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ロケットガール・いぐにっしょん!!  作者: ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
~第二幕~
7/18

墜落?ろけっとがーる! ~004~

実はこれが、『本当の第一幕のラスト』だったりします。



【2015/01/14追記】

作ってるときなに聞いてるのー?というご要望があったのでぺたり。

http://www.akabeesoft2.com/bokusen/index.html

このページのBGM①と②をヘビロテしてました。(作曲演奏:西坂恭平さん)

【注意】

上記のURLは『R-18』ページなので、大人以外は見ちゃ駄目だぜ?

おにーさんとの約束だ!( ゜Д゜)y-~~

 

 ――そこから先はよく覚えていない。

 色々酷かったようにも――思う。

 

 しばらくすると『少女』は地面に降りてきた。

 へたりと、座り込むように穴の底に『着陸』すると、ひな子につき従い光を放っていた四基の『円盤』は徐々に光量を下げ、突き出ていた『鉄柱』たちは、ずるずると体の中に『格納』されはじめ、『ひな子』はゆっくりと体を起こし――

「どう、でしたか……?」

 と、不安そうに話し始める。

「どうって……」

 なんと返事をしていいかわからず、カケルが無言のままでひな子を見つめていると、うつむき、座り込んだままの姿勢で、肩を震わせているのがわかった。

 さっきのショックがまだ残っているのか?

 カケルはそう思い、

「大丈夫……なのか……?」

 とようやく心配する声をかけることができた。

 するとひな子はもはや我慢はできないとばかりに顔をあげ、


 ――辛かったけれど……私頑張りましたっ!――

 といわんばかりの様子で、にへらっと笑った!


 ――ハメられたっ……!?――

「どう、でしたか? ……じゃねぇえええええーーー!!」

 カケルは、おもわずひな子の頭に全力のツッコミ。

「ぁいったぁぁあ! なにするんですか!!」

「お前な! なんだアレは!」

 その勢いに乗じて、カケルはとりあえず思いついたことをひな子に浴びせ始める。

「何って、『証拠(ロケット)』ですがなにか?」

「最後のは何だ! 屁か? 屁なのか!? ぷすんって! ぷすんって!!」

 両手をワナワナと震わせ、思わず二回言ってしまった。

ひな子は口先をとがらせて、

「なーにが『へ』ですか、失礼な!」

「そういわれても仕方がないだろう!? 俺が悪いのか!」

「だって、今日の分は昼間ので使い果たしちゃいましたしー、そのまま飛んじゃったらカケルあぶないですよー?」

「当たり前だ! 見ろこの服、泥まみれだ!」

「『証拠』を見せろって言ったのはカケルのほーです!」

「あーそうですそうです、わるかった! ぶっちゃけ疑ってました! まさか『あんなの』出てくるとは思わねーだろ、ふつー! 非常識なんだよ! お前は!」

「まさか『へ』のことを言ってるんじゃないでしょうね! カケルにご理解いただけたよーでよかったです! やっと『ふるいあたま』に『かがくの風』が吹き込んだようでっ」

「お前なぁ……」


 ……――――。

 それにしたって理解の範囲を超えている。

 何をどう逆立ちしたって完全に自分の『範疇外(はんちゅうがい)』だ。

 彼女の『足元』を見やる。

 そこには先ほどの異形で、現実味のない痕跡(こんせき)を色濃く残した地面の『(あと)』。

 その上をずるずると、ケーブルのように束になった鉄筒の先が、出番終了でーす、とばかりにコートの裾中(すそなか)にひっこんでいこうとしているところだった。

 いまだ発射の熱気冷めやらぬ外気に、素肌そのままさらされた両足には、きっとむごい爪痕(つめあと)が残されていることだろう。

 いたたまれなくなりながらも、目線をあげると、思った通りその白い肌は……

 しゅーしゅーと白い煙をあげ、傷一つない何やらキレイサッパリだと!?

 

 ――でたらめだあああぁぁぁっ!!!

