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76.勉強会Ⅱ


 俺は勉強会にはまっていた。


 何故そんな真面目になったかというと、弓花と勉強を始めてからやたら効率が良いからだ。


 常にスッキリとした気持ちで勉強ができ、弓花が応援してくれるのでモチベーションも高い。

 人は煩悩に苦しみ、集中力をかき乱され、己を怠惰にさせていく。


 だが、弓花は俺から煩悩を消し去ってくれる。

 俺が物欲しそうな顔で弓花を見つめると、俺から全ての欲求を抜き取ってくれる。

 そして、俺は研ぎ澄まされた集中力を手にして一心不乱に勉強を行える。


 なんというシステムだ……

 このまま行けば東大にでも合格できそうなレベルになるかも。


「お兄ちゃん、あたしも一緒に勉強したい」


 珍しく弓花と一緒に妹の華菜も部屋に入って来た。

 最近、弓花と一緒に勉強をしている姿を頻繁に見ていたからか、華菜も一緒に勉強会をしたくなったみたいだ。


 しかし、困ったな……

 華菜がいる前では弓花に俺の欲求を抜き取ってもらうことができない。


 悶々とした状態で勉強をしなければらないのだ。

 いぎだいっ!!


「華菜ちゃん、この勉強会はガチだからお遊びは無しよ」


「うん、華菜もお兄ちゃんとお姉ちゃんと同じ高校に通いたいから本気で頑張る」


「素敵な志しね」


 みんなで勉強を始める。まさかこんな日が訪れようとはな……

 双子と妹と勉強会。こんなに仲の良い兄妹は珍しいはずだ。


 一時間ほど集中して勉強していると華菜が立ち上がった。


「ちょっと、おトイレ」


 そう言って部屋から出ていく華菜。


 華菜が部屋から出てったことを確認した弓花は俺に吸い込まれるように抱き着いてきた。


「おいおい」


 急な弓花の行動に俺は慌てる。


「ちょっと休憩。イチャイチャさせて」


 ここぞとばかりにキスをしてくる弓花。

 どんだけ俺のこと好きなんだよ。


「やけに積極的だな」


「今日は生理前だから、そういう欲求が強くなるのよ」


「そういうもんなのか?」


「ええ。一番咲矢を求めてしまう時期だわ」


 そんなこと言われてしまえば、弓花の好きなようにさせてあげるしかない。

 もうされるがままに身を預けよう。


「そろそろ華菜が戻ってくるんじゃないか?」


「そうね、でもギリギリまで味合わせて」


 いつ華菜が戻ってきてもおかしくない状況で俺を味わっている弓花。

 こんな状況を華菜に見られたらまずいとハラハラしてしまう。


「はぁはぁ……」


 弓花の熱い吐息が俺の首筋にかかっている。


 欲は人を無能にしてしまう。

 もう華菜が戻ってきそうなのに弓花は止める気配がない。


「ただいま戻りました」


 戻ってきた華菜の声を聞いて、慌てて俺の隣に転がり込んだ弓花。


「どうしたのお姉ちゃん?」


 腰がぴくついている弓花に問いかける華菜。

 間一髪、俺の股の上から離れることができていた。


「大丈夫よ。ちょっと勉強に疲れて横になっているだけ」


「そっか」


 顔を真っ赤にしながら言い訳している弓花。

 落ち着かせるために頭を撫でてあげた。


「ちょっと私もお手洗いに行ってくるわ」


 そう言って部屋を出ていった弓花。

 自分の部屋に寄ってからトイレへ向かっていたので、もしかしたら代えの下着を持っていったのかもしれない。


「お兄ちゃん」


「どうした?」


「ちょっとかまってほしい」


 そう言いながら俺に抱き着いてきた華菜。

 なんかデジャヴだな……


「勉強頑張ってるな」


「うん、勉強嫌いだけどやらなきゃなって思ってる」


「偉いぞ」


 華菜の頭を撫でると、うぅという声を出しながら嬉しそうにしている。


「ご褒美ほしいな……」


 物欲しそうな顔で俺を見つめている華菜。


「俺にあげれるものなんてないけど」


「勝手に貰うから大丈夫」


 そう言ってキスをしてくる華菜。

 君もかい? 君もなのかい?


「おいおい何やってんだ」


「お姉ちゃんが戻ってくるまで許して」


 顔を真っ赤にして見つめられながらそんなこと言われてしまえば、許すしかないだろ。

 許す。俺はあらゆる罪を許す。

 俺に許せないものはない。


「なんかね、今日は身体が熱くて」


「……もしかして生理前だったりするのか?」


「何でわかるの!?」


 やはり弓花と姉妹なだけあって似ているな。


「じゃあこれからキスラッシュするね」


「もう好きにしてくれ」


 この変態シスターズを受け入れられるのは俺のくらいなもんさ。


「ただいま」


 弓花が部屋に戻ってきたので華菜が慌ててバク宙をして、ちゃぶ台机を飛び越えて自分の席に戻っていた。

 流石はダンス部なだけあって、アクロバティックなことするな。


「華菜ちゃん今飛んでなかった?」


「昇天してないよ!?」


 弓花にギリギリ見られていたのか、華菜が顔を真っ赤にしながら必死に首を振っている。


「そっちの飛ぶじゃなくて、物理的に」


「えっ、あぁうん、ね、眠気覚ましにバク宙してたの」


「ちょっと何を言っているかわからないわね」


 結局、その後はみんな心ここにあらずといった様子で勉強していた。


 この勉強会で藤ヶ谷家の偏差値がむしろ2ぐらい下がった気がする――


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[一言] 3人でスッキリすれば捗るのでは!
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