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誤入金狂想曲  作者: サエキ タケヒコ(旧 馬鹿之介)
18/35

18 初体験


「あなたも脱いで」


 そう言うと、サユリが紫色のブラをとった。


 後ろ手で止め金をはずすサユリの仕草が、涼介の欲情を刺激した。


 涼介の心臓がバクバクした。


 24年間、彼女がいなかった涼介にとって、これが初体験だった。




 銀行で金を移動した後、サユリは一度部屋に戻り東京に持ってゆくものを荷造りしたいと言った。


 二人でロードサイドのステーキ屋で昼食を取るとサユリの部屋に戻った。


 サユリが荷造りをする横で涼介はゴミ出しを手伝ったりした。


 一通り片付き、途中のコンビニで買っておいたサンドイッチやおにぎりを食べると睡魔が襲ってきた。


 それもそのはずだった。


 涼介はここ数日の間、ほとんど寝ていなかった。


「少し休む?」


 サユリの声にうなづくと、涼介はそのまま眠りに落ちてしまった。



 目を覚ますとサユリがいた。


 夢かと思ったが、夢ではなかった。


「……サユリ」


 涼介はサユリを抱き寄せた。


 唇を合わせた。


 涼介の口の中に小さい生き物のようにサユリの舌が侵入して来た。


 舌を絡め合わせた。


 そして、サユリの乳房に手をやった。


 今度は拒絶されなかった。


 涼介は、サユリのサマーセーターを脱がせた。


 紫色のブラジャーに包まれた形のよい乳房があらわになった。


 ブラジャーをはずそうとしたが、うまくできなかった。


「私がやるわ」


 サユリが言った。


「でも私だけ先に裸になるのは恥ずかしいから、あなたも脱いで」


 涼介は服を脱ぎ、トランクスだけになった。


 テントを張っているのをサユリに見られるのが恥ずかしかった。


 ピンポン!


 その時、チャイムが鳴った。


「何?」


「誰かしら」


 上半身裸のサユリが玄関に行き、ドアの覗き穴から訪問者を確かめた。


 血相を変えてサユリが戻ってきた。


「大変、父よ」


「父ってまさか、あの……」


「そう。漁協の薮本組合長よ」


「早く服を着て逃げて。二人でこんな姿でいるところを見られたら殺されるわ」


(どうしよう)


 涼介はパニックになった。赤銅色に日焼けをした巨人のような組合長の姿を思い出した。


(最悪だ)


 慌てて服を着た。


「どうしたらいい?」


「そこの窓から逃げて」


 ドアが強く叩かれた。


「サユリ! いるんだろ! いつまで待たせるつもりだ。開けろ!」


「はーい。ちょっと待って。今着替え中なの」

 

 サユリが答えた。


「ねぇ、早く」


 幸いサユリの部屋は一階だった。涼介は窓を音をたてないように開けると、首を出して外に人がいないか確かめた。


 窓の外に出た。


「これ」


 サユリが涼介の靴を窓から外に放り投げると、窓を閉めてカーテンを閉じた。


 涼介は靴を履くと、アパートの裏の雑木林を抜けて逃げた。

 

 ひた走りに走った。



[現在の給付金の残金4954万円]


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