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Tale 6 侵蝕熱(3)

 ローブ姿のレイネールは新鮮だった。


 左手には指輪を幾つか身に着け、腕にはバングルを装着していた。自身の能力を強化するための物だろうが、その数を見るに白竜という存在をさらに強大に感じた。


「レイネールさん、行こう!」


「はい」


 ライとレイネールは街の正門にではなく、街の中心部の方へと進み始めた。


「ライさん、街の裏口に行ったことは?」


「俺がこの世界に来たのはほんの昨日のこと。そんな時間があるわけないです」


「分かっております。一応、確認しただけです」


「それで、何か言いたいことがあるんじゃ?」


 レイネールが無意味な確認をするはずがない。伝えたいことがあるからこそ、念入りに確認をしたのだとライは分かっていた。


「街の正門に見張りがいるように、裏口にも見張りがいるのです」


「それはあの兵士たちと同じような?」


「そうであれば問題ありません。裏口の番人と呼ばれる存在。それがこの先にいます」


 二人は経路短縮のため、いつの間にか表通りから細い路地に入っていた。


 迷路のような道を、レイネールを先頭に何度も何度も曲がって行く。


 しばらくしないうちに、その迷路の終端が近づいて来た。


 目的の鉱山に続いているであろう裏口。そこは警備などされていなかった。人一人いなかったのだ。


 ならば裏口の番人というのは、レイネールの虚言だったのか?


 それは否だ。


 ライは気付いていた。目の前に異質な違和感があって、その領域に踏み込んだら切り捨てられるかもしれないという予感がしていた。


「そこにいるのは誰だ?」


 次の瞬間、巨体が現れ太い声が響く。


「俺の【視認阻害(ステルス)】を看破するとは……。お前、何者だ……?」


 褐色の重鎧の衛兵。右手には斧を持ち、数多の修羅場を乗り越えてきたような風格だ。


 フルフェイスの番人が姿を現したのを見て、ライは驚いた。その男が予想していた図体よりもずっと大きかったからだ。


「悪いな。俺も同じ力を持ってるからさ。そういう類のスキルには敏感なんだ」


 ライは番人と同じように姿を消して見せる。そしてすぐに姿を現した。


 【視認阻害(ステルス)】は名の通りの認識阻害系の能力。クロス・ファンタジーでは姿を消していられる時間に限りがあったが、ストラティアでは看破されない限り、あるいは術式維持のための魔力が枯れない限り、身を潜め続けることができるようだ。


「ほう。面白い……」


 番人は斧を構えた。


 重厚な外見に、自信に満ちた態度。彼の強さは偽りでないことを感じ、ライは戦慄を覚えた。

 彼の目を欺くことはできず、力を示すしかないと思い、弓を構えた。


 しかし、


「お待ちください!」


 レイネールが間に入った。ライを庇うように立った彼女の姿を見て、番人は武器を下ろした。


「お前は……レイネールか」


 一つの街のギルドマスターだ。彼女の名前と姿は広く知られていた。


 番人が兜の向こうで小さく笑っている気がした。


「珍しいな。表舞台に立つのを嫌うお前がこんな所まで足を運ぶとは……。一体どんな用だ?」


 ライに向けられていた敵意はなくなった。


「私たちはこれから鉱山へ向かいます。そこを通してください」


「何のために?」


 ギルドマスターの権限を以てしても、簡単には通してくれないらしい。


「白竜に会いに行きます」


「白竜だと?」


「はい」


 レイネールは番人を強く見つめる。その目には真っ直ぐな意思が感じられた。


 一方で番人も彼女を見下ろしていた。番人として裏口を守る義務があるから、判断を慎重に行っているのだろう。


 レイネールと番人にどんな関係があるのか。ライには全く分からなかったが、彼らは強い絆で結ばれていることは感じられた。


 それでも、


「駄目だ。ここを通すわけにはいかない」


 裏口の番人は彼女の願いを拒否した。


「何故……。何故ですか!?」


「お前は白竜という脅威を十分に理解しているはずだ。また、あの時(・・・)のように犠牲を出すのか?」


 番人はライを見下ろしていた。


(犠牲? 何の話だ……?)


 ライはレイネールを一瞥するが、彼女は動揺することなく、それどころか堂々としていた。


「犠牲を出すつもりはありません。ここにいるライさんは、私よりもずっと強い方です」


「淘汰されるならば、お前の方が先だとでも……?」


「その覚悟は出来ています」


「……」


 レイネールは強くそう言うも、番人はその巨体を頑なに動かさなかった。


 確執を前に、ライは疑問を抱き始めていたが今はこの番人の突破が最優先だった。


「俺とレイネールさん二人なら、白竜にも立ち向かえる。だから通してくれないか?」


「その根拠がどこにある?」


「根拠は……ない。だけど、助けたい人がいる。それって全力を出すのには十分すぎる理由じゃないか?」


 今のライに口にできる言葉はそれだけだった。


 その通り、アルマを助けたいという一心でここに立っているのだから。


「……無茶はするな。行け」


 番人は鎧の金属の衝突音を立てながら道を開けた。


「ありがとうございます!」


 レイネールは頭を下げると、ライの手を取って走り出した。


「あっ、ちょっ……レイネールさん!」


 ライは一瞬転びそうになったが、すぐに体勢を立て直して彼女について行く。


 番人の横を通った時、


「レイネールを頼む」


 小さな声でそう言われた。


 ライは振り返ったが、次第に離れる彼に言葉を返すことができなかった。

2021/12/26 裏口の番人との会話を微修正しました。

2022/4/17 能力名称を変更:【ステルス】→【視認阻害(ステルス)

併せて、この能力について説明を追加しました。

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