突撃!お宅のろけっとがーる! ~004~
おのれ、現実め……!('A`)
少し間が開いてしまいましたが、『おねーちゃん、姉弟喧嘩する』の巻です。
どうぞ!
【聞いてたBGM】
http://urx2.nu/gd1Pとか。
「――なるほど。にわかには信じがたいことだけれども……カケルがそういうのならば信じましょう。」
ちょっと昼間のひなこの気持ちがわかった。
かれこれ半刻をかけ、寒中体も温まる、身振り手振りをもって、要所要所で後ろの能天気なアレ(ひな子)を指差しながら、カケルは事の次第を姉に説明した。
どうやら一定以上の理解は得られたようで、カケルはほっと、胸をなでおろしていると、
「ただ、ね?」
「え?」
瑞姫は腕組みをしながら、安心しているカケルの顔を覗き込み、
「私はね? こんな遅くに、女の子と二人で、どうして一緒に帰ってきたのか? って事を聞いているのよ?」
にこっと、再び、神をも殺す笑顔で微笑んだ。
「いあ、だからそれはあいつが行くところもなさそうだし、なんかほっとけなくて……」
動揺のあまり舌がもつれるカケル。
「そう、カケルは昔っから優しい子よね。お姉ちゃん、そのことに関しては本当にうれしく思っているの。」
先ほどから瑞姫の表情はまったく変わらない。
「でもね、カケル。人が人を救うだなんて、おこがましい事だと思わないかしら?」
そう言いながら、さらに一歩、カケルに歩み寄る。
「人が人を救う、それはもはや『人間』の所業ではないの。いわゆる『神様』や『英雄』のお仕事よ」
さらに一歩。
「滅私奉公、奉仕活動、大いに結構よ。とても美しいわ。でもそこには『人の実』はない」
たまらずカケルは後ろに一歩。
「『人の実』とは、基本的に『共存共栄』。決して『依存』や『支配』ではない。たとえどのような形だとしてもね」
瑞姫はずんずんさらに前進。
「結局はその関係の終末に待つのは『不幸』と『破局』よ。それではまるで『救う』という初志が貫徹されていない。カケルはこれから自分が何をしようとしているのか、『ちゃんとわかってる』?」
カケルはどんどん玄関の外へ向かい後退。
「それとも何?」
とうとう外まで押し出されてしまったカケルは、姉の迫力に完全に気おされていた。
「あなた、『本当』は『あの子』を『どうにか』したいのかしら?」
卑しいものを蔑むような厳しい眼差しで、カケルを見つめてくる瑞姫。
こんな目で見られるのは初めてで、カケルもついむきになって反論する。
「それは違う、瑞姉。」
動揺したのか、思わず昔の呼び名に戻ってしまったが、カケルも今回は自分の『真実』を曲げてまで、ひな子を連れ帰ってきた経緯がある。
「自分にも、ひなこに対しても、やましいことなど何もない!」
男としての意地もあった。
「俺は別に『神様』になりたいわけでも『英雄』を気取りたいわけでもない。目の前で泣いている女の子の『手助け』をしたいだけだ!」
まっすぐに、瑞姫を見つめ返して言った。
「結構、それで?」
「それでって……」
事も無げに瑞姫は返してくる。
「あの子は『ロケット』なのでしょう?」
「確かに……確かにそう言った。けれども――」
「そんな、人ですらない『モノ』を抱えて、いったいあなたに何ができるって言うの」
「そんなの……」
言い返そうとするカケルを遮って、
「そんなの、『やってみなくちゃ』わからない??」
先ほどよりも強い態度で、瑞姫はこちらの言葉を奪ってきた。
「わかるわよ、そんなこと。私だってカケルのしたいと思っていること、やろうとすることには最大限、協力するわ。いいえ、あなたが望むなら大抵のことも『実現』してあげる。」
カケルに対してここまで、瑞姫がきつく言うことも珍しい。
「カケルの言うことがすべて本当で、あなたが『あの特殊な子』を守ろうというのなら……」
そこで瑞姫は、ふっと一呼吸おき、
「あなた、この先の自分の人生、自分のすべてをつぎ込む覚悟で、あの子を守っていくつもりなの?」
今までで一番強く、優しく、そして悲しいような色を帯び、姉は弟に言った。
「いいえ、守れるかどうかすらも怪しいわね。あの子はそこまで『軽く』はないわよ?」
カケルは黙って姉の言うことを聞いている。
昔から、カケルが間違ったことをしそうになったときには、必ずこの眼をする。
「人とは『違った』境遇、『普通じゃない』出自、正体不明の、他人には理解しがたい『存在』……これがどういうことか、あなたも体験してきたことじゃない……」
うつむいたままのカケル。
「あなたには私がいた。お爺様やお婆様がいた。それだけじゃない。遠くに感じていたかもしれないけれど、お父様やお母様だって」
わかってる。
破天荒な家族であったが、自分にとってはかけがえのない、代わりの効かない存在だ。
カケルは家族を愛していたし、家族もまた、カケルを愛していた。
「どうなの? カケル?」
瑞姫はカケルに問いただしてくる。
カケルは顔を上げ、
「それでも」
姉に答える。
「それでも俺は、自分がこれまで感じてきた理不尽を、葛藤を、目の前の泣いてる『女の子』を、誰のためでもない俺自身のために」
カケルもはじめてかもしれない。
常にカケルの盾となり、鉾となってきたもっとも身近な目標に対して、
「俺は自分で決めたことを、今度こそやり抜きたい。」
カケルははっきりと、瑞姫に対してそう言った。
カケルは姉に対して、まっすぐに、はっきりと。
瑞樹は弟に対して、それを真正面から受け止める。
しばらくして、姉弟は黙ったままお互いに見つめあったまま、幾分か時がたったころ。
「――わかったわ」
そう言うと、瑞姫はくるり踵を返し、家の奥へ戻っていく。
遠ざかる姉の背中に思わず、罰の悪いものがこみ上げてきて、
「瑞姉!」
カケルは呼びかけるが瑞姫は振り向かない。
まるでこれっきり、あの厳しくも優しい、偉大な姉の笑顔を見れなくなるような気がして――
瑞樹は灯りもついていない、廊下の奥へ消えていった。
闇に溶ける姉をカケルは最後まで見送り、その背中は、
――とても悲しい『色』をしていた。
……――。
その場に残されたカケルは、まるで見捨てられたかのような気持ちになり、所在無さげに立ち尽くしていた。
ひな子もさすがに、先ほどのやり取りを心配したのか、
「大丈夫、です?」
と、カケルの背中から心配そうに訊ねてきた。
「ははは……」
と、カケルは力なく笑って答えるが、すぐに、さぁどうしたものかと、カケルは沈みかけた自分を奮い立たせる。
瑞姫にあそこまで言ってしまった以上、もう引くわけには行かない。
心配そうに見つめてくるひな子の頭を、ぐりぐりっっと撫でてやりながら、
――とりあえず我が家にようこそ。――と
寒空の下、随分待たせてしまった珍しい『来客』を、ようやく家の中に迎え入れることにした。
お疲れ様です。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
おねーちゃんという年上女性の『偉大さ』や『怖さ』が少しでも伝われば(ry
少しシリアスが続いて、難しい言葉を並べてしまっていますが
自分の中の『姉』ってのがこういうイメージだったもんで……
良ければ感想をぜひ教えてくれると嬉しいです。
それでは長くなってもいけません。
また、次のお話で。
2015/01/14
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
@ひな子が唯一の癒し要素。




