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教皇の異世界物語  作者: しらす御飯
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街⑤

「・・・飽きてきたな」


 -----俺はそんな事を呟きながら襲いかかってきたクソ喧しい小悪魔?共を屠る。


 いや、もう飽きた。


 最初の内は何処から湧いてきたのか分からない魔物共こいつらを街で殺しまくるのに新鮮さと多少の刺激を感じていたが、やがて時間が経つ内にどれだけ狩ろうと強敵が現れず、どいつもこいつも雑魚ばかりなのにウンザリしてくる。


 この雑魚共はもう他の冒険者や兵士に任せるなり何なりしても良いだろう。


 しかし


 -----ああ、もっと刺激が欲しい。


 これだけの数が居るんだ。


 何処かにこの魔物の大群を指揮している敵の頭がいるんだろう。


 これは俺の願望ではない。


 -----何せ突如として魔物が街に現れたんだ。


 人為的なモノであるのはどう観ても確実だ。


 それくらいは冷静じゃない今の俺の頭でも判る。


 しかし、何にせよ最初の内こそ良かったがこのままでは退屈だ。


 退屈すぎて-----間違えて兵士や冒険者をうっかり殺してしまうかも知れん。


 ああ、もう、なんだ。


 ------緊急で呼びつける位だからもっと楽しめるかと思ったのだが、こんなつまらないことであの支部長ジジイはこの街に俺を呼びつけたのか。









 フザケヤガッテ









 皆殺しだ。











 ・・・と、まぁ、そんな時だ。


 ------怒りや不満でで赤熱した頭が途端に冷静になり。


 ワクワクするような特大の刺激


 ------黒く巨大な「ソレ」が目の前に現れたのは。


 そう、求めていたのは


 こういう展開だよ。


「・・・漸く真打ち登場というわけかよ。遅すぎるぜ」


 そう悪態を付くが、自分の表情に現れた歓喜の感情は隠し切れていないだろう。


 何故なら、その姿を見た途端------俺、バルアット・ロンギリースは確信したからだ。


 こいつは強敵だと。


 -----それも自分の数多の戦闘経験の中で間違いなく上位に入るほどの。


 その闇のように深い黒の身に纏う、龍種とは別種の圧倒的な威圧感。


 そして、天を突くような巨大な漆黒の角に、大の大人が赤子に見えてしまうほどの巨大な体躯。


 俺が今までに殺してきたそこらにいる悪魔共?が可愛く見えてしまうほどに凶悪な面してやがる。


 -----その突然の出現に、戦特有の喧噪が消えてしまった気がした。


 この場にいる者は皆、多かれ少なかれ、負の感情で塗りつぶされた表情をしているのだろう。


 ------だが、彼は違う。


「ヘへヘヘへッ」


 笑っていた。


 その声を聞いたのならば、大多数の人間はこう思うだろう「この男は気が狂ってしまっているのではないか?」と。


 -----それも普通は当然のことなのだろう、何せ突然、現れた魔物モンスターはどんな奴であっても観ただけで恐怖を感じ逃げてしまいたくなるほど強大であるのだから。


 しかし、実際は狂ってなどいない。むしろこの状況下において他の恐慌に駆られている兵士達と比べると恐ろしく冷静なほどだ。


 彼がそんな他者から見れば不気味に聞こえるような、そしてこの上ない歓喜を感じられる声をあげてしまった理由は一つ。


 -----自分が倒せるかどうか分からない、それほどの強敵との戦いがこの上なく好きだからだ。


 それも自分が不利であるような状況に燃えてくるタイプの。


 -----まあ、つまりは戦闘狂バトルジャンキーであるのだ。


 -----そんな性格が幸いしてか、彼は常日頃から危険だといわれるような存在に片っ端から挑み続けている。戦闘を一番楽しむのなら、強敵との対峙がいいのだ-----それが癖となってしまっている。


 そして、そんな性格を後押しするかのように、彼はある才能に恵まれた。


 それは、戦闘における才能。


 -----彼は強い。


 様々な強敵に挑むといった危険な行為で経験を積み、死線を乗り越える事が楽しみとなってしまった才能有る者が強くないはずがない。


 冒険者のランクで言えば、超一流であるAランクだが、実力的に言えばそれ以上だろう程に。


 と、彼はそこで思考を止めた。


 -----何故なら、戦いを楽しむことに当たって思考というモノは邪魔になるし、何より、彼の保有する戦闘力を最も発揮できる切り札であるスキルとは相性が悪いからだ。


 スキル「鬼人化」


 -----それは才有る戦士が長年の修練を経て漸く修得する、自分の身体能力を飛躍的に増大させ、一時的ではあるが、一級の戦士が扱えば龍種であろうと正面から立ち向かえるようになるといった強力なモノである。だがその分、効果はシンプルであるのに対して扱いが難しい。何故なら、扱いきれなければ必然的に使用者は暴走し、敵味方の区別なく相手を襲うようになるからだ。


