竜と獣。そして現代へ
―二万年後―
EVILは天の父の軍勢を滅ぼす為、『地獄の頭脳』と呼ばれ学者の長にまで出世していたバアルを中心として、EVILの幹部七名がそれぞれ司る七つの感情―怒り、傲り、妬み、餓え、欲望、怠け、色気―を象徴する『頚』を持った二匹の怪物『APOCALYOSIS』が誕生。
二匹はそれぞれ対を成すよう設計されており、雄と雌とが居た。
雄の方は、地球に作られる予定だったあらゆる動物の情報を持っていた為に『禽獣』の名を授かった。
雌の方は、知的生命体の考える力と思い描く力を象徴する力を持っていた為に『飛竜』の名を授かった。
『禽獣』には、
〔怒り〕を表す陸に住まうあらゆる脊椎動物の頚。
〔傲り〕を表す天空を飛ぶあらゆる脊椎動物の頚。
〔妬み〕を表す水中を泳ぐあらゆる脊椎動物の頚。
〔餓え〕を表す全ての地に適応した節足動物の頚。
〔欲望〕を表す刺胞・棘皮動物等無脊椎動物の頚。
〔怠け〕を表す貝や烏賊等あらゆる軟体動物の頚。
〔色気〕を表す原始の単純で力強い環形動物の頚。
この七つが与えられていた。
『飛竜』には、
〔怒り〕を表す灼熱の炎で全てを焼き払う頚。
〔傲り〕を表す雷電と光で全てを消し去る頚。
〔妬み〕を表す流水と冷気で全てを封じる頚。
〔餓え〕を表す地の力を自在に使いこなす頚。
〔欲望〕を表す大気と風で全て吹き飛ばす頚。
〔怠け〕を表す金属の力を何処までも扱う頚。
〔色気〕を表す毒素と幻術で相手を滅ぼす頚。
この七つが与えられていた。
それから時は流れ、今からざっと20億年前。
ちょうど典型的な動物細胞と植物細胞が誕生したのと時を同じくして、禽獣がEVILの考え方に疑問を抱き始めた。
自由を尊重する事は確かに良い事だし、制圧主義などとは比べ物にならないほど素晴らしい思想だった。
しかしゲヘナは同時に、放逐しすぎる余り発生する愚者は滅ぼし、選民だけを生存させる事で平和を保とうと考えていた。
禽獣はこれを疑問に思ったのである。
確かに劣等種は自然界で滅ぶべきだが、それが知覚を持つ存在の世界でまで適用されるのは、どうも納得がいかなかった。
そしてそれから一億年。
地球では動物が性システムを完成させた頃、禽獣の疑問は次第に反感へ変わっていった。
その頃のEVILを率いていた統率者・サタンは、ゲヘナの意志を継ぐとても寛大な精神の持ち主で、考え方の相反する飛竜と禽獣とをどちらも愛していた。
しかし禽獣と統率者とは、考え方の食い違いから次第に関係が悪化していき、それと同時に禽獣は勢力の中で浮いた存在になってしまっていた。
しかしそんな中で、禽獣を信じ護り続けていた者が居た。
理学士長バアルである。
そして時は流れ現在から約六億年前。
地球は先カンブリア時代のヴェドン紀という、陸上は勿論海中でも捕食動物が殆ど居なかったような時代に、禽獣はバアルの手を借りて地球へ逃げ出した。
この情報はEVILのみならず、地球を管理していた天の父とANGELにも届いてしまったが、EVIL統率者はこれを『地球侵略を目的として送り込んだ』という情報を故意に流す事で丸く収めた。
とはいえ、当の禽獣はそんな事などお構いなしに地球での生活をまるでリゾート地の如く堪能した。
―更に4000万年―
天の父の命令を受けて戦闘専門のANGEL達が禽獣抹殺を目的に地球へ向かったが、全員呆気なく禽獣によって返り討ちにされてしまう。
この時、地球で散り散りになってしまったANGEL達の死骸や生きた肉体が環境に影響してしまった所為で、地球生物の一握りがANGELの性質を獲得してしまった。
天の父はこれ以上直接的に禽獣を相手にするのは無駄と判断。
地球環境の調整も兼ねて定期的な大量絶滅の発生をプログラムし、禽獣抹殺を計画。
しかし、生命力の強い禽獣はその後も地球で生き残り続けた。
そして果てしないほどの時が流れ、人類文明誕生後の事。
