場がどこにあるのかも手に取るように分かっていくのである。
「まだ、完全に能力を扱える訳ではありませんので、現在のことしか分かりませんが、ゆくゆくは過去も未来も知覚出来る様になりますよ。」
頼もしい限りである。
これなら一点特化も悪くないのではマルク達は思っていた。
「私達は完全に能力を扱うには脳が足りないので、出来ればこれからは生物の脳を肥料として持って帰ってくれると嬉しいです。」
これが一点特化のデメリットである。
ドライアドのデフォルトの脳は万能に力が使える様にするための構造になっているため、逆に一点特化の特化型の脳を何処からか用意しないといけないのである。
ヴムの場合は探索系や知覚に富んだ種の脳を大量に分析してカスタムしないといけないのである。
体も出来ていない今の状態ではそれに取り掛かれるのはいつになるの目処が立っていない状況である。




