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Tale 22 幼女召喚士(4)

「何が……起こってるんだ……?」


 リスティーは拍子抜けする。訳の分からないといった顔で前方の逃走劇を眺めるのは彼女だけではない。

 フレイスジェミニの怪光線が地を這い、ナディルネアの小さな背中に迫る。


 本来、召喚されたモンスターがその主に対して敵対行動をとることはあり得ない。召喚行為は対象と主との信頼関係や、契約に基づいて行われるもの。クロス・ファンタジーではそうだったし、アルマたちの反応からしてストラティアにおいてもその法則は守られているようだ。


 しかし、それと相異なる光景が眼前で繰り広げられているのも事実。玉座を中心に逃げ回るナディルネアを見て、一体なぜと考えていたライはやがて一つの仮説に辿り着く。


「もしかして、【無制限召喚アンリミテッド・サモン】か?」


「【無制限召喚アンリミテッド・サモン】?」


 初耳だろう、アルマは不思議な顔で聞く。


「言葉の通り、どんなモンスターでも召喚できる、一種の能力だ。ただし、それは普通の召喚じゃない。いわゆる強制召喚だ。必ずしもモンスターが言うことを聞くとは限らない」


「そんな道理を外れた力があるなんて……」


 召喚の仕組みを根底から覆す能力。それゆえに被召喚側は混乱に陥り暴走してしまう。それが、聞こえは良い【無制限召喚アンリミテッド・サモン】のデメリットだ。


 まさに説明通りの状況に陥っているのが、今のナディルネアだ。「あっちに行け!」という主人の命令に聞く耳を持たないフレイスジェミニ。


 そして【無制限召喚アンリミテッド・サモン】により召喚された自分に働かなかった強制力。


 二つのことからライは確信を強めた。


 そうと分かれば、取るべき行動は自ずと見えてくる。


 まずはこの事態に収拾をつけること。すなわち、フレイスジェミニたちに冷静を取り戻させるのだ。


「フレイスジェミニの暴走を止める。注意を引くだけでいい、手伝ってくれ!」


「分かりました。リスティー、ユエラ、準備はいいですか?」


 アルマの呼びかけに、二人も短い返事をした。


「それじゃあ、行くぞ! 【属性解放(リリース・エレメント)】! 遍く雷を集約せよ!」


 空間に弾ける雷が、魔弓を目掛けて集合する。


 その全てが吸収され、弓全体は蒼い輝きを帯びた。


 同時に、ライの腕までも同じ輝きに包まれた。


 準備は完了だ。


「よし……。【雷の蒼球(エレキスフィア)】!」


 この隙に四人は散らばっていた。


 ライは両手を駆使して、多くの雷球を前方に飛ばす。対象への着弾と共に、電流を与え、その視界を蒼く光らせる。


 大規模な爆発が起こることもあった。それでも怯まずに攻撃を続け――。


 敵の眼差しはライに向いた。


「来たか……!」


 全てが注意を引かれたわけではなかったが、これ以上の誘導はできなかった。


 途端に心身が圧迫し、全身がこわばるライ。


 彼らを倒すことは一人では至難の業。それも仲間たちが相応の実力を有していなければ実現しない。


 しかし今の目的は相手を分からせること。そう自分に言い聞かせる。


 そんな焦っている様子が、緊張が露わだったのだろう。アルマはライの手を握った。


「大丈夫です。私たちならきっとできます。自信を持ってください」


「そうだな……ありがとう」


 アルマの優しさの温もりに触れ、深呼吸して落ち着きを取り戻したライは弓を引いた。


「【雷鳥飛矢(グロースアロー)】!」


 何十本もの矢が空間上部に向かい、攻撃の意志を持った雷鳥が加勢する。


 【属性解放(リリース・エレメント)】による強化中だからか、彼らは凄まじい雷を纏っていた。まるで雷雨の嵐の前触れかのような荒々しさだ。


 そんな猛攻を受ける胴体には、傷一つ付かない。


 元々の体組成が無機物の彼らには、刺突系武器の弓矢は弾かれてしまい、効果的ではないのだ。そして突風も雷撃も、彼らには微風と微弱な痺れ程度にしか感じないのだ。


 だが、それで十分だった。適度な距離を保てるように押し返し過度な接近を許さないことこそが、仲間を守るうえでは重要だった。


 とはいえ、相手はライとほぼ同格のモンスター。彼一人の小細工には屈しない。


 距離を離されたのならば、それを埋める攻撃をするのがアルゴリズム上常套な手段だ。赤く、または青く光った眼を見ると、恐怖が込み上げた。


 その時、


「【光の照球(ライトスフィア)】!」


 空間全てが白い閃光に包まれた。


 視界が眩み、目の機能を一時的に失った星々は攻撃を中断せざるを得ない。


 それでもなお、例外的に攻撃を続行する(やから)もいる。視界の戻り際、一本の赤い光線がライたちを襲うが、


「うおおぉおおっ!」


 【加速(アクセラレート)】により駆け上がるリスティーは、危険を顧みずその攻撃元へと飛び、渾身の蹴りを一発入れた。


 フレイスジェミニの突起が良い具合に彼女の足に噛み合い、その胴体はボールを蹴られたかの如く回転した。


 高出力のレーザーは軌道を変え、要塞に思われる満月の塔の天閣を、そして夜の空を穿った。


 そんな視界が遮られる中で、


「よし、アルマ、準備はいいか!」


「はい!」


 ライとアルマは手を繋いでいた。


 互いの魔力を共有し、ライの右手から、そしてアルマの左手から光色の鎖状の太縄が生成される。


 ライの【雷電光鎖(ボルテージチェイン)】に、アルマの【拘束(バインド)】の効力が掛けられることで、持続的に電流が流れる細い鎖に加わる強力な弾性。拘束具としての力を増した、新たな魔術が誕生した。


「「【大雷電光鎖メガ・ボルテージチェイン】!」」


 巻き付かれたフレイスジェミニの全ては地に寄せられ引き摺られ、やがて大人しくなった。


「やった……!」


 ライは喜びのあまり呟く。そして軽快な足取りで、泣きじゃくるナディルネアのもとへと急ぐが。


 ――バチン!


「……!」


 会心の合作の拘束は弾け飛んだ。


 全身が沸騰したように赤みを増す個体。


 誰が見ても明らかだった。フレイスジェミニたちは怒りにより、敵対心が大きく募ったのだ。


「これだけやっても駄目なんて……!」


 手応えを感じていたアルマも、この結果には絶望だった。


 遠目に映る召喚主のナディルネアを見るも、彼女の様相は変わらず、ライは使い物にならないと判断する。


 どうしたら良いのか、万策尽きたと言わん状況で、無情にもフレイスジェミニは攻撃態勢に入る。


 そんな時だった。後方から、天まで響き渡る張り声で救世主が現れたのは。


「お前たち、攻撃を止めなさい!」


 その声に、星々は静穏になった。

2022/4/18 全体を少し修正。能力名称を変更:【属性解放】→【属性解放(リリース・エレメント)

【エレキスフィア】→【雷の蒼球(エレキスフィア)】 【フラッシュ】→【光の照球(ライトスフィア)

【加速】→【加速(アクセラレート)】 【バインド】→【拘束(バインド)

能力を変更:【ハリケーンブラスト】→【雷鳥飛矢(グロースアロー)

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