 

 もはや言葉もない。

 ここまでの数々の『証拠』を目の前で提示され、カケルは絶句し、力なくへたり込む。

 



「どーですかっ? 『手動工程発射(マニピファイア)』なんて初めてでしたけどさすがわたしっ! 疑り深い己の(みにく)さと偉大(いだい)な科学力の前に、さぁ! ひざまずきなさいっ!!」

 これ以上どうひざまずけと……?

 ひな子の目の前にへたり込んだままのカケルは、そう思った。

 見上げた先には腰に手をやり、得意げな表情のひな子が、ふんすっと鼻息をはいていた。

 とんでもないドヤ顔ってのはこういう事を言うんだろうな。

「言ってろ、俺がどんなに心配したか……」

 相手も見ずにそこまで言って、カケルは――しまった!という顔をした。

 ひな子は

「おっやぁー?」

 まるでお気に入りのおもちゃを見つけた時の『犬』のような顔をして、

「証拠を見せろって言ったのはカケルですよねぇー? それが何ですか? いざ目の当たりにした途端座り込んじゃってー。あれあれぇ~? こわかったんでちゅか~? それとも私のこと、し・ん・ぱ・い・しちゃいましたー?」

 再びずびしっっ! とドヤ顔でこちらを指さし、くるくるカケルの周りを回り始める。

 そのポーズ好きなんだな……。

 色々思うこともあるが、もはやムカつきを通り越して、ひな子のそんなどうでもいい趣味に、貴重な脳の領域が失われたことは、かえってカケルを冷静に落胆させながら、

「当たり前だろ……心配した……本当にもうダメかと思った」

 うつむきながら、観念するように返事をする。

「なっ……!」

 おバカな犬のように、カケルの周囲をぐるぐる周回していたひな子はピタッと止まり、

「なっ、何で急にっ! いきなりソレはずるいです! まるでわたしがバカみたいじゃないですか!」

「いや、バカだろ実際」

「はいブーブーブー! バカっていう方がバカなんですー!」

 口調は変わらないまでも内心、やりすぎましたか!? と慌ててひな子がカケルに憎まれ口を叩く。

 しかしそれには、先ほどまでの勢いは、ない。


 どうしていいのかわからない面持ちで、ひな子はそれから少し間をおいた後、

「ごめん……なさい……」

 と、コートの裾をモジモジいじりながら、カケルに向かい小声で、うつむきながらも謝罪する。

「どうして謝る」

「だって……」

 しばし無言。

「びっくり……しましたよね? ……怖かったですよね?」

 そして小声でぼそぼそと、もう一言何かをつぶやいたようだったが、爆音で『馬鹿になったらしい』カケルの耳では、どうやら聞き取れなかったようだ。

 

 そうしてカケルは昼間したように、手で顔の半分を隠し、目の前の『見えにくい』少女を覗き込む。

 少しだけ少女を見つめた後に、――カケルは考える。

 

 確かに驚きもしたし、突然の出来事に恐怖もした。正直カケルの中の常識が崩れる音も聞いた気がする――

 

 

「――痛かったか?」

 カケルは尋ねる。

「いいえ、失敗しないようにギリギリまで感覚を残していたので、ほんの、少しだけです」

 ひな子はか細い、ようやくカケルに聞こえる声で、そう答える。

 

 

「――途中で泣いてなかったか?」

 なんで素直に認めない?

「いいえ、きっと燃料が漏れたんだと思います。すこし無茶なやりかたでしたから」

 うつむいたままのひな子は、そう返事した。

 

 

「――なんであんなことをした」

 お前は宇宙に行きたかっただけなんだろう?

