38.挿入
俺の部屋で弓花が膝枕をしてくれている。
その理由は耳にピアスの穴を開けるためだ。
「恐い恐い!」
「危ないからじっとしてなさい」
耳に穴を開けるという作業にビビる俺を抑える弓花。
「優しくしてくれよ」
「まったく……情けないわね、ピアスの穴の一つで。でも、そういう可愛いところもあるのが好きなのよね」
弓花は俺の手を握って安心させてくれる。
結局、弓花は俺の顔を胸の中に埋めさせて身動きが取れないようにしてピアスの穴を開けてきた。
痛みはあったが、それ以上に弓花の胸の中が気持ち良すぎて幸せに終わった。
「終わったわよ」
「ふぅ……何とか耐えたな」
「じゃあ、次は私にお願いね」
今度は俺が弓花を膝枕してピアスの穴を開けることに。
開ける方も緊張するな……
「優しくしてね」
さっきは強気な発言をしていたが、いざピアスの穴を開けるとなると身体を震わせている弓花。
それを指摘することはせずに、黙って手を繋いであげる。
「ふふっ、咲矢のそういうところ大好きよ」
俺の意図を理解したのか、俺を見つめて空いている手で頬を撫でてくる。
お互いにされて嬉しいことを理解している。
だから、毎日懲りないほど好きになっていく。
「挿れるぞ」
「ええ……お願い。ゆっくりね」
弓花は俺の身体に半身で抱き着いてくる。
俺は弓花の綺麗な髪を掻き分けて、露わになった耳へ針を通すことに。
「いっ……」
針が入ると痛さそうな顔を見せる弓花。
俺と弓花が一つになる時も同じような表情を見せるのだろうかと、しょうもないことを考えてしまった。
「入った」
「ふふっ、入れられてしまったわ」
変なリアクションをとる弓花も俺と同じで、しょうもないことを考えているのかもしれない。
「できたぞ」
「ありがとう」
安堵した弓花はそのまま俺の首にキスをしてくる。
そして互いのピアスを左右につけて、俺達はしばらくの間ベッドの上で肩を抱き寄せ合っていた。
▲
深夜一時。俺はベッドの上で眠れずにいた。
明日から母も華菜もいない。
弓花と二人きりで過ごすんだ。
どんなことが起こるのかを想像してしまっては、興奮を繰り返して寝られない。
男の俺にとって一大イベントであるから、こればかりは仕方がない。
きっと隣の部屋の弓花も寝ることはできずにいるのだろう。
そんな中、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえた。
俺は弓花が来たと思い、高揚とした気持ちでそっと扉を開いた。
「……お兄ちゃん」
だが、扉の前にいたのは華菜だった。
がっかりとかそういう感情は無いが、意外な来訪者に慌てることに。
「どうした?」
「眠れない」
どうやら華菜は修学旅行を前にして、眠れなくなってしまったようだ。
これは小中学生にあるあるな現象で、遠足や旅行の前には緊張して上手く眠れなくなる。
このままだと旅行中に体調を崩してしまう危険があるので、華菜を部屋に招き入れた。
「寝れないのは理解したが、どうして俺の部屋に来たんだ?」
「お兄ちゃんと一緒なら安心して寝れるかなと思って」
「もう中学生だろ?」
「う~ん……」
華菜が泣きそうになってしまったので、慌てて抱きしめる。
「仕方ないな、今日だけだぞ」
「ありがとうお兄ちゃん! 大好き!」
俺は甘えられるのに弱い。
華菜もそれを理解して俺の元に来たのだろう。
そのまま二人でベッドに入り、電気を消すことに。
「久しぶりだなこういうの。子供の時は一緒に寝ること多かったけど」
「うん。中学生になってからは初めてかも。でも、ずっと一緒に寝たいと思ってた」
ぜんぜんお兄ちゃん離れができていなくて心配にもなるが、それは俺のせいでもあるので受け入れるしかない。
俺は華菜を抱きしめて、頭を撫でる。
ぶっちゃけ俺も寝れなかったので、良い癒しとなるな。
「お兄ちゃんって最近、ボディータッチ多くなったよね。女慣れしたっていうか、なんか複雑」
華菜に痛いところを突かれる。
最近は弓花とイチャついてばかりいたので、華菜とも距離感がより近くなったのだろう。
「触らない方がいいか?」
「うーうん、いっぱい触ってほしい。お兄ちゃんの手、温かいから」
華菜は拒否をしない。
そうだろうなと思って俺も触っているんだけどな。
華菜の身体はぷにぷにとしていて柔らかい。
触り心地が良いというか、落ち着くというか。
弓花とは違った魅力がある。
「あたし、最近けっこう胸が大きくなってるんだ」
「そうなのか……」
確かに当たっている胸は以前よりもはっきりとした感触がある。
華菜の言葉は嘘ではないだろう。
「嬉しくないの?」
「それで喜んだら変態だろ俺」
「お兄ちゃんは変態でしょ?」
華菜は俺の身体の異変に気付いたのか、変態呼ばわりしてくる。
「お兄ちゃんが変態なんじゃなくて、男はみんな変態なんだよ」
俺はしょうもない言い訳をする。
三十億人以上の世界の男性を巻き込んだ。
「弓花さんみたいになれるかな?」
「可能性は秘めているな」
弓花と母の血は同じなため、弓花のように胸が大きくなる可能性はあるはずだ。
しばらくすると華菜から寝息が聞こえてきた。
どうやら安心して眠れたみたいだな。
俺はこれから訪れる不安をかき消すように華菜を抱きしめる。
目が覚めたら華菜は遠くに行ってしまう。
三日間だけだが、それはとてつもなく長く感じる。
我が妹よ、俺たちを二人きりにしないでくれ――