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Tale 22 幼女召喚士(3)

 最上階の部屋に足を踏み入れる。


 幹部の部屋と言っても、特別な内装は目に入らない。中央の奥に簡素な(しつら)えの玉座が、そこに座る者ただ一人のためにあった。それだけだ。


 今そこに座す者、彼女こそが魔王軍幹部が一人の悪魔だ。


 ライたちは小さい一対の角に恐れ(おのの)く。どれだけのサイズであろうが、悪魔を象徴するに足る禍々しさだからだ。


 湾曲している角に描かれるは渦巻く漆黒。毒々しささえも感じさせ、見る者によっては気分を害するだろう。


 しかし、


「よくここまで来たのじゃ、我が従者よ!」


 その角を有する少女、いや幼女とも見て取れる低身長から放たれるのは、同程度の見た目の人間の女の子のように愛嬌のある無垢な声。威圧感は全くなく、四人はまだ驚いているが、それは彼女があまりにもイメージとかけ離れていたからだ。


 そうして次第に恐怖が薄れていくことで、足が前に進み、いよいよ塔の主ナディルネアと対峙する。


「これが魔王軍の幹部! ……何か可愛いな」


 決して冗談ではない、ライの本音だ。よく見れば、厳つい角はナディルネアの全身を魅せる、良いコントラストとなっていた。


「可愛いとか言ってる場合じゃないですよ! 見た目に騙されないでください! この子は立派な悪魔です!」


 アルマは大声でライに詰め寄った。変な術に掛けられているのではないかと疑い、その眼を正そうとする。


「でも、確かに可愛いな。うーん、こんな子がもし妹だったら溺愛しちゃうなぁ」


「リスティー、冗談は場を選んで」


 ユエラはリスティーの足を思いっきり踏んだ。


「いででで! も、もう言いません、ごめんなざい!」


 涙を浮かべたリスティー。


 一方、可愛いと持て囃されるナディルネアは騒ぎもせず、繰り広げられる一部始終を眺めていた。


「ふむ、賑やかな奴らじゃ。さて、ここまで来たことを評したいのじゃが……あいにく(わらわ)が求めているのはそこの貴様だけじゃ」


 ナディルネアが指したのはライだった。


「さっきの言っていた“我が従者”って何のことだ?」


「言葉の通りじゃ。貴様は童に仕えるべき存在なのじゃ」


 ナディルネアの言うことを簡単には信用できない。なぜなら、二人は種族が異なるからだ。過去に種族が分断されたストラティアにおいて、異種間の主従関係が生まれるなど、幾つも前例があって良い事ではない。


 ライは何となく察しはついていた。ナディルネアの言うことが正しいのであれば、自分はこの世界において“()ばれた”存在であると。


「もしかして、お前が俺を召喚したのか?」


「いかにも」


「本当にこの子が……?」


 アルマはライ本人を他所に驚いている。同じような反応をリスティーとユエラも見せていた。


 すると、そんな半信半疑の彼女らに対し、ナディルネアは玉座を下り、周囲に並々ならぬ魔力を分散させる。


「信じていない者が数人おるようじゃ。いいじゃろう……(わらわ)が主である確たる証拠、見せてやろう!」


 次の瞬間、異様な光景が目に映る。渦巻く光が深淵を物語り、多数展開された。


「あれは!」


 目を剝いたライ。


「何か知っているのですか!?」


「俺たちを呑み込んだ闇の渦だ!」


「それじゃあ、この子が本当に……」


 高笑いするナディルネアを前に、ライたちは身構える。渦の中から異形なる存在が頭角を現し始めていたからだ。


 体長五メートル前後の金平糖のような刺々しい見た目。宙に浮遊し、付随する一つ目の凝視している様が何とも不気味で、見る者を怯ませる。


 さらに恐ろしいのは、このモンスターが二つで一つの生命体であるという点にある。それぞれが緋色と水色に胴体を染め、微弱な磁力で反発しているかの如く、近すぎず離れすぎずという位置関係を保っている。


「こいつらはフレイスジェミニ……!」


「聞いたことない名前」


 ユエラはそう言うが、それもそのはず。ライが言葉を呑むこのフレイスジェミニは、言うまでもなくクロス・ファンタジーに存在していたモンスターだ。


 今、ナディルネアの力を以て、彼女がクロス・ファンタジーの世界に干渉できることが証明されたのだ。


「それぞれが炎と水を司る、双子の星型モンスターだ」


「うちの拳で何とかしてやる!」


 拳を突き合わせ、金属音を打ち鳴らすリスティーだが、彼女は制止される。


「駄目だ! あいつらは見た目よりもずっと強い! 俺でも相手できて二体が限界だ」


 決してボス格ではなかったが、取り巻きとして存在していたこの双子の星々も、それなりの強さを持っている。ライはそれを自身の経験から知っている。


(アルマたちでは手も足も出ない。ここはもうゲームの世界じゃない。準備が完全じゃない俺でさえ、きっと苦戦する。どうすれば……どうすれば……!)


 焦りに焦るライを他所に、フレイスジェミニは次々に現れる。五体、六体と増えていき、最終的には十体にまで増えてしまった。


「さあ、お前たち、こいつらを打ちのめすのじゃ! 弓の奴は殺すんじゃないぞ」


 ナディルネアは高らかに殺意の籠った命令を下す。すると星々は、


(まずい……まずいまずいまずい!)


 判断能力が著しく低下しているライのもとへ、


(俺が殺されないことを逆手に取っても、あいつらの攻撃は簡単にアルマたちを仕留めてしまう)


 そして、先行きが不安で後退りするアルマたちへとゆっくり接近。眼をその身と同じ色に光らせる。


(とにかく、アルマたちが逃げられるだけの隙を作るしかないか……!)


 同時にライの意思は固まり、高出力の雷閃を両手に、そして千年大樹の魔弓にも纏わせる。


 残る魔力を全て【属性解放(リリース・エレメント)】に注ごうとした、その時――。


「なにっ?」


 フレイスジェミニは途端に方向転換し、向かうはその召喚主だ。


「んん!?」


 驚いた後で、彼女は命令に背くモンスターたちを指でシッシッと追い返す。しかし彼らの行動は変わらず一貫している。


 そして――。


「なんでじゃーっ!」


 ナディルネアがフレイスジェミニに追いかけ回される、意味不明な光景が爆誕した。

2022/4/18 不要な記述を削除。能力名称を変更:【属性解放】→【属性解放(リリース・エレメント)

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