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Tale 14 魔術師と勉強会(4)

 場面戻って、今も苦戦中のライたち。


 頭を毟るリスティー、ため息ばかりつくアルマ、責任感に(さいな)まれるライ。


 魔術を扱うには、その動機が大切なのだ。雷のイメージがどうこうでは、習得に一歩及ばない。


「あぁー、もうやってらんねー! ライ、魔術はやめだ!」


「そうだな」


 その後、アルマも納得した。このまま継続したら、精神衛生上良くないのは明らかだった。


「じゃあ何か、戦闘において悩みとかがあったら言ってみてくれ」


 魔術の習得を諦め、何を習得するのか。


 幸いにも、魔術以外にも武器や肉体を介した能力の伝達も、同じ理屈で可能なのではないか。


「うちは足が速くなりたいな」


 ライは昨日の大討伐クエストでの戦闘を思い出した。


 リスティーの前衛としての動作は結構機敏だったはず。彼女が思い悩むほど、リスティーは鈍足ではないと思う。


「そんなに速くなりたいのか?」


「ああ! 風を思いっきり切って走れたら気持ち良いだろ?」


(戦闘でって言ったんだけどなあ。まあいいや)


「【加速(アクセラレート)】って能力なんかどうだ?」


「おぉー、良いな!」


 リスティーは期待を込めて頷いた。


「よし。……じゃあリスティー、死ぬ気で逃げろよ?」


「は? 何言ってんだ……?」


 手取り足取り面倒を見てもらおうと思っていたリスティー。しかし(いぶか)しむ間もなく、ライの指先から雷閃が発された。


「うわあぁっ!?」


 足元に突然痺れるような(まと)わりを感じた彼女は、広大な草原を走り始めた。


 ライは精密な射撃機の如く、執拗にその足元を狙う。


 わざと攻撃を外すことはしていない。リスティーが走るのを止めれば、その足は焼かれることだろう。


「頑張れー!」


 ライは応援を送るが、当人はそれどころではないらしい。リスティーが二人の元へ戻ろうとすると、雷がその進路を妨害する。よって()を上げながら、逃げ回るのに必死だった。


「本当にこれでほしい能力が身に着くのですか?」


 アルマは(はなは)だ疑問に思い、ライに尋ねる。


「多分大丈夫だよ」


 上手くいきそうな気がする。そんな根拠不確かな感覚を覚えていた。


 実際、ライは雷を打つテンポを速めていた。そしてそれにリスティーは対応できている。言うまでもなく、彼女は今“加速状態”にあった。


「ほら……」


 ライが遠方を指すので、アルマもその方を見る。


 リスティーの足元から薄い青色の光が発生するのが分かった。


「あれは……!」


「うん、掴み始めてる」


 アルマは遠方で繰り広げられる茶番のような逃走劇を目で追いながら、驚愕と感心に浸っている。


「リスティー! 思いっきり走れ!」


 ライはさらに速いペースで雷撃を放つ。リスティーの移動する進路を予測して、その場所まで派手に放った。


「うおぉぉっ!」


 リスティーは意気込むと、その足をより速く動かし始める。いや、早く動かされていた。

 【加速(アクセラレート)】による効果だ。つまりは、彼女はその負荷に耐え得るだけの身体能力を持ち、それを発動する取っ掛かりを掴めたということだった。


 ライはこの瞬間、魔術をはじめとした諸能力の習得が人の素質や適性に影響されることを、自分の目で確かめ理解した。


 リスティーはあらぬ速さで草原を駆ける。


 普通の人間の徒競走ではありえない光景に、アルマは驚く。


「は、速い!」


(上手くいったな……)


 ライはこの場での役目を初めて(まっと)うでき、安堵の息をついた。


 そして流れる魔力を抑え、草原には平和が訪れた。


 リスティーが動かし続けた足に疲労を感じさせながら、小走りで戻ってくる。


「はぁー、疲れたぁー!」


「お疲れ」


「凄かったですよ!」


「本当か? 最後はどうなるかと思ったけど、急に足が軽くなってさ……。それで逃げなきゃって思ったんだけど……」


 要するにリスティーの逃げたいという強い想いが、能力発動のきっかけとなったのだ。そこに風を切って走りたいという従来の動機はなかったかもしれないが、結果としては成功だ。


「とにかく、リスティーはこれで自由に加速できるはずだよ」


 リスティーは深呼吸して軽く走り始める。


「……【加速(アクセラレート)】!」


 直後にスキルを発動させると、先ほどと同じ光が足元に広がり、彼女は言葉通り“加速”していく。

 草原を円を描くように一周すると、彼女は立ち止まった。


「よっと! どうだ?」


 リスティーは期待を含んだ目でライを見る。


「紛れもなく【加速(アクセラレート)】だよ。おめでとう」


「よっしゃあ! サンキューな!」


 満足気にガッツポーズするリスティーだが、その横では不満そうな顔をする少女がいた。


 アルマは彼女の成長を(たた)えているが、自分は成果というものを挙げていない。


 そんな彼女の感情は、その様子を見ればライにはすぐに分かった。


「アルマも何か希望があるなら言ってみて。次はアルマの番だ」


 すると目を光らせて、開口一番こう言う。


「私、剣が上手くなりたいです」


 ライは考え込む。ストラティアではおろか、クロス・ファンタジーでも彼は一度も剣を握ったことがないからだ。彼は最初期から弓しか使っていない。だから剣技はおろか、剣の正しい持ち方というのも分からない。


「剣か……」


 はてさて、全く違う理由で悩む二人であった。

2022/4/14 全体を少し修正しました。

2022/4/17 能力名称を変更:【加速】→【加速(アクセラレート)

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