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「エレナ!卒業おめでとう!」
「ありがとう。レン」
「ああ!来月からは僕…いやわたしが学園に通うことになるが、待っていてくれるか?」
「勿論です。」
「エレナ、ありがとう。」
微笑み返した懐かしい記憶。
冷静に俯瞰して見ている自分がいる。
これは、夢……
いつの間にか寝てしまったよう。
そういえば、この時と比べると背も伸びて、男らしく成長されていた。
夢の中で気づくとは、私も随分と気が漫ろだった。
学園での2年は、彼の心境には大きく変化を齎した。
あえて、調べていなかったけれど、どういった変化があっての婚約破棄なのかは確認しておかないといけない。
お父様に、これ以上迷惑はかけられない。
夢の場面はいつの間にか切り替わっていて、
小さな泣き声が聞こえる。
あれは、小さい頃の私?
「おとーさまに、きらわれたくない」
「おとーさま、えれなをみて」
「おとーさまに、ほめてもらいたい」
「おとーさまのためにもっとがんばらないと」
「おとーさま、おとーさま、おとーさま…」
これが小さい頃私…?
『これこそがあなたの本当に欲しているものよ』
今まで聴いたことのない女の人の美しい声が響く。
これこそが?一体どういうこと?
こんなこと言っていた覚えが全くない。
『思い出せないのも無理ないわ。これはあなたが封印していた想いなのだから』
その美しい声は、続く。