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4/12

4. 1/25~ ?

 2時限目は全校集会で、日間さんの姿はなかった。

次のLHRで終わり、午前中に帰れるからラッキーだ。

無言で学年移動が行われる中、みんなも浮足立っているようだった。

 休み時間は、自分の席でぽつんと座っていた。

前の席の波多田君も、後ろの席もいなかった。トイレか、別のクラスに

行ってるのだろう。

離れ離れになった友達が何組なのか確認せず、何か空席になった日間さん

の席が気になっていた。

始業のチャイムがなっても、日間さんは来なかった。

 何かおしゃおしゃ言いながら、先生がプリントの整理をしている。


「はい、今日はこれが最後の時間ということで、何をするかというと、

まずは配布物を配ります。とにかく多いので、枚数、確認お願いします」

 先生が手際よくプリントを配布し、内容をチェックする。

心構えや学校規則、去年あった近隣からのクレームと対応や、

年間行事等々だった。


 ……どれどれ。プリントに目をやると、当該中学生と思われる

夜遊びや事件があった。

深夜徘徊については、特徴も場所等全く記載もなかったから、

俺の件はセーフだ。

「はい、これで以上なのですが、先生の手際が良かったのと、

皆さんが静かに聞いてくれたおかげで、すぐに終わりました。

はい、解散! 」

 クラスのみんなが、喜々として帰る準備に取りかかろうとする。


 「……と行きたいところですが、ついでに、来週から三者面談も

始まるので、今のうちに進路希望を取りたいと思います」

 フェイントに、クラス中からブーイングが飛ぶ。

「新しいクラスで、このクラスは32人で男女ちょうど半々なので

バランスがいいです。進路希望調査で隣の席の人と、2人1組になって

もらって、30分、質問してプリント欄を埋めてください。見ての通り

趣味・特技・将来の夢や進路希望・それから不安に思っていることや

関心事など簡単なので、それを元に仲良くなってください」


 ん? ……2人1組? 隣の空席をチラリと見る。

先生がぐふふ、とこちらを見ている。

……何かわかった気がする。


 「今、日間さんがいないのでね、陽当くんは、先生と組みましょう。

では、みなさんも早速取り組んでください。はい! スタート」

先生が合図の手を叩く。

「この席小さいな。イス壊れちゃったりしたら、日間さん怒るかな?

うお、机に収まらないな。先生の悩み? 」

「聞いてないです」

「そう言わないで聞いてよ。いやぁ、この席は本当に日当たり良好だね」

「やめてください」


 「なんと先生! 去年と比べて胴回り6cm! ぜい肉ついちゃってさ」

「さっきより、増えてるじゃないですか! 」

「いやぁ、先生見栄張っちゃってさ! あっははは! 」

「そんな大声で言ったら、見栄張った意味ないじゃないですか」

……そんなペースに巻き込まれながら、俺は先生の話は無視して、

日間さんとの会話を思い出しながら、あーでもない、こーでもないと、

用紙を埋めておいた。これには、おー、と先生も感心したようだった。


 3時限が終わり、SHRになると日間さんが戻ってきた。先生がつき添っている。

机をカバンに、いや、カバンを机においてハアァ――、と顔をつっぷしている。

「もうチョイだ、がんばろ」

低い声が聞こえた。


 「じゃあ、今日はみなさんの協力もあって、後、日間さんも

早く帰りたがってるので、終わりにしたいと思います。

その前に、今日1番活躍した、MVPの陽当くんに拍手~! 」 

 ……だから、なんなんだよ、これ!

「それじゃあ、土、日休みで、次に来るのは来週の月曜日!

さようなら~! 」


 日間さんは、1人だけ席に着いて突っ伏した。顔をこっちに向けた。

「今日はありがとね~、陽当くん」

「うん……本当に大丈夫? 」

「ダイジョウブ、ダイジョウブ。後は友達来てくれるし、ダメだったら、

先生に送ってもらうよ~」

「うん、それじゃあお大事に」

付き添いの女子が、心配そうに相談している。本当に、大丈夫だろうか?


 廊下に出ると、見かけた顔があった。

「さっくー! 自原! 」

「よう、お前3組だったんだな」

「そろそろ来る頃だって、待ってたぜぇ~? よしゃ、帰ろうぜ」

「2人とも同じクラス? 」

「いや、違う。俺1組」

「俺は、4組だぜぇ……」

「そうだったのか、他のクラスでよろしくやってるのかと思ったよ」


 「お前の方はどうだ? りょーこ! 」

「なんか、先生とは仲良くなった……かな」

「おぅ……それは、災難だぜェ」

「3組は階下先生だろ? あたりじゃん。いい先生だよな、メタボだけど」

自原が鼻で笑った。

2人とのやりとりが、なつかしく感じる。


 「あの死にかけてる子、日間さんだろ? 大丈夫か、あれ? 」

 周りに、3人の女子に誘導されて教室を出るのが見えた。

「多分……」

雑談してる俺達の前を、ゆっくりと通り過ぎて行く。

「陽当くん。ほんとうに、さっきはありがとねー」

「……手伝おうか? 」

「いいのいいの! そこの職員室までだから! 」

女子3人のうちの1人が言う。


 「いつの間にか、知り合いに? 」

2人が声を合わせて聞いてくる。

「今年も同じクラスだった」

「お~、てことは……125分の1! 」

息ぴったりで顔を合わせた。なんだ、こいつら。

「考えようによっては、最初のクラスを除外して、25分の1だけどな」

俺はつけ加えた。

「確かに」

「あと……席も3年連続同じ席だった」

「計算できねぇな……」

声を合わせて言った。みんな、成績は察しの通りだった。


 俺達は、校門を出て途中まで一緒に帰った。

「さっくー、内山ってのは、来た? 」

「内山? あいつは来ねぇよ。また違うクラスだったし、

どうするんだろうな。自原とも、違うよな? 」

「ああ、違うぜェ……」

「今日も報告だけはするけど、無駄だろうな」


 「今の、日間さんについて何か知ってる? 虚弱体質って聞いたけど」

「俺も、あまり知ってることはないな。

とりあえず、体育とかそういうのは無理って聞いたことがある。

いつ頃か忘れたけど。交友はいい方じゃないか?

クラスの中心てほどじゃないけど、ムードメーカーってやつ? 

みたいな」

「1年の頃は合唱、それから吹奏楽部だったぜぇ……。

合わせて半年くらいで体調不良で辞めたって、姉ちゃんから

聞いたぜぇ……俺も、それしかないぜぇ? 」

「そうか」


 「俺達は、どうする? 帰って昼飯食って、どっか遊びに行くか? 」

「追って連絡するぜぇ」

「ごめん、俺は今日はちょっと無理。腰痛めた、休みたい」

それぞれ帰宅した。


 「ハアァ―――ァ」


 部屋に戻ると、ベッドに飛び込んだ。

少し休んで夕方になった。あと少し、夕食を食べ終えて、風呂に入ったら

今宵も行動開始だ。

「へ、へへへ」

夕食を食べて風呂に入る。野菜ジュースを飲みながら外を散歩する。

今日はどこにしようかな? 

頭に場所とルートを浮かべながら、俺はその時を待った。



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