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Tale 12 森の主大討伐(1)

以下、Chapter 2のあらすじです。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



白竜との熾烈な戦いを制したライ、呪いの病から一命をとりとめたアルマは、それぞれで療養の日々を過ごしていた。お互いの傷が回復した頃、再び冒険者としての活動を再開することになったのだが、突然少女リアナが行方不明になってしまう。アルマの同僚ユエラとリスティーにも協力してもらいながら、その事件を解決することになるのだが、深夜の森に潜む怪しげな女性に遭遇する。人間とは異なる身体的特徴を有する彼女の口から発される言葉に、アルマを始め一同は驚愕してしまう。

 グリュトシルデの森林地帯。

 普段はモンスターたちが静かに過ごすこの一帯。騒がしくなるとすれば、数名の冒険者が来訪している場合か、モンスター同士が争っている場合だ。


 しかし今日はそれらとは比にならない程の賑やかさだった。

 足音も打撃音も爆発音も、縦横無尽に飛び交っていた。


 それもそのはず。今日は森の主ことフォレストバインの討伐クエストが発行された日なのだから。



「オラァァッ!」


 重い回し蹴りが厚い葉の壁に食い込む。力を込められて放たれた一撃だったが、相手が悪い。そこには小さなへこみしかできなかった。それも手前の二、三枚の葉の一部が(えぐ)れただけ。


「ちっ。かったいなー」


 リスティーは蹴りを入れた反動で綺麗に着地し、そのまま襲って来る(つる)(かわ)しながら面倒そうに言った。

 しかし彼女的には手応えがあったのか、少し嬉しそうにも聞こえた。


 そんな彼女目掛けて後方から何かが飛んで来る。


「リスティー、避けて」


 全く臨場感のない、平常運転のユエラの声だった。


「んー。……って、うわぁぁ!?」


 リスティーが寝ぼけた声を出すのも当然だった。


 敵は前方にしかいない。後方にはユエラがいるのだから、その方向から脅威が飛んでくる確率は限りなく低かった。彼女の声の調子からも、その予測は正当性を増していた。


 そう思っていたリスティーだが、驚いてしまった。


 自分の髪を光の刃が掠めたのだ。(つる)どころではない。リスティーは慌ててその殺傷性の高い刃を(かわ)したが、寿命が縮む思いだった。


 そんな仲間を巻き込みかけた光の刃たちは、森の主へと飛んで行く。蔓を切断し、本体へと傷を付けた。


「おい、ユエ! ちゃんと私に当たらないように撃て!」


「ごめん、忘れてた……。でも大丈夫。リスティーが避けてくれたから」


 これは二人のいつものやり取りだった。ユエラはリスティーが(かわ)してくれることを信じて、突発的に魔術を放ってしまうのだ。


 その強い……と言えるのか分からない信頼関係があるからこそ執れる戦術だが、被害者になりかねないリスティーは毎回肝を冷やしていた。


(全く、ユエのゆるふわ感はどうにかならないのか……)


 もう少し真面目に戦ってほしいと思っていたが、今それを(とが)めても仕方がない。

 リスティーは目の前の本当の敵に集中し直した。


「それにしても……こいつを倒すことなんてできるのか?」


 目的はフォレストバインの撃退ではなく、討伐だ。


 それはリスティーとユエラ二人では難しかったかもしれない。


 だが今、グリュトシルデに所属する冒険者の中に、森の主を凌駕する者がいるのだ。討伐も夢ではないと感じてはいた。


 その彼は二人の戦闘の様子を確認できる木の上に身を潜めていた。


(リスティーは動きにキレがあって、機動力がいいな。ユエラは……戦闘には参加してるけど、ちょっと危なっかしい時があるな)


