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国教、それは国家が保護し活動を支援する宗教。

私の住む、ウレチシア王国では愛の女神に対する信仰の事を指す。

王国ができる前、ある男女がお互いを想い合っているにも関わらず、すれ違いをしていた。

それを不憫に思った愛の女神が仲介したことから初まったとされている。


以下、聖書より意訳――――――――

愛の女神は、男女のもとへ顕現し、

男には、金のブレスレットを

女には、銀の指輪を

肌身離さず身につけなさいと授けた。


あなた達の互いを想う心に陰りがあれば忽ちそれらは黒くなる。

完全に心変わりをすれば砕けてしまうでしょう。

これは、あなた達への愛の試練です。


男女は試練を乗り越えた。

一つの陰りも見せず、愛を証明した。

二人は結婚し、変わらぬ愛を女神に誓った。

死が二人を分かつまで、その誓いは守られた。

――――――――



聖書にある初めての男女を祖先とするのが、この国の王族の方々。

国教となった今、女神に直接装飾品を賜る事は滅多にない。

しかし、恋人や婚約者と愛を証明することはこの国の常識として根付いている。

神殿で互いに装飾品を贈り合い、それを身につける。

それだけで愛の試練は開始される。

聖書にある通り、黒ずんだり、破損することも起こると聞いている。

試練に失敗しても女神から鉄鎚が下されるわけではない。ただ、同じ人と恋人や婚約者に戻ることはできないと、いうだけで……



自分の手首にあったはずのブレスレットを思い浮かべる。

黒ずんできたのは、きっと私の手入れが悪いのかもしれないと磨いて、磨いて、磨いて…

でもその端から黒くなっていくことに気付いて、手首に付けずに見えないように懐に隠した。

誰かに指摘されるのは、怖かった。

毎日、毎日、いつ治るのだろうかと独りで不安になって、でも誰にも気付かれたくなかった。

婚約者に手紙を書いて、ささやかな贈り物をしたり、会う時間が欲しいと綴ったけれど、どれもこれも駄目だった。

だから、ブレスレットが小さく音を立てて壊れた時には、もう覚悟を決めるしかなかった。






ブレスレットが壊れて1日も経たないうちに、

婚約者はやってきた。


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