尋常でない生命力と特異な能力を持つ異質な人間達が、社会の影に跋扈し始める。
―前2000年頃―
異質な人間達が各国で集い、小さな集団として社会の裏で暗躍を始める。
―前612年―
中国に住んでいた異質な人間達が、巨大な組織を結成。
―30年―
ヨーロッパでも、異質な人間達による国家レベルの組織が結成される。
その後、組織は国境を越えて影で団結。200年頃、自分達を一つの種族として意識し始め、アジア圏の人間が提唱した「超人」という名称を適用。組織の通称を「超人会」とする。
―年代不明―
ヨーロッパにて、錬金術師グリーン・クレイがホムンクルス「エクスプレイションレス・マスク」の製造に成功。
―その二ヶ月後―
グリーン・クレイはホムンクルス製造法をこの世から完全に抹消。エクスプレイションレス・マスクを、合意の上で凍結させ拘束、極地の海に沈め自らも姿を消した。
―17世紀半ば―
EVILは新たな生体兵器を開発し、地球へ試験的に投入。
インド洋へ落下した生体兵器は覚醒直後空腹と破壊本能に目覚め、海賊船「ネイキッド・シール号」を沈没させ、南極を除く全ての大陸で破壊の限りを尽くし、天の父の命令で放たれた高出力レーザーが直撃し一時的に絶命。
民衆の記憶も天の父によって操作され、その死体は超人会によって心臓を切り出した状態で太平洋に封印され、心臓は沖縄のアブチラガマの原型となる洞窟へと封じられることになる。
―18世紀末―
飛竜とバアルが地球に派遣される。
―19世紀のある夏―
フランスにて、女学院を経営していた女性が何者か(或いは何か)によって惨殺される。
それ以降、学院の経営は経営者の妹とその恋人が跡を継ぐ事となる。
―その3週間後―
身よりのない子供から容赦なく金を強奪していると噂の断っていた弁護士が変死。
容疑者の正体は依然不明のまま。
―19世紀末―
超人は自らの通称を「異形」と改め、超人会を「異形連盟」と改名。
―20世紀初頭―
異形・高田アキラによってシンバラ社が興される。
異形とは別系統で密かに活動していた人外種族「夜族(吸血鬼や人狼に類似した存在)」が人類と異形を支配せんとし異形連盟に宣戦布告。50年に及んだ闘争は異形の大勝利として終わった。
―1940年9月―
日独伊三国同盟が結ばれ、それに対抗したアメリカはABCDラインで日本を経済封鎖。
時を同じくして、名前をコロコロ変えながら生きてきた禽獣は「手塚松葉」を名乗る。
―1941年12月―
日本軍による真珠湾攻撃から太平洋戦争勃発。日本の異形達は全ての軍事関係者に対し徹底的な攻撃を開始するも、軍隊の増殖力は半端なものでなく、苦戦を強いられる。
―1945年4月―
沖縄本島にて地上戦勃発。多くの犠牲者を出すも異形達は軍事関係者に対する攻撃を一切止めなかった。
―同年8月6日―
アメリカ軍は広島県に原子爆弾投下。
―同年8月9日―
広島県に続いて長崎県に原子爆弾投下。
この間にソ連軍が千島・樺太を攻め、日本軍はポツダム宣言を受諾し降伏。
太平洋戦争終結。
―2000年9月上旬―
手塚松葉が神奈川へと出張に出かけた事により、『東方禿狗禄』の事件が発生。
―2005年頃―
不二子・コガラシと名を変えた飛竜が人類根絶のためにテロ組織「人禍」を創設。
―2008年7月―
シンバラ社の研究施設に怪盗、アルセーヌ・コガラシ侵入。実験対象たる生命体「ライアー」を盗み出そうとするも、返り討ちに遭い死亡したのを皮切りに『ザ・ライアー』の事件が発生。
―同年8月―
楠木雅子が異形化。
―2010年5月―
シンバラ社によって保護されていた少年・小山涼也が人禍に誘拐される。
日本異形連盟とシンバラ社が手を組んで人禍への攻撃を計画。
―同年7月―
シンバラ社緊急特務科・日本異形連盟、人禍への攻撃を開始。
物語は『白い巨像』へ。




