Tale 0 少女誘拐犯
初めまして。「ぽぽの」と申します。
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新緑生い茂る森。暑くもない日差しが、ほどよく隙間から差し込む。
そのどこかも不明な場所で、一人の弓使いは固唾を呑んでいた。
「俺が何をしたって言うんだ!?」
彼は抗議していた。着せられかけた濡れ衣に対して。
「そんなの明白です。少女誘拐に決まってるじゃないですか!」
そう言うのは、彼の正面、薄柔らかな桃色の髪の少女。
だが彼女の言葉は鋭い。手ごろな金属剣の刃先を向けながら、守るべき相手を思い、正義を掲げる。
一方で困った様子の青年。体は現代日本における高校生の発達具合だ。しかし顔は少し幼く、少年と言われても大差ないだろう。
彼は対抗して、念のため弓を構えている。決して撃つつもりはない。あくまで牽制だ。
少年の視線の先にはもう一人少女がいた。
彼女は背の高い方の少女に抱きかかえられ、目を瞑っていた。
「違う、見間違いだ!」
「何を今さら。現行犯じゃないですか!」
少年は反論に困る。彼がこうなった事情を知らない第三者から見れば、犯行現場を押さえたも同然なのだから。
「今助けますからね」
少女は剣を振るうことはなく、反対の手を突き出す。
彼女が行使したのは魔術。この世界では、魔力を行使する行動全般を指し、各人の適性に応じて扱うことのできる力だ。
不意を突かれた少年。超常的な光が彼を襲う。
「こ、これは……!」
両手足首に感じる圧迫感。
地面に物音立てて落下した愛用の弓。
彼の身動きが取れない状態に、桃色髪の少女はひとまずの安堵から笑んだ。
思えばどうしてこうなってしまったのか。彼は事の展開を恨んだ。
事の発端は今から数時間前に遡った、こことは別の世界での話になる。