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Tale 23 白金の冒険者(1)

Chapter 3 開幕です!


どんな感じで進んでいくかなどの見通しは活動報告を随時更新するので、そちらをご覧ください。


では、以下あらすじです。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「お前が噂の冒険者か」


ライはギルドマスターの居室を訪れるなり、開口一番にそう言われる。その女は地位ある冒険者だった。彼女と共に、ライは呼ばれた用件を聞く。


『ギルドで一番の使いを派遣して欲しい』


そんなアルスエリア王国の騎士団からの要請に応えるため、彼らは王都へ向かう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 魔王軍幹部ナディルネアと対峙した満月の塔の一件から(はや)一か月が過ぎた。あれ以来、魔王軍に動きはない。


 ライとアルマはクエストに勤しみ、時に休養日を楽しむという、変わらぬ日々を過ごしていた。


 今日は、そんな代り映えしないと言えば聞こえが悪い生活にちょっぴりのスパイスがかかる大切な日。そう期待してライは冒険仲間(チームメイト)を連れ、もう何度目か訪れ慣れた扉を叩いた。


「こんにちは、レイネールさん」


「お呼び立てして申し訳ありません」


 グリュトシルデの冒険者ギルドを取りまとめるレイネールは今日も麗しい。お互いに軽い会釈を交わすと、既に来客がいたようだ。彼女が立ち上がって放った第一声からは――。


「お前が噂の冒険者か」


 刺々しい覇気を感じた。


 所々がボサボサの赤いイカした頭髪。寝癖か何かと勘違いしそうだが、これで髪型として成立しているらしい。確かにワックスで固めたような形跡が見られ、室内灯が強く反射する。


 そして、一体どこのスポーツファンかと思わせるフェイスペイントが数か所に。格好もこれまたストラティアでは稀有で、派手なゴージャスな衣装からチェーンが吊り下がっている。


「えっと、この人は……」


 流石のライも戸惑いを隠せない。


 以前は、扉を開ければオスカーがいた。彼は見た目こそまともだったが、口を開けば魔術には己の好奇心から中々に攻めの強い印象を受けた。


 ところがどうだろうか。目の前の彼女に至っては、格好からツッコみたくなる。


 なぜロックシンガーのような格好をしているのか、ライは甚だ疑問に思う。言動もそれ相応にボーイッシュで、その度合いはリスティーよりも濃く感じる。


 レイネールはまた一つ面白い物を見るように、秘める笑いが漏れた。


「ふふっ、この方は……」


 奇抜な格好の女性は右手で制止して、自ら名乗り出る。


「大丈夫だ、レイネール殿。私はルシア・ヴィスタ。グリュトシルデに籍を置く冒険者だ」


 見た目とは裏腹にきっちりとした言葉遣いのルシアに、ライもアルマも驚いてしまう。


「初めまして、ライです」


「私はアルマです」


「そう遠慮するな! 気さくに話してもらっていいぞ、はっはっは!」


 敬遠しがちな二人の背中を、ルシアは思いっきり叩いた。力強い振動が背に伝わり、ドンッと音が室内に鳴り響く。


 二人は考えをすぐに改めた。彼女は見た目通りの人だったと。最初の丁寧な対応は、形式的なものだったのだろう。


「あの、グリュトシルデに籍を置いているって話でしたけど、私、ルシアさんを見たことないんですが」


「ルシアで構わない。確かに籍はここにあるが、活動場所はまちまちだな」


「どうしてですか?」


「実力に見合った依頼がないと言えばいいのか? ここは余りにも平穏だからな」


 ルシアは過激を求める趣向を持っているようだ。不満そうに語るその姿からは、返って腕に自信があるようにも見えた。だから、ライはこう尋ねた。


「ルシアさんはどれくらいの実力なんだ?」


「だからルシアで構わない。一応、プラチナだ」


「「プラチナ!?」」


 目を丸くして叫んだライとアルマ。


 グリュトシルデに磨き抜かれたダイヤモンドのような才能を持つ人物がいたとは、二人は思いもしなかった。アルマはライに出会うまで、プラチナという階級はそもそも存在しているだけで、人間には到達し得ない領域だとばかり思っていた。


