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Tale 14 魔術師と勉強会(3)

 五人は二チームに分かれた。その方が伝達もスムーズに行えると思ってのことだ。


 チーム分けの際、積極的だったのはやはりユエラだ。彼女はオスカーと同じチームを望んだ。

 その意思を汲んで、彼と彼女を二人で組ませた。


 両チームはある程度の距離を取った。


「さて、俺たちはどうしようか。二人とも、何か覚えたいこととかあるかな?」


 とりあえずはライが講師役ということで話を進める。


「私、あのパーッとした雷が使いたいです!」


「おー、ライの十八番じゃん」


 異論はないようだ。


「分かった。じゃあまずは雷を発生させるところから」


(とは言ってみたけど、どうすればいいんだろう……)


 分かった風に進めているライだが、実際のところは見通しが全く立っていないので思ったことを言ってみる。


「何かイメージしてできないかな?」


「イメージ……ですか?」


 二人は手のひらと睨めっこをしつつ、「雷よ出でよ」と言わんばかりに意識をそこへ集中させる。


 ――しかし何も起こらない。魔術は曖昧な表現では扱えないことを三人は思い知った。


「駄目です。やっぱり才能がないのでしょうか……」


「もっと自分の体験に沿ったものがあれば、上手くいくんじゃないかな?」


 そんな不確定な提案を信じ、二人は再び作業に入る。


(そんなこと言ったって、雷が日常生活に結び付くことなんてないよな……)


 しばらくは変わり映えのしない光景が映り、ライはこの後どうしようかと考え始める。


 そんな中、リスティーは何かに気付き、息を呑んだ。


「どうしたんだ?」


「いや、雷と言えば、肘を上手い角度でぶつけた時に、ビリッと電気が走ったなって」


「それで、何かこう、掴めたか!?」


 食いつきを見せるライだが、


「いや、全くだ」


「……」


 リスティーとのやり取りを通じ自身の無能さを痛感した。教えるコツというものをオスカーに聞き出したかった。しかし彼は彼で今はユエラに魔術を教えている。それが遠目に確認できた。






 その二人は、ライたちの不発なレッスンを他所に、何やら話し込んでいた。


「ユエラさん、何か覚えたい魔術はありますか?」


「私、【成長の励光(ルミナスグロウ)】を使えるようになりたいです」


 【成長の励光(ルミナスグロウ)】とは、対象の身体能力と魔力濃度を一時的に向上させる光属性魔術だ。


 ストラティアの冒険者たちの間で、これを使えるか使えないかで同行が決定づけられるほどに重要な、魔術師としての存在価値を一段高める魔術なのだ。


「なるほど。それならば、ユエラさんでも習得できそうですね」


「本当ですか!?」


「はい。ではまず、それを覚えてユエラさんはどうしたいのですか?」


 ユエラは戸惑う。何かしらの動作を要求されると思っていたが、質問が飛んできたからだ。


「えっと……便利だから、じゃ駄目ですか?」


「駄目とは言いませんが、そのような動機で習得を希望される方々の大半は、失敗に終わっています」


「どうして?」


「単刀直入に言えば、想いが足りないのです」


「想い?」


「はい。ユエラさんは生命力を回復させる魔術が、神官のみ扱える力ということをご存じですか?」


「はい。傷を塞ぐだけの魔術よりもずっと高位の、神様から授かった特別な力……ですよね?」


「彼らは神に並々ならない信仰心を捧げ、その結果として()の力を始めて扱えるようになるのです」


「この状況においても同じ……ってこと?」


「その通りです。その想いが、自らの力を引き出すのに大いに影響します」


 ユエラはまだ戸惑っていた。


「申し訳ありません。先ほどは学術的な見解ばかり述べて、魔術の習得にはそれを理解できるだけの知識が必要だと言った反面、今は精神論を説いていましたね」


「そう……ですね」


 うっすらとユエラもそのことを思っていた。


「確かに、知識が魔術習得の大枠を成しています。ですが、今ここで私が【成長の励光(ルミナスグロウ)】について学術的に解説をしたところで、ユエラさんは頭が混乱するだけかと思います」


 決してユエラを愚弄している訳ではない。彼はただ、魔術を教えるということに熱心なだけなのだ。


「ならば、想いで乗り切ってしまおうという作戦です。私が述べたことに嘘偽りはありません。私もたまに気合いで乗り切ろうとすることがあるのです」


「そうなんですか?」


「はい。そう思えば、想いの強さこそが、魔術習得の本当の裏技……だったりして」


「言われてみれば……!」


 目を輝かせたユエラを見て、オスカーは安堵した。


 彼女は早速行動に移り、遠方で手に力を込めては首を傾げるリスティーに目を遣る。


「私は、今はリスティーと一緒に冒険者をしたい。そのために役立てる魔術を覚えたい!」


「良い動機だと思います。ではその想いを、魔力に乗せてみて下さい」


 ユエラは杖を前に突き出し、目を瞑ってそこに魔力を注ぎ込む。

 杖の宝石は白い輝きに包まれ、そこから光の刃が具現化した。


 彼女がよく使う【輝く光刃(ホーリーエッジ)】が出現してしまった。


 普段の戦闘での攻勢的な感覚が混ざってしまったのだ。


「戦意は抑えてください。リスティーさんが戦う様子を想像するのは構いませんが、彼女を支援するという気持ちが上回らなければいけません」


 ユエラは言われるがままに軌道修正する。


 すると刃の形をした光は、次第に丸みを帯びていく。それはもう、誰かを傷付けるためのものではない。完全な球になった時、そこから小さな粒が気泡のように静かに弾け、空に溶けていった。


 何か得るものがあったようで、目を開くとそれを実感した。


「おめでとうございます」


「私、今……ちゃんとできてた?」


 成功の確証はなかったが、オスカーはそれを保証した。


「まだまだ練習は必要ですが、初歩としては充分な出来です」


「あ、ありがとうございます!」


 ユエラは何回も頭を下げ、自分の謝意を存分に伝える。


「さあ、レクチャーはまだまだ始まったばかりですよ。次の魔術に取り掛かりましょう!」


「はい!」

2022/4/14 不自然さ、矛盾が生じないよう、ユエラとオスカーの会話を追加。その他にも軽く修正。

2022/4/17 能力名称を変更:【ルミナスグロウ】→【成長の励光(ルミナスグロウ)

【ホーリーエッジ】→【輝く光刃(ホーリーエッジ)

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