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39.告白


「じゃあ、家は任せたわよ」


 母はスーツケースを持って旅立ってしまう。


 華菜も一足早く家を出て行ってしまったので、俺と弓花の二人きりになった。


「……ようやく二人きりになれたわね」


「そうだな」


 弓花は俺に抱き着いてきたので、俺も弓花を抱き返す。


 もう誰も二人の間に邪魔は入らない……

 いや、誰か邪魔してくれなきゃ困るんだって。


「どうする? このままベッドに行く?」


「学校があるだろ」


 唯一の救いは平日であること。

 休日だったら一日をフルに試されることになっていたからな。


「サボりたい。咲矢とずっと一緒にいたい」


「それは駄目だ」


「もぅ……ノリが悪いわね」


 弓花も断られるのを前提に俺にサボりを提案してきている。

 きっと俺がサボるかと言っても、やっぱり学校には行きましょうとなっていたことだろう。



 俺達も準備を終えて家を出る。


 弓花は少し気がかりなことがあるのか、今朝から俺に不審な目を向けていた。


「何か言いたいことがありそうだな」


「昨日、華菜ちゃんと一緒に寝たって本当?」


「……ああ。修学旅行前で寝れないから一緒に寝てほしいってお願いされた」


「ズルい」


 華菜に嫉妬をしている弓花。


 だが、その気持ちもわかる。


 もし仮に弟がいたとして、弓花と一緒に寝ていたら俺も嫉妬はするだろう。

 いや、嫉妬どころではない。最悪、死刑だ。


「私としてないことはしていないわよね? 色んな咲矢の初めては私が独占したいから」


「するわけないだろ。女慣れしてるって言われて、ちょっと怪しまれたし気が気じゃなかった」


「あら、私に染められたお兄ちゃんにショックを受けちゃったかしら」


 ふふふと嬉しそうに微笑む弓花。

 その姿は魔女を彷彿とさせる。


「そうだ。私今日、告白されるらしいの」


「……ざけんな」


「そう、怒らないで。ちゃんとばっさりと断るから」


 弓花は可愛いし綺麗だし美しいので、告白される理由は十分にわかる。

 だが、結果が決まっていたとしても腹が立つことは変わりない。


「何で知ってんだよ」


「クラスの女子に言われたの。明日の朝、隣のクラスの大野君が告白しにくるからって。どうやら協力者のようね」


「大野……サッカー部のやつか。戦ったら負けそうだけどぶん殴りたい。告白を受けずに逃げるとかできないのか?」


「可能でしょうけど、私的には都合が良いのよ」


 何か企んでいるのか、俺の方をニヤニヤと見てくる弓花。


「何かするのか?」


「もちろん。先に謝っておくわ」


 嫌な予感がするが、受け入れるしかない。

 もう弓花の覚悟が決まっているみたいだからな。



     ▲



 教室に着くと、クラスメイト達がどこか慌ただしい。

 大野が弓花に告白する話が広まっているのだろうか……


「やほ、咲矢君」


「心春、この慌ただしさはあれか? 弓花か?」


「その通り。本人から聞いたんだね」


 俺は椅子に座って机を軽く叩く。

 誰だか知らんが振られた腹いせに弓花に何かしたら迷うことなくキレてしまいそうだ。


「噂をすれば来たよ」


 隣のクラスの大野が教室に入ってきて、クラスメイト達がより一層慌ただしくなる。


「もしかしてこんなに人がいる教室で告白するのか?」


「そうみたい。長澤さんがどこにも出向きたくないからって言って、必然的に教室になったみたいだけど」


 どうやら弓花が教室での告白を誘導したみたいだな。


 大野も自信があるのか、こんな教室でよくもまぁ告白しようと思うな……


 勘違いもほどほどにした方が良い。

 きっとこれも青春の一ページとか勝手に思っているんだろうが、自分に酔って勘違いしている高校生ほど厄介なやつはいない。


「長澤さん、俺と付き合ってくれ!」


 大野の言葉に女子から黄色い歓声があがる。


 人目につく場所であえて告白することで、断り辛い空気を生み出す作戦なのかもしれないな。


「……ごめんなさい」


 弓花の返答に今度は悲鳴があがる。

 俺もまじかよと白々しくリアクションしてやろう。


「何で? 俺じゃ駄目なのか?」


「駄目も何も、私には既に付き合っている人がいるのよ。ごめんなさい」


「誰だよそいつは? 同じ学校の人か?」


「ええ。同じクラスの藤ヶ谷君」


 俺の方を見て、そう堂々と宣言した弓花。

 まじで言いやがった……


 公表するとは聞いていたが、こんな形で言うとはな……


 そうか、この場ならあっという間に俺と弓花が付き合っていると知れ渡る。

 朝の言っていた都合が良いからとはこういうことか。


 だが、俺はクラスメイト達から一気に注目を浴びることに。

 これはたまらなくウザい。


「あーあ、もう言っちゃったね」


 心春は隣で静かに笑っている。

 まるでこうなることを知っていたかのように。


 俺さん、何かやっちゃいました?

 と言わんばかりに注目を浴びている俺は白々しく、自分の頭をかく。


 影の者が注目を浴びるようになってしまう最悪な朝だった――


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[良い点] うわああめっちゃすこです [一言] 作者様に感謝
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