表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/156

Tale 16 声の正体(1)

 光石のガラスに当たり、コツンと鳴る。


 短い草が踏まれ、クシャと鳴る。


 それだけならば静寂が際立つだけで、なんてことはない。


 不安な表情の強まるアルマをそのようにさせたらしめるのは、深夜という時間帯、その薄暗さ、そして四方から耳に入る獣の遠吠えだ。さらには、森林に入ってリアナがずっと見つかっていないという事実が、彼女の不安を煽っていた。


「どこ……行っちゃったんでしょうか……リアナちゃん」


 弱々しくも決して立ち止まらないアルマだが、視界が明滅する。


「寿命が……。もう少し持つと思ってたのですが……最悪です」


 アルマは夜の冒険者活動など滅多にしない。洞窟に赴いたことも少ない。それゆえ、彼女のカンテラの出番は少なく、見計らいを誤ったようだ。


 光石の放つ輝きが失われれば、炎魔術も光魔術も使えないアルマにとって、視界を確保する(すべ)はなくなってしまう。


 だから歩くペースを上げて、リアナの捜索に努めた。


 それからしばらくが経ち、彼女はめでたくリアナを発見することが出来た。


「リアナちゃん!」


「おねーちゃんだ!」


 パジャマ姿のリアナは、普段と変わらず無邪気にアルマに寄って来る。


「大丈夫? 怪我は……?」


 アルマはその小さな体を触って、彼女の安全を確かめる。


「うーん……大丈夫だよ」


「良かった……。こんな所にいたら危ないよ。さあ、帰ろう?」


 事情は街に戻ってから。まずは危険の潜むこの森から出ること。アルマはこの事件に関与する際、常にこれらの事項を最優先にしていた。


 しかし差し伸べられた手は取られなかった。


「嫌! 私、まだ遊んでいたい!」


「えっ……?」


 リアナのこの反応は初めてだった。想定外の返しに困惑するアルマ。


「今は夜だよ? 遊ぶならお姉ちゃんが今度相手になるから……だから……」


「嫌なの! 私はイデアちゃんと遊んでたいの!」


「イ、イデア……?」


(一体誰のことだろう?)


 アルマは、リアナに関する情報はできる限り収集していた。


 彼女の脳内検索にヒットしないということは、これより踏み入る地は未知に等しいということだ。アルマは一層周囲に注意を払い始める。


「だ、駄目です! 今は帰ることが最優先です!」


 互いの意思が拮抗し、二人は睨み合う。

 姉としての立ち振る舞いと、妹のわがままな態度。この光景はそれを彷彿とさせる。


 いがみ合う二人の周囲は彼女らの声でうるさい。


 そのせいで、アルマは背後からの音に気が付けなかった。


「今はその子の言いなりになっても良いんじゃないか?」


 アルマはそう言われてから咄嗟に振り返る。


 そこにいたのは捜索隊の後続、ライたちだった。


「ラ、ライ! それに二人も……」


 光球が一つ、アルマの視界を明瞭にする。

 そして彼女は前方の異変に気付く。ライたちの背後に人ではない存在がいることに。


「えええぇっ……!? ゆ、ゆ、幽霊!?」


 透けた体を持ち、宙に浮いている者もいれば、人魂のようなものまで群がっていた。


「あ、あの、周りに幽霊が……」


 アルマは指摘するが、それは当然三人も理解している。


「これはどういうことでしょうか?」


 三人の反応から、幽霊たちの存在を危険ではないことを悟り、アルマは落ち着きを取り戻しつつある。


「話せば長くなる……ってわけでもないし、まあいいか」


 ライは歩きつかれた身体を近くの木に寄せ、語り出す。






 それは、ライたちがアルマのいる方角を目指して進む最中のこと。


「そーろそろ戦闘の一つや二つ、あってもいいんじゃないかねぇ」


 リスティーが不満そうに腕を振り回す。


「リスティー、戦闘狂にならない。そういうのは今度付き合ってあげるから」


「でも、この森ってこんなにモンスターがいないものだっけ?」


 モンスターの活動音はしっかりと聞こえるのだ。しかし縄張りに侵入していないからなのか、モンスターたちと鉢合わせることは一度もなかった。


「そう言えばおかしい。私たち、前に一度だけ夜の森の見回りのクエストを受けたけど、こんなに静かじゃなかった」


 そんな議論を交わす中、前方にこの森では不自然に輝く光が入ってくる。


「なんか、光ってねーか?」


「確かに……」


「そうだな」


 疑問に思うリスティーとユエラとは対照的に、ライはただ頷く。


 歩みを進めて確認できたそれは、霊体から発されるものだったのだ。


 ライは進む先に待つ幽霊たちの存在を知っていた。というのも、【捜索網羅の目(サーチング・アイ)】の効力によって彼の視界に映し出されていたからだ。


「これって、幽霊か!?」


「おお……!」


 女子二人共々、幽霊を怖れず、それどころか感動している。


「やあっ!」


 リスティーは自慢の拳をその透ける体にぶつけてみる。


 すると拳は霊体を貫通した。もちろん衝撃の感覚もない。空を切るだけだ。正真正銘の幽霊を相手にしていることが分かった。


「あ、あんまり乱暴しないでもらえると助かります……」


 リスティーが拳を突き付けた相手、弱々しい女子の幽霊から返事が聞こえると、


「「しゃ、喋った……!」」


 三人は目を丸くして彼女に注目した。

2022/4/16 全体を少し修正。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者の他の作品

↓ ↓ ↓

◇(ホラー)かくれんぼの途中に起きた奇怪な出来事が、高校生たちを襲う
『タマシイ喰イ』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