 -----そんな危険性を持つため如何に効果が強力であろうと前衛タイプの戦士はあまり好んでこのスタイルを取ることは無い。パーティの間で使用するにはリスクが高すぎるからだ。


 しかし、それは普通の戦士に於いての話であり、彼は違う。永い修練が必要とされるそれを奇しくも齢二十半ばで修得し、さらには先天的にこのスキルを扱う事に長けていたのだから。


 とは言っても、時間制限付きであるため長く戦闘をを楽しみたい彼にとっては些か不満を持つこと事もあったが、格上の相手と戦うときには重宝するスキルであるため不服に感じることなど無い。


 そして、発動する。


 -----瞬間、身体の中心から熱が沸き起こり、身体の隅々を駆けめぐる。


 得も言えぬ高揚感。


 体中に力が漲り、赤く淡く発光し始める。


「ハーハッハッハッハッハ!!!」


 バルアットは興奮したような歓喜の声を上げると、巨大な敵に飛びかかっていく。


 出し惜しみはしない。


 始めから全力でいく。


 -----そうしなければ戦闘が楽しくなってきた所で決着が付いてしまうかも知れないからだ。


 視認する存在からはそれだけの力を感じるし、これほどの戦いに油断しつまらない結果になってしまっては納得がいかないし、何より勿体ないだろう。


 -----邪魔が多いし観客も多いが------まぁ、楽しもうぜ


 お互い血みどろになるまでな。


 -----彼は凄まじい踏み込みによって相手との距離を詰める。


 大勢の兵士の悲鳴を横切り、血に飢えたような表情に加えて素早い動作で戦場を駆け巡る様は、敵と思われても仕方がない程だ。


 グングンと距離を詰めて行き、改めて見るとその巨体の大きさに少々感心しながらも初手の一撃を加えるために剣を力強く構える。


 彼は慢心するほど未熟ではない。


 そのため、奴の注意が他の兵士に向いている間に入れられる攻撃は入れておきたい。


 強烈な一撃。


 ------「鬼人化」によって飛躍的に強化された身体能力によって繰り出される、化け物と揶揄されるほどの彼の本気の一撃。


 その一撃は小型の龍種ならば一撃で屠る事も可能だ。


 ゴウッ


 ------その剛力によって彼は死角から剣を振り下ろす、確実に肉を断つ一撃。


 ------だが


「ちっ」


 彼は刮目する。


 民家に突っ込んでしまう程の、飛びかかった際の勢いを殺し、彼は素早く体勢を立て直す。


「・・・野郎」


 ------受けやがった。


 俺の一撃を。


 それに、思った以上に黒い体皮が硬い。


 -----攻撃自体は当たったが、思っていたほどのダメージは与えられていないだろう。


 奴は凶悪な面をしながら、此方をその邪悪な二つの眼で目視する。


 自らの攻撃を受けたその腕からは、黒い靄に包まれた赤黒い液体が迸る。


 不意打ちだと思っていたが、それを咄嗟に感知し重傷を避けるとは。


 意外に-----


「素早いじゃねぇか」


 相手に負けず劣らずの凶悪な表情を浮かべ、ドスの利いたその声色には歓喜の色が多分に含まれている。


 ------これだ。


 戦いとは常に予測不能で楽しいものでなくてはならない。


 バルアットは相手が自分を視認したことにより、一回り大きくなった威圧感を感じながらも、悠々と構え、高揚感に身を漲らせる。


「・・・不意打ちなんて真似をして悪かったな」


 悪魔に対して、心底詫びるように、狂ったように呟くバルアット。


 そして、彼は今の一撃で理解したのだ。


 -----そんな小細工をしては勿体ない相手だと。


 待ちきれないとばかりに構え、吼える。


「さぁ、始めようぜぇぇっ!!!」



 -----鬼と悪魔の戦いが今、始まった。




エルダーデーモンは某ゲーム、デ〇ンズソウルに出てくる初見殺しをイメージして下さい。アレを俊敏にした感じです。


今月も頑張ります。

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