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ロケットガール・いぐにっしょん!!  作者: ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
~第三幕~
11/18

突撃!お宅のろけっとがーる! ~004~

おのれ、現実め……!('A`)

少し間が開いてしまいましたが、『おねーちゃん、姉弟喧嘩する』の巻です。

どうぞ!


【聞いてたBGM】

http://urx2.nu/gd1Pとか。



「――なるほど。にわかには信じがたいことだけれども……カケルがそういうのならば信じましょう。」


 ちょっと昼間のひなこの気持ちがわかった。


 かれこれ半刻をかけ、寒中(かんちゅう)体も温まる、身振り手振りをもって、要所要所で後ろの能天気なアレ(ひな子)を指差しながら、カケルは事の次第を姉に説明した。

 どうやら一定以上の理解は得られたようで、カケルはほっと、胸をなでおろしていると、

「ただ、ね?」

「え?」

 瑞姫は腕組みをしながら、安心しているカケルの顔を覗き込み、

「私はね? こんな遅くに、女の子と二人で、どうして一緒に帰ってきたのか? って事を聞いているのよ?」

 にこっと、再び、神をも殺す笑顔で微笑(ほほえ)んだ。

「いあ、だからそれはあいつが行くところもなさそうだし、なんかほっとけなくて……」

 動揺のあまり舌がもつれるカケル。

「そう、カケルは昔っから優しい子よね。お姉ちゃん、そのことに関しては本当にうれしく思っているの。」

 先ほどから瑞姫の表情はまったく変わらない。

「でもね、カケル。人が人を救うだなんて、おこがましい事だと思わないかしら?」

 そう言いながら、さらに一歩、カケルに歩み寄る。

「人が人を救う、それはもはや『人間』の所業ではないの。いわゆる『神様』や『英雄』のお仕事よ」

 さらに一歩。

滅私奉公(ひとだすけ)奉仕活動(ボランティア)、大いに結構よ。とても美しいわ。でもそこには『人の(じつ)』はない」

 たまらずカケルは後ろに一歩。

「『人の実』とは、基本的に『共存共栄(きょうぞんきょうえい)』。決して『依存(いぞん)』や『支配(しはい)』ではない。たとえどのような形だとしてもね」

 瑞姫はずんずんさらに前進。

「結局はその関係の終末に待つのは『不幸』と『破局』よ。それではまるで『救う』という初志が貫徹(かんてつ)されていない。カケルはこれから自分が何をしようとしているのか、『ちゃんとわかってる』?」

 カケルはどんどん玄関の外へ向かい後退。

「それとも何?」

 とうとう外まで押し出されてしまったカケルは、姉の迫力に完全に気おされていた。

「あなた、『本当』は『あの子』を『どうにか』したいのかしら?」

 (いや)しいものを(さげす)むような(きび)しい眼差(まな)しで、カケルを見つめてくる瑞姫。

 こんな目で見られるのは初めてで、カケルもついむきになって反論する。

「それは違う、瑞姉(みずねぇ)。」

 動揺したのか、思わず昔の呼び名に戻ってしまったが、カケルも今回は自分の『真実』を曲げてまで、ひな子を連れ帰ってきた経緯がある。

「自分にも、ひなこに対しても、やましいことなど何もない!」

 男としての意地もあった。

「俺は別に『神様』になりたいわけでも『英雄』を気取りたいわけでもない。目の前で泣いている女の子の『手助け』をしたいだけだ!」

 まっすぐに、瑞姫を見つめ返して言った。

「結構、それで?」

「それでって……」

 事も無げに瑞姫は返してくる。

「あの子は『ロケット』なのでしょう?」

「確かに……確かにそう言った。けれども――」

「そんな、人ですらない『モノ』を抱えて、いったいあなたに何ができるって言うの」

「そんなの……」

 言い返そうとするカケルを(さえぎ)って、

「そんなの、『やってみなくちゃ』わからない??」

 先ほどよりも強い態度で、瑞姫はこちらの言葉を奪ってきた。

「わかるわよ、そんなこと。私だってカケルのしたいと思っていること、やろうとすることには最大限、協力するわ。いいえ、あなたが望むなら大抵のことも『実現』してあげる。」