 今は高みの見物をしているライ。もう少しだけ様子を見ることにした。


 ライの視線の先では戦いは続いていた。

 リスティーに向かって蔓が伸びて来ているところだった。


「くっ!」


 リスティーは両腕で壁を作って、薙ぎ払われる蔓の鞭の攻撃に耐える。

 彼女の腕には金属製の黒い装甲が付与されている。腕を盾代わりに使えるのは、そのおかげだ。


 だが、一つの盾で抑えられる攻撃は精々一つか二つ。無数の鞭の前では意味を成さなかった。


 蔓の押す力が段々と強まると、リスティーは膝を曲げて踏ん張る。それでもなお押し負けてしまい、靴底が大きく擦れていく。


「リスティー、ピンチ……」


 後方のユエラの元へは攻撃はまだ届いていない。相方が攻撃を全て受け止めているからだ。

 戦形が不利に傾く中、逆転の一手を考えて実行した。


「ここは一旦仕切り直し。【光の照球(ライトスフィア)】」


 ユエラの持つ杖に()められた、透明度の高い水色の宝石。それが一瞬光で満たされると、宝石から照射される如くフォレストバインとリスティーの間に白い球が出現した。


 次の瞬間、球は弾けるように光り輝く。

 辺り一帯は真っ白に染められた。


(うわっ! そういう使い方もできるのか……!)


 鉱山探索の時には、視界を確保する光源としてお世話になった光の球。魔力の込め具合で変化する照度を利用した、奇なる一手と言えよう。


 その範囲にはライも含まれていた。感覚を狂わせて落下しないよう、幹を掴むように触れておく。


 一方のリスティーは、この閃光に感謝していた。


(サンキュー、ユエ)


 自分の腕に掛かる圧を感じなくなったからだ。とは言っても、リスティーも視界を奪われている。真っ白な視界の中、前方に突っ込んで行っても、有意義な攻撃ができる可能性はまずない。


 彼女は自慢の身体能力をバネに、後方に跳躍した。


 そして前後感覚を奪う(まばゆ)い光が収まった頃、フォレストバインは見当違いな方向を向いていた。


(そろそろかな)


 ユエラには策の続きがあったかもしれない。しかし、これ以上二人が戦い続けても消耗するだけだと、ライは見抜いた。


 フォレストバインの持ち前の自然治癒能力により、葉に空いた穴は塞がりかけていた。本体が元通りの姿になるのは時間の問題だった。


 ゆえに、ここからは自分も参戦するべきだと考え、木を飛び降りた。


 葉のぶつかる、カサカサという音をほんの少し立ててしまったが、二人に内緒で潜伏していたわけではないので問題はない。


「リスティー、真っ直ぐ走れ!」


「分かった!」


 リスティーは走り出す。

 しかしフォレストバインは、彼女をすぐさま再認識して自慢の蔓を差し向けた。


「俺たちはサポートだ。ユエラ、蔓を排除するぞ」


 もちろん、ライが一人でフォレストバインに対処することは可能だ。

 その根拠は、彼がこの世界に召喚された初日に、その巨体に致命打を与え討伐に成功したことにある。


 しかし今回は単独での任務ではない。チームプレイを想定している。


 クロス・ファンタジーでは、ライは名前と顔が通っており、初心者中堅プレイヤーに(たか)られて面倒を見たこともあった。そんな時、やはり主体となるのは彼らだった。ライはあくまで監督役。そうしなければ、各プレイヤーの成長に繋がらず、意味がなかったからだ。


 今の状況も同じだ。リスティーとユエラの成長に繋がる経験をさせることは、ランクだけで言えば先輩な冒険者のライにとって義務だった。


「分かった」


 ユエラは強く頷き、杖を構えて集中し始める。


「リスティーは狙わないようにな」


「うん」


「よし、行くぞ!」


 ユエラとライはタイミングを合わせて、各々の魔術を発動させる。


 ユエラの持つ杖の宝石が今度は黄色味を帯びて光り出す。どうやら使う魔術によって輝きの色が変わるらしい。


 そして宝石が光で満たされると、ユエラの前方に光の刃が現れた。


 一方、ライはすっかり慣れた感覚で右手に魔力を集中させ、球状の雷を生成した。


「【輝く光刃(ホーリーエッジ)】」


「【雷の蒼球(エレキスフィア)】!」


 温度差ある声が同時に響き、二種の魔術は放たれ直進する。


 しばらくもしないうちに発生する斬撃音と雷の轟音に加え、森の主の悲鳴。


 リスティーの進路を塞ぐように(ひし)めいていた蔓は散り散りになった。

2022/1/22 全体を少し修正

2022/4/17 能力を変更:【フラッシュ】→【光の照球(ライトスフィア)】(併せて、説明を追加)

【ホーリーエッジ】→【輝く光刃(ホーリーエッジ)】 【エレキスフィア】→【雷の蒼球(エレキスフィア)

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