突撃!お宅のろけっとがーる! ~005~
ひな子ははたして、いつご飯が食べられるのか!の巻
ちょーっと、盛り上がりすぎたかな?
カケルはひな子を家の客間へ案内しながら、先ほどやりあった内容を思い返し、少しだけ反省していた。
ねーちゃんにあそこまで反抗したのって、そういや無かったかもしんない……。
そんなことを考えながらいろいろと自分の中で整理をつけていく。
確かに、家に戻るまでは驚かされる事ばかりで、正直、流されていたことは否めない。
目の前で女の子に泣かれたことも、実際初めてだった、気がする。
――カケル! カケルってばー!――
しかし言った事に嘘や偽りは無いし、逆に自分の頭の中に閉じこもっていた考えを、姉に話したおかげで、気持ちと覚悟にも整理をつけることができたような気がする。
「……うぉーい聞こえてないの~? ねぇーってば~!」
なんだ?、とカケルが振り向こうとした瞬間、目から火花が飛び散った。
「……っっっ! ……どうした、ひなこ?」
「あぶないですよ。前」
「そういうことはもうちょっと早くだな……」
したたかに、歩き慣れたはずの家の柱に頭と小指を打ち付け、廊下に転がりながら悶絶するカケル。
「言ってました。さっきからず~っと!」
抗議の声を上げるひな子。
「カケルってば呼んでも叫んでも返事しないで、ずぅーっと考え事をしてるんですもの!」
ぷりぷりと怒りながら、ひな子はカケルに訴えてきた。
「いや、それは悪かった。瑞姉……いや、ねーちゃんとケンカしたのは久しぶり……てか、これも初めてなんじゃないか……?」
痛みのショックからなんとか立ち直り、そう言うとまた考え事に耽りそうなカケルを止めるように、
「ほーらまた! そんな顔する!」
ひな子は得意の「ずびしぃ!」というポーズでこちらを指さす。
「これだから『枯葉系ひきこもり男子』なんて言われるんですよ! なんです、姉弟喧嘩くらい!」
なぜかいわれのないレッテルを張られ、怒られた。
「俺は引きこもりでもないし、枯れてもいない」
一応、自身の名誉の為にも弁論くらいはしておきたいカケル。
俺だって高校二年生。まだまだ全然、多感な年頃だ。
「本当ですかー? なんだかとてもしょんぼりしてるように見えますけど? ……もしかして、シスコン?」
うわっキモ、ひくわー!みたいな顔をしてこちらを見てくるひな子に対して、
「誰がシスコンだ、誰が。」
カケルは、断じて違う、と言い切り、
「確かに、身内ながら優秀すぎる姉にコンプレックスを抱いた事もあったけど、あの人はある種、俺の目標でもあるからな。」
「そのへんですよそのへん。この広い宇宙、外にもいっぱいすごいものやびっくりすることがあるはずです。別におねーちゃんが『せかいさいきょ―』ってわけでもないでしょうに」
「いや、まぁ言わんとしている事はわかるが……」
何分、幼い頃からカケルはあまり手広く交友関係を持つタイプでもなかったし、目標になるようなびっくり人間は家族で十分事足りており、特に外の他人を意識することもなく、ここまで来た。
それに、と続けてひな子は言う。
「そんな顔、しないでください」
「私のせいでそんな顔をさせてしまっては、困ります……」
そういって背負っているリュックの肩紐を、ギュッと握りしめて、申し訳ないような、一人ぼっちにされた時の子供の顔で言う。
カケルは穴の底でみた、ひな子のあの時の表情が思い出す。
「悪かった。ちょっと初めてのことで動揺しただけだ」
カケルは努めて、明るい声でひな子に言う。
「夕方にも言ったろ、お前のこと嫌いじゃないって。嫌ならとっくに放り出してる」
ここまで面倒見たりしないさ、と笑って、少し通り過ぎてしまった客間へようやく、ひな子を通す。
カケルがひな子を見やると、うつむいたまま、肩を震わせていたので、
「さむくないか? 今暖房を……」
さっきねーちゃんに、あれほど大きいことを言ったばかりなのに、情けない……