「プラチナと言っても、すぐになれたわけではない。私はかれこれ十年は冒険者を生業(なりわい)としているが、始めはノーマルだったさ」


「はえー……」


 アルマの言葉にならない感嘆が部屋に溶けていく。


「アルマさんも努力次第というわけですよ」


「が、頑張ります!」


 レイネールに背中を押されるアルマは、初心に帰ったようにから元気な返事をした。


「さて、レイネール殿、私たちを呼んだ用件を聞かせてもらおうか」


「はい」


 レイネールは机の引き出しを開け、コツンと小さな物同士がぶつかる音を響かせる。それを片手に仕舞い込むと、そのままルシアとライの(てのひら)に一つずつ置いて見せた。


「これは?」


 ライが載せられた水晶体を不思議そうに覗き込みながら聞く。


 ひし形に削られた、精巧な透き通った紫水晶。首にかけるための紐も通されており、アクセサリーとしての体裁は最低限整っている。


「試作した通信装置になります。魔力に反応して遠距離会話ができるんですよ」


「試作? ああ、オスカーさんと話してたやつですね」


 オスカーとの共同製作品がようやく形になったらしい。


「はい。遠く離れた地との交流は、これまで文書によることが多かったのですが……。この際、もっと気軽に連絡手段を用意できないかと思いまして製作したのが、そちらの品になります」


「何か使用に注意点はあるのか?」


 傍らでは、ルシアが水晶を掲げて、光に照らしている。


「現在判明している問題点は、距離が遠くなるほど通信が不安定になるということです。あとは、当然魔力を媒介にするので、魔力切れには気を付けてください」


「そんなに魔力の消耗が激しいのか?」


 ルシアはそうは言うが、口だけに違いない。なにせ彼女はプラチナと称される冒険者。内に秘める魔力も秀でているだろう。


「いえ、使うのはほんの僅かです。人体に影響が出ないように調整はしてあります。あくまでも、念頭に置いていただきたいということです。それと……」


「まだ何かあるのか?」


「本当に最近完成したばかりの物なので、テストも兼ねています。使用して他に問題がありましたら、何でも仰ってください。同じ物は私の他にオスカーさん、それからルシアとライさんだけがお持ちです。くれぐれも他人に情報を漏らさないよう、お願い致します」


「了解した」


 ルシアは通信機を服の胸ポケットに仕舞った。


「話はそれだけか?」


「あとはライさんにお話があります」


「俺に?」


 何の話をされるのか、見当もつかないライ。


「王国の騎士団から要請が来ています」


「騎士団から……要請?」


 騎士団と言えば、満月の塔に赴いたその帰り際に声を掛けてきた集団だ。ライは当時の様子を鮮明に覚えていた。


「グリュトシルデで一番の使いを派遣してほしいとのことです」


「一番の使いなら、ルシアが適任じゃないですか?」


 アルマは思ったことを喋る。ルシアの顔を見るが、彼女は首を横に振った。


「あいにくだが、私はこれから休暇だ」


「ルシアさんでは少々要件を満たせないのです」


 レイネールが遅れながら補足する。


「どういうことですか?」


「騎士団が欲しているのは、一番の弓の使いです」


「なるほど。それならばライが適任ですね!」


 合点がいったようにアルマは頷く。それならばと、断る理由の見つからないライも要請をに応えることにした。


「明日にでも出発していただきたいのですが……」


「分かりました。もちろんアルマも行くよな?」


「はい!」


 遠慮の一切ない朗らかな返事。


「ならば、途中まで私も同行しよう」


「ルシアも?」


「不服か?」


 ルシアはライを鋭く睨む。すると、鳥肌が立ったライは詳しく訂正する。


「いや、そういうことじゃないんだ。無理して付き合せたら申し訳ないなって……」


「気遣い感謝する。だが、途中までは私も同じ道を通るのだ」


「どういうことですか?」


「私の実家は港町エルフェオースにある。静養の際はいつも帰省している」


 エルフェオースはアルスエリア王国屈指の港町だ。王都に向かう街道の分岐路の一つから、エルフェオースへの街道が延びているのだ。


「そういうことなら一緒に行こう、ルシア!」


「よろしく頼む」


 ライとアルマは遅くしてルシアと握手を交わし、ギルドを後にした。

2022/7/7 全体を少し修正。

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