墜落?ろけっとがーる! ~004~
実はこれが、『本当の第一幕のラスト』だったりします。
【2015/01/14追記】
作ってるときなに聞いてるのー?というご要望があったのでぺたり。
http://www.akabeesoft2.com/bokusen/index.html
このページのBGM①と②をヘビロテしてました。(作曲演奏:西坂恭平さん)
【注意】
上記のURLは『R-18』ページなので、大人以外は見ちゃ駄目だぜ?
おにーさんとの約束だ!( ゜Д゜)y-~~
――そこから先はよく覚えていない。
色々酷かったようにも――思う。
しばらくすると『少女』は地面に降りてきた。
へたりと、座り込むように穴の底に『着陸』すると、ひな子につき従い光を放っていた四基の『円盤』は徐々に光量を下げ、突き出ていた『鉄柱』たちは、ずるずると体の中に『格納』されはじめ、『ひな子』はゆっくりと体を起こし――
「どう、でしたか……?」
と、不安そうに話し始める。
「どうって……」
なんと返事をしていいかわからず、カケルが無言のままでひな子を見つめていると、うつむき、座り込んだままの姿勢で、肩を震わせているのがわかった。
さっきのショックがまだ残っているのか?
カケルはそう思い、
「大丈夫……なのか……?」
とようやく心配する声をかけることができた。
するとひな子はもはや我慢はできないとばかりに顔をあげ、
――辛かったけれど……私頑張りましたっ!――
といわんばかりの様子で、にへらっと笑った!
――ハメられたっ……!?――
「どう、でしたか? ……じゃねぇえええええーーー!!」
カケルは、おもわずひな子の頭に全力のツッコミ。
「ぁいったぁぁあ! なにするんですか!!」
「お前な! なんだアレは!」
その勢いに乗じて、カケルはとりあえず思いついたことをひな子に浴びせ始める。
「何って、『証拠』ですがなにか?」
「最後のは何だ! 屁か? 屁なのか!? ぷすんって! ぷすんって!!」
両手をワナワナと震わせ、思わず二回言ってしまった。
ひな子は口先をとがらせて、
「なーにが『へ』ですか、失礼な!」
「そういわれても仕方がないだろう!? 俺が悪いのか!」
「だって、今日の分は昼間ので使い果たしちゃいましたしー、そのまま飛んじゃったらカケルあぶないですよー?」
「当たり前だ! 見ろこの服、泥まみれだ!」
「『証拠』を見せろって言ったのはカケルのほーです!」
「あーそうですそうです、わるかった! ぶっちゃけ疑ってました! まさか『あんなの』出てくるとは思わねーだろ、ふつー! 非常識なんだよ! お前は!」
「まさか『へ』のことを言ってるんじゃないでしょうね! カケルにご理解いただけたよーでよかったです! やっと『ふるいあたま』に『かがくの風』が吹き込んだようでっ」
「お前なぁ……」
……――――。
それにしたって理解の範囲を超えている。
何をどう逆立ちしたって完全に自分の『範疇外』だ。
彼女の『足元』を見やる。
そこには先ほどの異形で、現実味のない痕跡を色濃く残した地面の『痕』。
その上をずるずると、ケーブルのように束になった鉄筒の先が、出番終了でーす、とばかりにコートの裾中にひっこんでいこうとしているところだった。
いまだ発射の熱気冷めやらぬ外気に、素肌そのままさらされた両足には、きっとむごい爪痕が残されていることだろう。
いたたまれなくなりながらも、目線をあげると、思った通りその白い肌は……
しゅーしゅーと白い煙をあげ、傷一つない何やらキレイサッパリだと!?
――でたらめだあああぁぁぁっ!!!
もはや言葉もない。
ここまでの数々の『証拠』を目の前で提示され、カケルは絶句し、力なくへたり込む。
「どーですかっ? 『手動工程発射』なんて初めてでしたけどさすがわたしっ! 疑り深い己の醜さと偉大な科学力の前に、さぁ! ひざまずきなさいっ!!」
これ以上どうひざまずけと……?
ひな子の目の前にへたり込んだままのカケルは、そう思った。
見上げた先には腰に手をやり、得意げな表情のひな子が、ふんすっと鼻息をはいていた。
とんでもないドヤ顔ってのはこういう事を言うんだろうな。
「言ってろ、俺がどんなに心配したか……」
相手も見ずにそこまで言って、カケルは――しまった!という顔をした。
ひな子は
「おっやぁー?」
まるでお気に入りのおもちゃを見つけた時の『犬』のような顔をして、
「証拠を見せろって言ったのはカケルですよねぇー? それが何ですか? いざ目の当たりにした途端座り込んじゃってー。あれあれぇ~? こわかったんでちゅか~? それとも私のこと、し・ん・ぱ・い・しちゃいましたー?」
再びずびしっっ! とドヤ顔でこちらを指さし、くるくるカケルの周りを回り始める。
そのポーズ好きなんだな……。
色々思うこともあるが、もはやムカつきを通り越して、ひな子のそんなどうでもいい趣味に、貴重な脳の領域が失われたことは、かえってカケルを冷静に落胆させながら、
「当たり前だろ……心配した……本当にもうダメかと思った」
うつむきながら、観念するように返事をする。
「なっ……!」
おバカな犬のように、カケルの周囲をぐるぐる周回していたひな子はピタッと止まり、
「なっ、何で急にっ! いきなりソレはずるいです! まるでわたしがバカみたいじゃないですか!」
「いや、バカだろ実際」
「はいブーブーブー! バカっていう方がバカなんですー!」
口調は変わらないまでも内心、やりすぎましたか!? と慌ててひな子がカケルに憎まれ口を叩く。
しかしそれには、先ほどまでの勢いは、ない。
どうしていいのかわからない面持ちで、ひな子はそれから少し間をおいた後、
「ごめん……なさい……」
と、コートの裾をモジモジいじりながら、カケルに向かい小声で、うつむきながらも謝罪する。
「どうして謝る」
「だって……」
しばし無言。
「びっくり……しましたよね? ……怖かったですよね?」
そして小声でぼそぼそと、もう一言何かをつぶやいたようだったが、爆音で『馬鹿になったらしい』カケルの耳では、どうやら聞き取れなかったようだ。
そうしてカケルは昼間したように、手で顔の半分を隠し、目の前の『見えにくい』少女を覗き込む。
少しだけ少女を見つめた後に、――カケルは考える。
確かに驚きもしたし、突然の出来事に恐怖もした。正直カケルの中の常識が崩れる音も聞いた気がする――
「――痛かったか?」
カケルは尋ねる。
「いいえ、失敗しないようにギリギリまで感覚を残していたので、ほんの、少しだけです」
ひな子はか細い、ようやくカケルに聞こえる声で、そう答える。
「――途中で泣いてなかったか?」
なんで素直に認めない?
