15 サユリの部屋
涼介とサユリを乗せたタクシーは涼介の家の前を通った。
(なんだ!)
涼介の家の前に数台の車が止まっていた。
そして何人かの男たちが涼介の家を懐中電灯で照らしていた。
「何かしら?」
サユリも怪訝な顔をして訊いた。
「さあ、何だろうね」
涼介はとぼけた。
サユリのアパートの前に着くと、涼介もタクシーを降りた。
(どうしよう。あれは絶対に自分を捕まえに来た人たちだ)
「どうしたの?」
サユリが覗き込むようにして涼介のことを見た。
「その、トイレを借りれないかい」
とっさにそう言った。
「いいわよ」
涼介はサユリの後について、サユリの部屋に入った。
とりあえずトイレを借りた。
トイレから出ると、サユリが冷蔵庫から缶ビールを二本取り出した。
「せっかくだから、飲み直してから、帰ったら」
「ありがとう」
涼介は座った。
6畳に小さいキッチンとユニットバスがついているワンルームだった。
部屋は小奇麗に整理整頓されていた。
「じゃあ、改めて乾杯!」
サユリが明るく言った。
涼介は決心した。
「サユリ、実は聞いてもらいたいことがあるんだ」
「何?」
「僕と一緒にこの町を出ないか」
「どういうこと」
サユリは驚いた顔をした。
[現在の給付金の残金4955万円]