 カケルに対してここまで、瑞姫がきつく言うことも珍しい。

「カケルの言うことがすべて本当で、あなたが『あの特殊な子』を守ろうというのなら……」

 そこで瑞姫は、ふっと一呼吸おき、

「あなた、この先の自分の人生、自分のすべてをつぎ込む覚悟で、あの子を守っていくつもりなの?」

 今までで一番強く、優しく、そして悲しいような色を帯び、姉は弟に言った。

「いいえ、守れるかどうかすらも怪しいわね。あの子はそこまで『軽く』はないわよ?」

 カケルは黙って姉の言うことを聞いている。

 昔から、カケルが間違ったことをしそうになったときには、必ずこの眼をする。

「人とは『違った』境遇(きょうぐう)、『普通じゃない』出自(しゅつじ)、正体不明の、他人には理解しがたい『存在』……これがどういうことか、あなたも体験してきたことじゃない……」

 うつむいたままのカケル。

「あなたには私がいた。お爺様やお婆様がいた。それだけじゃない。遠くに感じていたかもしれないけれど、お父様やお母様だって」

 わかってる。

 破天荒(はてんこう)な家族であったが、自分にとってはかけがえのない、代わりの効かない存在だ。

 カケルは家族を愛していたし、家族もまた、カケルを愛していた。

「どうなの? カケル?」

 瑞姫はカケルに問いただしてくる。

 カケルは顔を上げ、

「それでも」

 姉に答える。

「それでも俺は、自分がこれまで感じてきた理不尽(りふじん)を、葛藤(かっとう)を、目の前の泣いてる『女の子』を、誰のためでもない俺自身のために」

 カケルもはじめてかもしれない。

 常にカケルの盾となり、(ほこ)となってきたもっとも身近な目標に対して、

「俺は自分で決めたことを、今度こそやり抜きたい。」

 カケルははっきりと、瑞姫に対してそう言った。

 カケルは姉に対して、まっすぐに、はっきりと。

 瑞樹は弟に対して、それを真正面から受け止める。

 

 しばらくして、姉弟は黙ったままお互いに見つめあったまま、幾分(いくぶん)(とき)がたったころ。

 

「――わかったわ」

 そう言うと、瑞姫はくるり(きびす)を返し、家の奥へ戻っていく。

 遠ざかる姉の背中に思わず、罰の悪いものがこみ上げてきて、

瑞姉(みずねぇ)!」

 カケルは呼びかけるが瑞姫は振り向かない。

 まるでこれっきり、あの厳しくも優しい、偉大な姉の笑顔を見れなくなるような気がして――

 瑞樹は灯りもついていない、廊下の奥へ消えていった。

 闇に溶ける姉をカケルは最後まで見送り、その背中は、

 

 ――とても悲しい『色』をしていた。

 

 

 ……――。

 その場に残されたカケルは、まるで見捨てられたかのような気持ちになり、所在無(しょざいな)さげに立ち尽くしていた。

 ひな子もさすがに、先ほどのやり取りを心配したのか、

「大丈夫、です?」

 と、カケルの背中から心配そうに訊ねてきた。

「ははは……」

 と、カケルは力なく笑って答えるが、すぐに、さぁどうしたものかと、カケルは沈みかけた自分を奮い立たせる。

 瑞姫にあそこまで言ってしまった以上、もう引くわけには行かない。

 心配そうに見つめてくるひな子の頭を、ぐりぐりっっと撫でてやりながら、

 

 ――とりあえず我が家にようこそ。――と

 

 寒空の下、随分待たせてしまった珍しい『来客』を、ようやく家の中に迎え入れることにした。



お疲れ様です。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。


おねーちゃんという年上女性の『偉大さ』や『怖さ』が少しでも伝われば(ry

少しシリアスが続いて、難しい言葉を並べてしまっていますが

自分の中の『姉』ってのがこういうイメージだったもんで……


良ければ感想をぜひ教えてくれると嬉しいです。


それでは長くなってもいけません。

また、次のお話で。


2015/01/14

ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr

@ひな子が唯一の癒し要素。

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