カケルは少しばかりの自虐と、ひな子に対する謝罪の気持ちで、なるべく優しく声をかける。すると――
「……それよりもっ! わたしはおなかがすきましたよ! さっきからずっといってるのにー!おーなーかーすーいーたー! カケルの手料理まだー!」
「ぐっ……こいつは…!」
演技なのか、本気なのか、判別に苦しむカケル。
俺は本当は騙されているんじゃなかろーか、とそんな事を思いながら、部屋のエアコンの電源をピッと入れる。
こいつと付き合っていくには、こういうところも飲みこまなきゃいけないな。
カケルはそう思いつつ、気を取り直して
「飯の前に風呂だ!」
「えー!」
カケルは宣言し、ひな子は不満の声。
「俺たちの格好を見ろ。こんなぼろぼろで飯を食べても落ち着かん。それに随分と冷たい風に当たってしまって……おい、鼻水でてるぞ?」
「ちょっ……! 『れでぃー』に対してなんて無神経なことを!」
これは燃料です燃料、とひな子はずずっと、鼻をすする。
自分は淑女だ、と主張する割には、見た目にも上等なきれいな服がボロボロになっていることに、まるで頓着する様子がないひな子。
年頃の女の子ならば『普通』気にするんじゃなかろうか。
やっぱり普通の女の子に比べて『変わっているな』と、カケルは思う。
まぁ、人前でみじめな思いだけはさせまいと、この部分も併せてカケルは心がける事にした。
「とりあえず荷物はこの辺において、風呂に連れてってやる。着替えは……」
「ちょーっと待ったー!」
スパーーーーーーンッ!!
障子の引き戸で仕切られている、隣の部屋から瑞樹が突然現れた。
玄関での登場と同じように、カケルがあっけにとられて固まっていると、
「カケル、お風呂はいいけれど着替えはどうするつもりなのかしら?」
やはり腕組みをしながら片頬に手をあて、瑞樹はカケルに問いかけてくる。
「いや、ねーちゃん? ……どうして?」
いや、ほんとどうしたの??
カケルも同じく、なんとか疑問を口に出すが、それには答えず瑞姫、
「まさか、汚れた服を洗濯して、着替えがないのを言い訳に、いたいけで、可愛そうな『女の子』をまじまじ鑑賞するつもりじゃぁ、ないでしょうね?」
さらに質問を重ねてくる。
「そ、そんなわけないだろう!」
慌てて否定するものの、悲しいかな、意味もない動揺を隠せない。
「あ、そ、ならいいわ。ちょうど私のお古を持って来てあげたわ。」
それを知ってか知らずか、いや、この姉ならば確信しての行動であろう。
確かに組んだ腕になにやら色々な服をぶら下げている。
カケルは先程、瑞樹に初めて強く出過ぎたこともあり、用心深く瑞樹の真意を問いただす。
「……どういうつもりだ?ねーちゃん……?」
「どういうつもりもなにも、カケルはその子を『助けて』あげるんでしょう?」
ところが瑞樹の返事はあっさりしたものだった。
なんだか肩透かしを食らったような気がして、
「そのつもりだけど……」
思わずカケルは、気の抜けた返事をする。
そしてさらに続けて瑞姫。
「具体的には?」
「とりあえず風呂に入れて、腹が減ってるらしいから飯をつくって……」
「ふむふむ。つまり『衣食住』の提供からはじめたいということでいいのかしら?」
「まぁ、そうなるわな」
「結構」
満足げに瑞姫。
カケルは嫌な予感。
「なんだよ……」
カケルは天ノ原家独特の、破天荒ぶりが発揮される気配を感じた。
「つまり、妹ね?」
「は?」
大概、こういう時は予想を超えるか、斜め上かの、どちらかだ。
「同じ湯に浸かり、同じものを食み、同じ屋根の下で安らかに眠りにつく……」
瑞樹は腕にかけた服を、ぶわさっとなびかせ、くるりくるり。
「ちょ……ねーちゃん……?」
ひな子は感心したように、おー!、などとのんきに手を叩いている。
「これぞまさしく人間愛! いえ、もはや家族愛よ!」
くるくるくる、ぴたり!
