救いの手
僕は人付き合いが苦手だ。幼い頃からずっとそうだった。
人の輪に入るのにどうしようもない覚悟と度胸が伴っていやな感じがした。
人と歩調を合わせるのに向いていないのか、はたまた不器用なだけなのかわからないけれど、僕は何かしらの理由をつけて人を避け続けていたのかもしれない。
そうするうちに僕は、だんだん人を見下すようになっていった。
人と関わらず生きてきた人間は、遠からず人を見下すようになるのだそうだが、僕もその例に漏れず人を見下すようになっていった。
人より優れていたいと思い、勉強の成績は常にトップを目指してきた。
人より賢くあろうと思い、たくさんの本を読んでその知識量を誇って見せた。
誰も僕より優れた人間はいない。僕こそがこの世界の全てなのだとそう思っていた。
だがそれはあくまでも僕の地元の一地域でのことに過ぎなかった。
街に出てみれば僕より優れた人間はたくさんいた。勉強の成績も知識量も僕なんか比じゃないくらいすごいやつがゴロゴロいたのだ。
僕は愕然となった。所詮この程度のものなのか僕の力は、と心の中でつぶやいた。
それ以来僕は臆病だった性格がさらに拍車をかけて臆病になり、誰とも口を聞かなくなった。
平日は学校にいったが、授業は軽く受け流し昼休みはただ読書に耽る毎日を送った。
退屈だったが、僕はこれでいいのだと思っていた。誰も僕なんか必要としてはいないのだ。人間は所詮一人で生きていくしかないのだと自分に言い聞かせていた。
でも僕には家族がいた。唯一の救いの手があったのだ。
家族だけは僕に優しくしてくれた。僕を認めてくれたし、受け入れてくれた。
そうだ。僕には家族がいる。それだけでもマシじゃないか。
弱音を吐いている場合ではない。家族のためにも頑張らねばならぬ。
他人なんて所詮は他人なのだ。どうなろうが一向に構いはしない。
家族とともに歩んでいこう。そうすればきっと何かいいことがある。
僕だけはそう信じている。