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Tale 14 魔術師と勉強会(6)

 ライもようやく一息つける。


(皆で切磋琢磨して、新しいスキルを習得……か。懐かしいな)


 彼もクロス・ファンタジーで様々な経験を重ね、スキルを習得した。その過去に思いを馳せる。


「おーい」


 やり遂げた雰囲気を醸し出す三人の後方で、普段よりも嬉しそうな声が聞こえる。

 振り向くと、ユエラとオスカーが歩いて来ていた。


「皆さん、進捗は如何(いかが)ですか?」


「バッチリだ!」


 リスティーがグーサインを突き出しながら言い、その横でアルマは笑っている。

 ライはオスカーに頷く。


「では、その成果を見せていただきましょうか。ライさんはこちらへ」


 オスカーに手招かれ、ライはユエラと入れ替わるように場所を移動する。

 次に、紫等級の魔術師は右手を前に差し出し、魔力を一点に集中し始めた。


 草地の緑よりも明瞭な赤色の魔法陣が、半径五メートルの規模で展開される。

 そして地面より、いや魔法陣より頭が現れ、やがて一つの生命体が生まれ出でた。


 頭よりも先に五人の視界に映ったのは、不揃いな湾曲した一対の角。


 そして何よりも術者以外の四人を驚かせたのは、魔方陣の規模に劣らない筋肉質な全身だ。モンスターと呼ぶに相応(ふさわ)しいそれは、最後に片手に斧を持ち、仰々しく構えた。


「これは……?」


 ライは眼前の存在を薄々理解しながら言いかける。


「ミノタウロスです!」


 アルマが驚き隠さずに言った。


「その通りです」


「でもどうして……。もしかしてオスカーさんは召喚士なのですか?」


「そうとられても、おかしくはありませんね」


 オスカーは笑いを含んだ声を上げながら、説明を続ける。


「ですが、私は召喚士ではありません。これは【魔物擬製(モンスターレプリカ)】という魔術です。特定の型に魔力を注ぎ込むことで、偽りの生命力を吹き込むことができるのです」


 一同は感心の声を上げる。


 造られた牛の魔物は、微動だにせずその場に(たたず)んでいる。


「こいつが相手になるってわけか」


「はい。……では」


 オスカーが一回手を叩く。


「ミノタウロス、この者たちを攻撃しなさい」


 笑顔を崩さない彼であるが、若干の冷徹さを含んだ声を発した。


 そしてミノタウロスは主人の命令通り、ゆっくり攻撃対象へと歩いていく。


「来ます!」


「よっしゃあ、行くぜ!」


「頑張る!」


 陣形はユエラを後方に、他二人が前衛だ。


 まずはリスティーが走って切り込んでいく。


「【猛虎の剛拳(タイガーフィスト)】!」


 リスティーの黒い拳が巨大化して牛の魔物を襲う。


 それに合わせるように、ミノタウロスは斧を盾代わりにする。


 鈍い音が響く。


「くっ……重い!」


 二つの勢いは拮抗(きっこう)する。

 その最中、急に出現した光がリスティーを包み込む。


「早速特訓の成果を……【成長の励光(ルミナスグロウ)】!」


「サンキュー……ユエ!」


 身体能力が強化されたリスティーは、より強く踏ん張り、その右手に体重をかけて正面の斧を押し返すことができるようになる。


 押し負けたミノタウロスはのけ反ることになり、彼女はその隙を見逃さない。


 身を(よじ)りながら空中で回転し、蹴りを見舞う。


(体が軽い!)


 増強された筋力から放たれた攻撃は相手の腹部に数回当たり、ミノタウロスは大きく後退する。


 リスティーは蹴りのフィニッシュと同時に、ミノタウロスを踏み台にして大きく跳躍した。そのため、カウンターを食らう心配もなく、距離を取ることができた。


「行きますっ!」


 アルマは遅れながらも、リスティーと入れ替わるように攻撃を開始する。


 ポーチに回していた手をミノタウロスに向け、握る物を投げた。


 ナイフは、体勢を立て直せていないミノタウロスの肩に刺さる。相手の体の大きさから、その刃は決定打になるほどのものではないが、それで十分だ。


 ナイフから太い縄が出現し、巨体を拘束する。


 ミノタウロスは必死に抵抗するが、拘束はすぐには解けなかった。






 一方、観戦者のライとオスカー。邪魔にならないよう、戦地から距離を取っている。


「ミノタウロスってどのくらいの強さのモンスターですか?」


「ミノタウロスは群れを作って行動します。リーダー格と取り巻きで強さが若干違いますが、冒険者基準で言えばシルバーくらいの方が好んで狩る獲物だと思います」


 【魔物擬製(モンスターレプリカ)】を扱えるようになるには、まずはモンスターの姿かたちを再現できることが大前提だ。そして次に、その行動の習性を理解して型に吹き込むこと。そうすることで初めて意思を持った模造(レプリカ)が完成する。


 裏を返せば、モンスターについての理解が浅ければ、外見を完全に再現できたとしてもそれはただのハリボテでしかないということ。


 当然、再現度が高いほど、造られたモンスターたちの総合的な能力も高くなる。


 彼らの動力は全て魔力だ。込められた魔力が尽きれば、形を失い消滅することになる。


 要するに、術者の腕が【魔物擬製(モンスターレプリカ)】の結果に依存するということだ。


「あいつら、ちゃんと倒せるかな……?」


「大丈夫ですよ。特訓の成果はしっかりと現れています。それよりも、先ほどの魔術、あれはいったいどのようなものでしょうか!? 見た所によると、【魔物擬製(モンスターレプリカ)】に似た魔術の様ですが……」


 急に話題が転換し、ライは戸惑うが、思い当たる節は一つしかなかった。


(【雷鳥飛矢(グロースアロー)】を見られてたのか。まあ、あれだけ派手にやれば目に入るか……)


「そんな感じのものですよ」


 ライは苦笑いして軽くあしらう。


「やはりあなたは面白い。時間のある時にゆっくりとお話ししたいですね」


(勘弁してくれ……!)


「そんなことより、今はあいつらの戦いですよ」


 嘆きを抑えて視線を促すライ。


「おっと、そうでしたね。これは失礼しました」

2022/4/14 不要な記述を削除、その他全体を少し修正。

2022/4/17 能力名称を変更:【タイガーフィスト】→【猛虎の剛拳(タイガーフィスト)

【ルミナスグロウ】→【成長の励光(ルミナスグロウ)

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