第2章~居酒屋に入店する迄
縁結びの神社に参拝に来ているという事は、積極的に出会いを求めている男女がいるのは自然な事でしょう。
自分は席に戻ると連れの2人に話し掛けました。
天野「あのさ、ここの休憩所には出会い待ちの女性達がいっぱい集まっているみたいなんだけどさ、さっき見た限りだとうちらと同じく3人で来ている女性が2組いるから声を掛けてみない?」
矢沢「へー、そうなんだ」
天野「パッと見だけど、矢沢君好みの黒髪ショートの人もその中にいたよ」
矢沢「マジで!どれどれどの辺かな?」
矢沢君は興味深く辺りを見回しましたが、3人組の女性がよく見えなかったのか少し首を傾げました。
そこで、矢沢君は両手を太ももに当てて、徐に立ち上がりました。
矢沢「ちょっとここで待ってて、俺も一周して確かめて来るよ」
うちら3人は、ここでの最大の目的が時間潰しだった為、女性の視線を感じても全く緊張する事はありませんでした。
自分が携帯の時計を見ると、西口店の開店まであと20分でした。
居酒屋の周辺で待つとしても、一番乗りを目指すなら、そろそろここを出ないとなりませんでした。
矢沢「断られても全然構わないけど、俺は左奥に座っている3人組に声を掛けてみるけどいいよね?」
天野「いいんじゃない、別にダメでもそのまま居酒屋に直行すれば後腐れがないからね」
矢沢君と自分が意気投合すると、ここで吉村君がイライラしながら異を唱えてきました。
吉村「俺はそんなの真っ平ゴメンだね!」
天野「えっ、何で?」
吉村「ていうか、うちらの飲み会に知らねえ奴なんか誘うんじゃねえよ!」
矢沢「そう言うなよ、偶には華がある方がいいじゃないか」
天野「そうだよ、ここに来たのも何かの縁なんじゃないの?」
吉村「ふざけんなよ、それだったら俺はマッハで帰るからな!」
矢沢「まあまあ、落ち着けよ~、まだ決まった訳じゃないんだしさ」
天野「そうだよ、どうしても嫌なら無理強いはしないよ」
矢沢「分かったよ、今回は諦めるから」
吉村「ちっ、分かればいいんだよ!そんな事よりとっとと居酒屋に行こうぜ!」
吉村君は昔から排他的な性格だったので、同意を得られる事は出来ませんでした。
矢沢「じゃあ、そろそろ飲みに行きますかな」
天野「そうだね、いい席が無くなちゃうと台無しだからね」
うちら3人が席を離れると、驚いたことに後を追うように2組の女性も席を立ちました。
そこに、透かさず椅子待ちをしていた女性が席に着きました。
男女共お互いに、声掛け、声掛け待ちに至らなかったからなのかも知れませんが、ここで数人の男女が境内を出ました。
うちら3人と逆方向に帰って行った女性をチラッと見ると、いずれも2人組の女性でした。
もし、3人組の女性に声を掛けていたらどうだったんだろうか?
それよりも、うちら3人と同時期に境内を出た女性は、少なからず声を掛けられるのを期待していたのだろうか?
そうだとしたら、吉村君のあの発言により機を逸したんだろうな…。
自分は、そんな事を思いつつ、モヤモヤとした気持ちで居酒屋に向かいました。
先客がいるかどうか気を揉みながら居酒屋に向かって歩いて行くと、まだ入店待ちのお客さんはいませんでした。
何はさておき、我々は念願の一番乗りが出来る事が確定しました。
矢沢「まあ、飲めればいっか!」
吉村「待たされた分ガッツリ飲まないとな」
天野「チェーン店でも開店時間が違うとは盲点だったね」
ここで数分待つと、やっと西口店に入店する事が出来ました。