「自信はありました。――わたしはロケットですから。」

 顔をあげないまま、ひな子は変わらぬ調子で答える。

 

 

「――こうなった後先のことを、考えなかったのか?」

 そういうことじゃない。そんなことが言いたいんじゃないだろう。

「自信はありました。わたしはロケットですから。」

 ひな子には、それしか方法が思いつかなかったから。

 

 

「そんなことをしてまで――こんなことをする理由があるのか?」

「でもわたしはロケットなんです! カケルにうそつきって思われるのだけは、いやなんです!」


 顔をあげ、唇をかみしめ、ひな子は何か言いたげな表情でこちらをにらんでくる。

 


 ――本当、おまえは『見えない』くせに、表情には良く出るのな。

 

 

 カケルは、しかしそれ言葉にしない。

 くしゃっと、ひな子の柔らかそうな頭の上に手を乗せ、

 馬鹿にして――とかみつきそうな瞳でカケルを見上げたひな子は――

「でも嫌いにはなっていない。」

「――っ……っ」

「嫌いになんか、なってないんだ。ひなこ」

 それを聞いたひな子は、カケルを睨みつけている大きい瞳を、一度おどろいたように見開くと、徐々にその星空を涙で曇らせ――

 

 ぼろぼろと大粒の雨を降らせ始めた。

 

「……嫌いに……」

「……嫌いに、ならないんですか?」

 カケルは無言でひな子を見つめ、ゆっくり、ゆっくり頭をなでてやる。

「わたし、知ってます……みんな、ひな子の『この姿』をみるとき、嫌そうな顔をするのを……!」

 堰を切ったように、ひな子は自分からしゃべり始める――

 


「ひな子、全然悪いことしてません」

「悪いことなんて……何にも……っ!」

「それともロケットはそんなに悪いことなんですか! みんなが望んで『作った』んじゃないんですか!」

「星の海を旅して、真っ暗な海を渡って! それでも誰かに会うために!」

「わたしは……わたしは! みんなに望まれて……!」

 


 そこまで言って、ひな子は、

「わたしは……生まれてきては……いけなかったんですか……っ!」

 

 

 カケルはひな子を慈しむように、しかしその答えを持ち合わせてはいなかった――

 

 

 ――望まれない『子供』などいない。いてはいけない。

 そう、声をかけてやるべきだった。

 カケルが祖父に、祖母に、姉に、そして両親に、これまで愛されてきたように。

 目の前のこの少女には、誰かがそう言ってやるべきだ、と思った。

 正直、ひな子がなんでここまで自分に信じてもらうことに固執し、あんなことまでしたのかはわからない。

 しかしあのひな子を見て驚いてしまった俺が、本当にそんなことを言う資格があるのか?

 コイツはただ、宇宙に行きたかった。それだけじゃないのか?

 何もかもが分からないことだらけだ。だけど――

 

 

 俺ができることといえば、コイツの小さな頭を撫でてやること。それと――

「一応、『約束』だからな。」

 言い逃げに近い、返事を返す事すらできなかった『約束』だったが――

「約束は約束だ。」

 カケルは自分に出来る『嫌いにならない』ことを、ひな子に言い聞かせるように伝えた。

 

 そうしてひな子は、返事をせず、うつむいたまま、ただカケルに撫でられるがままに身を任せていた。

 


「なぁ、ひな子」

 返事は返ってこない。

「お前、これからどこか行くところ、あんのか?」

 返事は、やはり返ってこない。

 


「どこに行きたい?」

 カケルは己の『真実』を、今だけは破ることにした。

「……カケルの……いくとこ……」

 消え入りそうな声で、とてもとても遠慮がちにつぶやくくひな子の顔は、

 こぼれる涙を受け止めるには、あまりにも小さな両手で覆われて。

 

 やっぱり、『見えない』やつだなぁと。

 

 そうしてカケルとひな子は、ようやくお互いの『失われた機会』を取り戻したように見えた。




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

これにて『真の第一幕』、終了となります。

今回のお話はいかがだったでしょうか?


すこしだけ歪になってしまった未来に生まれた『少女』。

自分の『真実』を曲げ、目の前の『現実』に再び流され始めた『少年』。

今まで張ってきた伏線を、ちょっぴりだけ回収したと思いきや、また風呂敷が広がったような気が……?('A`)

どぺーぺーならではの『そういう何某』を楽しんでいただければ幸いです!!(白目


未熟ながらも、自分の頭の中身を一生懸命書き起こしてみました。

願わくばこの作品が、あなたの一服の清涼剤にならんことを。


それではまた、次のお話で。


2014/12/30

ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr.

@これで年が越せる……!

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