墜落?ろけっとがーる! ~002~
追いかけてくる『非日常が』カケルの背中を捉える!
今回はカケルの人となりに一歩踏み込んだお話になります。
あぁ――、ああ!、あーあー!、あ~あ~……。
なおも続く、自身の正当性を主張する少女の声と、キャパシティを超えたカケルの理性は、一方的な、そして不毛な時間を生産し続けていた。、
「――しんじられません。初めてあう『れでぃー』に、あんなことをするなんて! まったくもって『はれんち』です! 完全に『せくしゃるばいおれんす』です! そもそもわたしは妨害さえなければいまごろ順調に、そうですね。あなたにわかりやすく説明すると地球から見ておよそ『NGC7293』方向の黄道軌道上、有名なところで太陽系に最も近いとされる惑星状星雲、いわゆる『らせん星雲』ですね。みずがめ座方位にある月に向かって進路をとり――」
――ハラスメント、な。ちっともわかりやすくねぇ――
いるよな、自分の得意分野の謎単語をやたら連呼するやつ。
もはや理解、相槌、抵抗、そのすべてを放棄したカケルは、ふてくされ、座り込んだまま少女の話を聞いていた。
本当に……もう勘弁してくれ……
いい加減に嫌になり頭を抱えた手そのままで、ガリガリとかきむしった。
要約するとこう。
――あなたはきっと約束をまもってくれたのでしょう。多少の騒ぎはあったものの打ち上げは順調に行うことが出来ました。それではこのまま悲願である宇宙へ向けてGO!! かねてからの希望であった『月』にむかってまっしぐら。『地球』さん、今までありがとうそしてさようなら! なごりを惜しんでいたところに、お爺さまから帰ってこいと矢のような催促が! そんなこと知りませんと無視を決め込んでいると急に推進力がおちて失速し、それでもなんとかしようと努力しましたが、今度は渡り鳥の群れにつつかれる始末。あっちいけー!と抵抗していたらとうとう制御を失ってしまって……無念、なんとか安全に着陸できる場所をさがしていたところにあなたを見つけて――
随分都合のいい制御不能があったものですね。
ほぼすべて聞き流しつつも、カケルは白けた頭でぶーたれながら、
「――名前」
ぶっきらぼうに、もはや生来の『地』を隠すことなく少女にそう告げた。
「え?」
「だから、名前だよ名前。あんだろ、名前くらい。俺、アンタの名前知らない。」
もう一度聞き返す。
突然しゃべり始めたカケルに、きょとんとした顔を浮かべたが、すぐに
「ひなこです。小さい太陽に向かうおひな様で、小日向ひな子。」
可愛い名前でしょう? これにはとっても素敵なお話があってですね――と得意げに続けてしゃべろうとする少女の鼻を、昼間と同じようにつまみあげ、
「カケル、天ノ原カケル。これが俺の名前。アンタはひなこで、俺はあなたじゃない。」
少しの皮肉をこめてそう告げる。
「ハゲル?」
「カ・ケ・ル。器用な言い間違いをするな。天の原っぱで天ノ原カケルだ。ひな子」
聞き返す少女に向かって、いつもするように自己紹介をした。
物事を『次』にすすめるのは『相互理解』だ。一方的な『主張』じゃない。お互いの『歩み寄り』が大事なんだ。
名前を知り、お互いを認識しあう。これがその第一歩だ。
そこら中にに散らばった理性を、だるそうに拾い集めながら、カケルは自分に言い聞かせ、、これ以上の無為な時間はごめんだとばかりに、少女――ひな子にそう告げた。
「ムキー! はんですかこのへ。はなひてー! もーへーるーのー!!」
しかし、ジタバタと暴れる鼻つまみのひな子の訴えを無視し、カケルは続けた。
「ひなこ、お前の話はいったいどこからどこまでが本当なんだ?」
もはや昼間の、なるべく相手に合わせようとする普段のカケルはなりを潜め、ただ問題解決のみを目的とした質問を淡々と投げかける。
「悪いがこれまでの話は荒唐無稽すぎて右から左だった。『真実』のみを、俺に話してほしい」
なんですってー! と眉を吊り上げ、ぐるぐる手を振り回してくるが……
悲しいかな。リーチが違う。
「ひってるじゃないでふか! 『ひんじつ』のびを!」
何を言ってるかいまいち理解できなかったので、つまんだ鼻を離してやる。
「うそをつけ。いいか、人間は空を飛ばない。よしんば好意的に解釈するとして、お前のそのリュックの中身は何だ。とても『空を飛ぶ装置』が入っている大きさには見えないぞ」
「これは『補給用』です。おなかがすいて『エネルギー』がなくなったら『墜落』しちゃうじゃないですか!」
「なかなか面白い冗談だ、評価してやろう。しかしそんなもの、夕方になれば減ってしまう程度の『カロリー』だ」
「そう思うならば食べてみればいいじゃないですか。この装備一式で一ヶ月は戦える! そんな貴重なモノなんですよ!」
「アメをそのまま握りしめるな! その手でさわるな! 手袋にくっついてギトギトじゃないか!」
うわわわ、とひな子はぶんぶん手を振り回してとろうとするが、無論しっかりついて離れない。
仕方がないので昼間くれてやったチョコの包み紙を使って、毛玉だらけになったあめ玉を、手袋が傷まないようにそっとはがし、捨てるためにポケットにしまう。
「いいか? 相手に信じてもらえない時はそれに足る『実証』を。うちの爺ちゃんがよく言う言葉だ。証拠さえあれば相手は信じざるを得ない。『事実』とは、それほどに貴重なものなんだ。」
カケルは少しだけ声の調子を落として、ひな子に諭そうとする。
「それならココです! この穴が何より墜落した『証拠』です」
「弱い。この程度、事前に準備しようと思えばたやすい。人をだまして得られる利益は、この程度の穴を準備する労力をはるかにペイする」
設置場所に関してはなかなかのものだ。
気の弱い人間ならば、相手の勢いに納得させられてもおかしくないだろう。
しかしそれもカケルの行動範囲をしっていれば、不可能とは言えない。
つまり、カケルのひな子に対する要求は一つ。
この場で空を飛んで見せろ――
この一点のみ。まずその事実の切り分けで、カケルの手に収まる事態の範疇内なのか、それとも外なのかを判断材料にしようとしていた。
独力のみで解決できることならばそのまま実行。その後は山下家のおいしい晩御飯に突入だ。
達成不能なようであれば、自分以外の他人の手にゆだねる道をさがす。
もしくは自分がそのための努力をする。
投げ出したってかまわない。生きていればやり直しは何度でも可能だ。
複雑になってしまった事柄を解決するのに大切なのはいつだってシンプル。
物事を最少単位に腑分けし、根元を掘り当て、自分が理解、実行可能なレベルに難度を落とし、
あとはY/N(はい/いいえ)で判断する。
家族から学び、『青春の教訓』で勝ち得た、カケルの揺るがない
――ひとつの『真実』だ。
ここまで読んでくださり、ほんとうにありがとうございます。
短かったかもしれませんが、いかがでしたか?
とうとう少女の名前が明らかになりましたねw
あとはカケルのメッキがはがれて(ry
皆さんの目にはどう映ったか、率直なところをぜひ聞かせて頂ければと思います。
あまりここで語るのもいけませんね。
それではお疲れ様でした。
遅くに見てくださった方、あったかくしてゆっくり休んでください。
それではまた、次のお話で。
2014/12/29
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr.
@仕事くらはい。




