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Tale 10 白竜戦(2)

 開戦を告げる白竜の叫びと同時、周囲が発光し始める。


「またあの術か!」


 侵入者を、挑戦者を蝕む、抗えようのない光が再びライたちを刺激する。

 それが示すことは唯一つ。この決戦に時間制限が設けられたということだ。


 そうライは思っていたが、それは杞憂だった。


「安心しろ。術の効果は消してある。視界を確保してやったのだ」


 白竜の声が高い場所から放たれる。ライには随分と余裕のある行動に見えていた。


「そうか……。それはどうもっ!」


 ライは白竜の翼目掛けて矢を放った。


 白竜の飛行を封じること。それが達成されれば陸上戦に持ち込むことができて、行動しやすくなると考えたのだ。


「ふん、話にならないな」


 ライの放つ通常の矢と、あの白竜の翼ではサイズがまるで違う。

 白竜がひょいと翼を一つ羽ばたかせると、矢はだらしなく落下してしまった。


「まあ、そうだよな……」


 ライもダメージを与えられると期待して矢を放ったわけではなかった。


 単純に、通常の射撃がどの程度通用するのか把握しておきたかっただけなのだ。


 そして、ただ矢を放つだけでは白竜に跳ね返されてしまうことを理解した。本数が問題なのではなく、勢いが足りなかったのだ。

 今の彼には、通常射撃で初撃を超えるだけの物を放つことはできなかった。


 最初から全力を尽くさなければ、この戦いに勝機は訪れないことを悟った。


 しかし、白竜に対抗するのは弓術師一人だけではない。

 もう一人の共闘者。彼女の存在が今も大きく感じた。


「【溢れる豪水(フラッドスケイル)】!」


 次の瞬間、白竜の頭上に青い魔方陣が多数出現し、そこから水流が轟音と共に発生した。

 

 滝のように流れ出る水は白竜の身体を濡らし、その全身を()し潰す。


 しばらくの間、白竜の姿は見えなかった。その青いベールに包まれていたからだ。


 この人工滝は一軒家数戸程度であれば、容易く水没させることが出来るだろう。


 圧倒的勢力を保った水圧で攻撃され続ける白竜。いくら巨大とは言えども、無傷では済まないだろう。


 そんな滝の生成者レイネールの期待を裏切らない悲鳴が上がった。

 

 だが、それは空中からではなかった。


「お、お、おい、レイネールさん! ちょっと抑えて!」


 白竜に直撃した激流。それが跳ねてライの足元と服を濡らしていた。


「す、すみません! 出し惜しみをして勝てる相手ではないので……」


 それはライも分かっていた。だが、仲間の行動範囲を狭めるような攻撃は良い手とは言い難い。


 レイネールは周囲の観察力に長けている。状況に応じて魔術を使い分けることもできる。ライは彼女との長い探検を経て、そう思っていた。その彼女がこの状況で魔力の調整を誤った。


 彼女は緊張していた。この一言に尽きる。


 青い魔方陣の維持にかかる魔力は徐々に減り、全ての水が射出されると、雫が(したた)り落ちるまでになった。


 ようやく落ち着いたライたちの頭上だが、攻撃対象の白竜はというと何くわぬ様子でその場を滞空していた。


 飛行高度は決して変化せず、身体には傷一つ付いていない。透き通った水に白い鱗が映り、竜の神々しさを一層強調していた。


「なるほど。こんなものか……」


「そんな……」


 白竜は翼を何回か大きく前後に動かす。体についた水滴が全て弾け飛ぶ。

 地面に飛散する水滴が(むな)しく染み込む。


「力でねじ伏せようとしたようだが、甘いな。汝がそれをするには力が足りない。彼我の戦力差を思い知るが良い」


 弓術師と魔術師、両者の初動は目に見える結果を残さなかった。


 若干期待外れな様子で、次は白竜が動き出す。


 白竜は大きく口を開け、そしてその口腔が白く輝き出した。


「ライさん、避けて!」


 レイネールの叫びとほぼ同時、白竜は薙ぎ払うようにその口から光の極太光線を吐き出した。


 それは一瞬の出来事だった。


「うわあぁぁっ!?」


 間一髪、ライは地面に飛び込んで難を逃れた。

 意識ははっきりしている。これと言った激痛も生じていない。

 光線の奇怪な音だけが耳にこびり付いていた。


 ライは顔を少し横に向けて、何が起こったのかを確認した。

 視界に驚異的な光景が映ると同時に、蒸発音が耳に入る。


 光線は地面を焼き払っていた。いや、焼かれたであろう地面は存在していなかった。

 その周囲にあるはずの飛散した瓦礫や石片すらもだ。


 ライの視界に映ったのは、この空間には決して存在しなかった漆黒。彼は奈落を覗いていたのだ。


「これは!? ……そうか。これが全てを無に帰す白竜の吐息。いや、吐息なんかじゃ生ぬるい」


 ライは驚愕と絶望に支配されながらも、生を実感した。


「大丈夫ですか!?」


 遠方でレイネールの声がする。


 彼女も光線の攻撃範囲にいただろう。(かわ)す隙も一瞬しかなかったはずだ。彼女は反射神経の観点ではライよりも劣っている。そんな彼女は様子一つ変えず、平然と立っていた。


「大丈夫です! それよりも、今は体勢を立て直して反撃を!」


「はい!」


 ライは立ち上がって弓を再び構え、上空を見上げた。

 何食わぬ顔で人間を見下ろす白竜。その様子を見るに、光線攻撃の反動らしきデメリットは無いようだった。


「ほう。よく躱せたな」


「随分と物騒な技を使うじゃないか。ずっとそればかりやっていればいいんじゃないか?」


「そうだな。しかしそれでは私も困る。私はここを住処としているのだ。自分の寝る場所を焼き払っては修復も面倒だ」


 どうやら白竜には地形を再生成する力があるらしい。


 それを今行わないということは、修復行動に時間がかかるのか、あるいは挑戦者である二人に敬意を払ってのことなのか。どちらにせよこの戦闘において今後、白竜が殺人光線攻撃を使うことはなさそうな口ぶりだ。


「そうか……。だったら安心して戦えるなぁ!」


 ライは眼前の奈落を跳躍して、白竜に向かって走る。

 弓を引きながら狙いをしっかりと空中の白竜を狙う。


 対して、白竜は翼で小さな竜巻旋風を起こした。


 竜巻は高速で接近してくる。それを躱すため、ライは弓を腰辺りまで下ろして視界を確保する。


(速いっ! だけど……いける!)


 四方八方への身軽な跳躍。


 彼は得意の軽いフットワークで、竜巻を一つ一つ的確に(かわ)して行った。

2022/1/14 全体を少し修正

2022/4/17 能力名称を変更:【フラッドスケイル】→【溢れる豪水(フラッドスケイル)

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