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誤入金狂想曲  作者: サエキ タケヒコ(旧 馬鹿之介)
19/35

19 サユリ


「待って今、開けるから」


 サユリは解錠してドアを開いた。


「急に呼び出してどうした?」


「これを渡したかったの」


 サユリは父が好きな高級ウイスキーを差し出した。昼間、街に行った時に買ったものだ。涼介には二人で乾杯をするためだと偽った。


「おお、シングルモルトの17年ものじゃないか」


「お店のお客さんからもらったの。でも、私はウイスキーとかの味は分からないからお父さんに飲んでもらおうと思って」


「こんな高価なものをもらって、本当にいいのか?」


「当たり前でしょ」


「ありがたい。それにしてもすぐに出てこないから心配したぞ」


「ごめんなさい。うたた寝していたの」


「疲れているんだな。あんまり無理するなよ」


「お父さんこそ」


「じゃあ、これはありがたくもらっておく」


 部屋にあがろうともせず、ウイスキーの瓶を大事そうにかかえてすぐに帰って行った。


(私のところに長居すると本妻が嫌がるのね)


 サユリは電話でタクシーを呼んだ。


 ほどなくしてタクシーが来た。


 部屋を出る前に、中を見渡した。


(もうこの部屋に戻ってくることは無いのね)


 忘れ物が無いかと確認するとタクシーに乗り込んだ。


「どちらまで」


「駅まで」


 駅に着くと、サユリは東京までの切符を買った。


(ついにこの町から出て行けるのね)


 途中の駅で特急列車に乗り換えた。


 窓の向こうは夜が駆けていた。


 窓ガラスに映る自分の顔は少し寂しげだった。



[現在の給付金の残金4954万円]



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