「いいえ、きっと燃料が漏れたんだと思います。すこし無茶なやりかたでしたから」
うつむいたままのひな子は、そう返事した。
「――なんであんなことをした」
お前は宇宙に行きたかっただけなんだろう?
「自信はありました。――わたしはロケットですから。」
顔をあげないまま、ひな子は変わらぬ調子で答える。
「――こうなった後先のことを、考えなかったのか?」
そういうことじゃない。そんなことが言いたいんじゃないだろう。
「自信はありました。わたしはロケットですから。」
ひな子には、それしか方法が思いつかなかったから。
「そんなことをしてまで――こんなことをする理由があるのか?」
「でもわたしはロケットなんです! カケルにうそつきって思われるのだけは、いやなんです!」
顔をあげ、唇をかみしめ、ひな子は何か言いたげな表情でこちらをにらんでくる。
――本当、おまえは『見えない』くせに、表情には良く出るのな。
カケルは、しかしそれ言葉にしない。
くしゃっと、ひな子の柔らかそうな頭の上に手を乗せ、
馬鹿にして――とかみつきそうな瞳でカケルを見上げたひな子は――
「でも嫌いにはなっていない。」
「――っ……っ」
「嫌いになんか、なってないんだ。ひなこ」
それを聞いたひな子は、カケルを睨みつけている大きい瞳を、一度おどろいたように見開くと、徐々にその星空を涙で曇らせ――
ぼろぼろと大粒の雨を降らせ始めた。
「……嫌いに……」
「……嫌いに、ならないんですか?」
カケルは無言でひな子を見つめ、ゆっくり、ゆっくり頭をなでてやる。
「わたし、知ってます……みんな、ひな子の『この姿』をみるとき、嫌そうな顔をするのを……!」
堰を切ったように、ひな子は自分からしゃべり始める――
「ひな子、全然悪いことしてません」
「悪いことなんて……何にも……っ!」
「それともロケットはそんなに悪いことなんですか! みんなが望んで『作った』んじゃないんですか!」
「星の海を旅して、真っ暗な海を渡って! それでも誰かに会うために!」
「わたしは……わたしは! みんなに望まれて……!」
そこまで言って、ひな子は、
「わたしは……生まれてきては……いけなかったんですか……っ!」
カケルはひな子を慈しむように、しかしその答えを持ち合わせてはいなかった――
――望まれない『子供』などいない。いてはいけない。
そう、声をかけてやるべきだった。
カケルが祖父に、祖母に、姉に、そして両親に、これまで愛されてきたように。
目の前のこの少女には、誰かがそう言ってやるべきだ、と思った。
正直、ひな子がなんでここまで自分に信じてもらうことに固執し、あんなことまでしたのかはわからない。
しかしあのひな子を見て驚いてしまった俺が、本当にそんなことを言う資格があるのか?
コイツはただ、宇宙に行きたかった。それだけじゃないのか?
何もかもが分からないことだらけだ。だけど――
俺ができることといえば、コイツの小さな頭を撫でてやること。それと――
「一応、『約束』だからな。」
言い逃げに近い、返事を返す事すらできなかった『約束』だったが――
「約束は約束だ。」
カケルは自分に出来る『嫌いにならない』ことを、ひな子に言い聞かせるように伝えた。
そうしてひな子は、返事をせず、うつむいたまま、ただカケルに撫でられるがままに身を任せていた。
「なぁ、ひな子」
返事は返ってこない。
「お前、これからどこか行くところ、あんのか?」
返事は、やはり返ってこない。
「どこに行きたい?」
カケルは己の『真実』を、今だけは破ることにした。
「……カケルの……いくとこ……」
消え入りそうな声で、とてもとても遠慮がちにつぶやくくひな子の顔は、
こぼれる涙を受け止めるには、あまりにも小さな両手で覆われて。
やっぱり、『見えない』やつだなぁと。
そうしてカケルとひな子は、ようやくお互いの『失われた機会』を取り戻したように見えた。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
これにて『真の第一幕』、終了となります。
今回のお話はいかがだったでしょうか?
すこしだけ歪になってしまった未来に生まれた『少女』。
自分の『真実』を曲げ、目の前の『現実』に再び流され始めた『少年』。
今まで張ってきた伏線を、ちょっぴりだけ回収したと思いきや、また風呂敷が広がったような気が……?('A`)
どぺーぺーならではの『そういう何某』を楽しんでいただければ幸いです!!(白目
未熟ながらも、自分の頭の中身を一生懸命書き起こしてみました。
願わくばこの作品が、あなたの一服の清涼剤にならんことを。
それではまた、次のお話で。
2014/12/30
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr.
@これで年が越せる……!