ばっちりとキメてこちらにウィンク。
芝居がかった調子で、瑞樹は朗々(ろうろう)と語る。
いやいやいや!
あんた、さっきまで『人の所業ではない』とか言ってたんじゃ……?
「私、実は妹がちょうどほしかったのよね~♪」
「おねーちゃん!」
ひな子が調子を合わせたように、瑞樹に飛びつく。
ひしぃ!
瑞樹はそんなひな子を優しく抱き留め、あら、思ったより軽いわね。ご飯ちゃんと食べてる?などと、早速ほほえましい感じ。
……って、そうじゃねぇ!何言いだすんだ!
いくら破天荒な天ノ原家でも、さすがに家族が増えたことはカケルが生まれてこの方、一度だってない。
「いやいや、ねーちゃん。ねーちゃんがひな子を可愛がってくれるのは嬉しいけれど、あんまり無責任なことを言うのは……」
とりあえずどう切り出していいのかわからないカケル。
「あら?私は本気よ」
確かに姉の冗談はわかりにくい、というか今回はなんだか本気っぽい。
「さすがに家族にするのは……」
一応、止めにかかるカケル。
「いけないかしら?」
真顔で瑞姫。
「いけなかないけど……いや、さすがに無理だろ」
「そうかしら……?」
そう言って薄く微笑を浮かべ、手はその感情を隠すように口元を覆う。
あ、これは本気だ。
カケルは悟る。
カケルを迫害していたクラスメイトの事を知った時の顔だ。
こうなると姉は自分の決めた目的を必ず達成しようとするだろうし、障害あらば容赦なく排除にかかるだろう。
何よりこれ以上突っ込むと、知りたくないことを聞かされそうで嫌だった。
「うーん、まずは戸籍かしら。まずは家族であるということをさっさと固めてしまいましょう。今は『ストック』があったかしらね? あとはご近所様への『説得』ね。今回は……」
「だー! ストップストップ!」
「何よ、カケル」
「わかった。いいんだ。聞きたくない。」
「カケルはこの子を助けたいのでしょう?」
「その通りだ。ねーちゃんが考えてる事も、『大体』分かった」
瑞樹はひな子を守る方法として、『天ノ原』の一員とする方法を選んだようだ。
大分極端な方法だが、たしかに悪くないかもしれない。
考えてみれば、今回のひな子を助ける事に関して、『選択肢』が多すぎる。
まず、ひな子をどう助けるのか?
どうすれば助かることになるのか?
一体何から助けるのか?
相手がいるのか?それとも自身の都合の問題か?意味は?理由は?
こういう思考は姉から学んだように思う。
姉の座右の銘は『相手と己を知れば百戦百勝危うからず。』
徹底した『客観的自己分析』と『能動的他者解析』。
姉の物事を見抜く力と、溢れる才覚をもってしての『方法』だったので、カケルは自分には向いていないと判断し、参考までにとどめているつもりだ。
それでもこう言った場面になると、信頼できる一つの方法として思わず頼ってしまう。
そういえばひな子の意思も、まだはっきりとは聞いていない。
あいつはただ「カケルのいるところにいきたい」としか言っていない――
そうか、ひな子は自分が『ロケット』であることを証明しただけで、
まだ俺はひな子の『真実』を知っていない……?
読了お疲れ様でした。
今回のお話はいかがでしたか?
なんだか妙に筆が乗ってしまい、つらつらと書き続けた結果、
ひな子がご飯のお預けを食らっているという有様です。
態度を変貌させた姉の真意とは?
ひな子の真実とは一体?
おなかとせなかがくっつくぞー!な感じで!
待て!次回!( ゜Д゜)y-~
それではまた、次のお話でw
2015/01/16
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
@一回言ってみたかったんすよ。この次回に続く感じ。




