表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝子の武士  作者: 葦草
4/37

学校生活を語ります(3)


そういえばまだ説明していなかったけど、これから始まる始業式では、新しい生徒会と風紀隊役員の発表がある。

この役員決めについてもちょっと特殊で、生徒会長と風紀隊長は教師の評価と、前生徒会長と前風紀隊長の推薦とで決められる。


この時、評価の基準となるのは勉強の成績と、戦闘の実力、それから見た目という3点。勉強の成績は言わずもがな、戦闘の特化した学園でも頂点に君臨するためにはそれ相応の戦闘力が必要とされるし、人を惹きつける見た目というのは案外リーダーには必要な素質だ。


ということで、まずはその2人だけが決定される。

それ以降、生徒会については副会長、会計、書記、庶務といった計4人のメンバーを、生徒の推薦を主軸に決めていくのだ。


そのため、生徒会役員については正式発表がこの始業式で行われる。しかし、何より特殊なのは風紀隊だ。


普通の学校では風紀委員というものすらないだろう。

漫画などでは「風紀委員」という言い方をしていたが、この学園の風紀は名前の通りまさしく「軍隊」なのだ。


風紀隊は生徒会のように決まった役職・体制というものは存在せず、風紀隊長となった人物が自分のやりやすいように組織体系を作っていく。

これは、戦闘に特化した学園の風紀を取り締まるのには、至高の戦力が必要となるため、その戦力を率いる立場の風紀隊長が、より学園の管理をしやすいようにという意向なのだ。


つまり、風紀隊長が「各クラスに1人風紀隊員をつくる。また、副隊長を2人2年生から選出する」と決めたら風紀隊の組織体系はそのようになり、「副隊長と補佐と隊員を5名」と指定すればそういう組織体系となる。


俺からしてみるとなぜここまで複雑にしなければいけないのか理解に苦しむが、正直俺には関係の無いことだ。




『ただいまより、始業式を始めます。』



先程までザワザワとしていたというのに、その一言で嘘のように静かになる第一ホール。そんな様子に満足したのか、司会進行を務める先生は僅かに目を細めてから言葉を続ける。



『まず、理事長より挨拶がございます。では理事長、お願いします。』



そう先生が言うと、壇上にゆっくりと理事長が上がり、先生の手からマイクを受け取る。



『みなさん、おはようございます。理事長の麻倉遥人です。新1年生の皆さんは入学式以来ですが、学校はどうですか?慣れない部分もあるかと思いますが、ぜひとも頑張って下さいね。それから2,3年生。進級したことでさらに難しい事に挑戦していくことになりますが、心折れぬように鍛錬あるのみです。』



周りの生徒は、理事長の姿を見て悲鳴をあげそうになるが、理事長の声を一つも聞き逃すまい、と静かにそわそわしながら話を聞いていた。

この理事長、名前は麻倉 遥人[あさくら はると]という。艶やかな黒髪をオールバックにしてスーツをスラリと着こなす様は学園の理事長というよりも、どこかのIT企業の若社長と言われたほうが違和感は無い。


顔はいつもニコニコと目を細めているものの、その眼光は思いの外鋭く、とにかく1度目があうと心臓がしびれたかのような錯覚を覚える。

そして、阿左美いわく理事長の声は「少し低めの甘い感じ。魅惑のビターチョコボイス」だそうた。


(…なんだよ、ビターチョコボイスって…。)



まあとにかく、この学園の絶対権力者である理事長は校内でもすさまじい人気を誇っているのだ。


俺自身も、理事長に対してはある種特殊な感情を抱いている。といっても、他の皆のような色めきだったものではなく、その感情は畏れ。


なんの構えもとっていないというのに全く隙のない立ち姿に、常に鋭く光る眼光。

実際に対峙したことがあるわけでは無いが、それでも理事長がとてつもなく強いということは嫌でも分かる。



『…では、これで話を終わります。楽しい学校生活を送ってください。』



理事長の話が終わり、壇上から理事長が降りると同時に、周囲が少しざわつき始めた。

皆、どこかそわそわとして落ち着きが無いというか、浮き足立っていると言うか。



『では次に、新生徒会と新風紀隊の発表に移りたいと思います。』



俺は皆の様子と、俺の隣の隣の席で興奮した表情になっている阿左美を見ながら、そっと自分の両耳を手で抑えた。



「……………耳、痛え…」



耳を塞いでるのに聞こえてくる、爆発的なこの叫び声は一体何なのだろうか。

ライブか?どこかのアイドルのライブなのか!?



俺はあまりの大音量に痛みさえ感じる耳を抑える手にグッと力を込めながら、小さく溜息を吐いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