『ベティア』
「『「さあ行こうベティア。遠く遠くどこまでも」
「ええ、公爵様。どうかおともさせてくださいませ」
そうして、ベティアと公爵様はお屋敷を抜け出しました。
二人は長い長い旅に出かけます。
子守唄を歌う獅子を見に、北へ。
七色に輝く海へ泳ぎに、南へ。
雪と氷の精霊を探しに、東へ。
天へと続く階段がある山を登りに、西へ行きました。
地図にも載っていない秘境の地まで、二人はどこまでもどこまでも歩きました。
悲しいことがありました。苦しいことがありました。
けれど、嬉しいことがもっとありました。楽しいことがもっとありました。
たった二人きりの旅でした。
ベティアと公爵様は一緒にいるだけで幸せだったので、とても幸せな旅でした。
そうして、ついに大陸を一周した長い長い旅は終りを迎えます。
公爵様はベティアに言いました。
「私の凍てついていた心はいつの間にか溶けてしまいました。
今ではあなたへの愛で満たされています。
ベティア、どうか、私と結婚してはくれませんか?」
それを聞いたベティアは笑顔で返答しました。
「ええ。もちろんですわ、公爵さま」
こうして二人は永遠の愛で結ばれ、ずっとずっと幸せに暮らしました』」