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それは天気のいい日だった。
夏から少し秋に近くなった日和で、ガーデンテラスでお茶をする。
彼は終始落ち着かない様子で、私のことは眼中にないようだった。
挨拶も御座形で、私に対する礼儀とか心遣いは微塵も感じさせてはくれない。
喉が急速に渇いていく。
呼吸ができなくなる前に落ち着こうと、
私が彼から目を離し、ティーカップに手を伸ばしお茶を一口飲んだ。
ふぅと息をつく間も無く、彼は言葉を発した。
「婚約は破棄したい」
覚悟はしていたはずだった。
指先に力が入らなくなったのか、ティーカップを落とす。
割れた音が何処か遠くに聞こえた。
堪えるために、膝で手を握りしめる。
「わかりました」
笑えているのか、自分ではも解らない。
けれど、彼が安堵した表情を浮かべていたので、きっと未練がましくはなっていないと思った。
彼は満足してこの場を後にした。
残ったのは、動けない私と、壊れたティーカップ、ティーカップから零れテーブルを濡らす紅茶だけ。
「お嬢様…」
私付きのメイドが声を掛けてくれる。
今、言葉を発したくない。俯いて、その声を無視した。
メイドな何も言わず私の傍に来た。
一拍の後、ギュッと抱きしめられる。
「お嬢様、泣いていいんです。
辛いと言って下さってもいいのです。
悔しいと怒って下さい。
どうか堪えないで下さい。
お嬢様は何も悪くありません。
お嬢様は、お嬢様はっ……」
メイドからも嗚咽が聞こえる。
私も堪えきれなくて、その腕の中に身を預けて声を上げて泣いた。
憎らしいくらいに空は晴れ晴れとしていて、泣いた事は誤魔化せそうになかった。