永年帝国が産み出したもの
―前回より9000万年後・ルルニア―
巨大国家へと成長したルルニアであったが、知性を発達させた一部のRINPが野心の元QUIDに反旗を翻す。
力と知性とをある程度両立させた反逆者勢は瞬く間にQUIDを絶滅に追い込んでしまった。
そして事後、全てのRINPは導き手であるQUIDを失った事を深く悔やみ、文明形成は無理と判断。
海中で再び原始的な生活を営むようになっていった。
そして時が経ち、惑星nから文明が消えた71億年前。
原因不明の気候変動による大量絶滅が起こり、全生物の92%が悉く絶滅していった。
そしてまた、月日は流れる。
―61億5961万年前―
惑星nに、再び知的生命体が現れた。
それは地球のカイコガに相当する生物を祖とする「SILK」。
彼らにANTのような商業的才能は無かったし、WASPのような戦闘能力も皆無であり、ルルニアのような知性もそんなに持ち合わせていなかった。
特技と言えば精々、農耕と繊維工業くらいのものである。
ただ彼らは、特に目立った強さを持たない代わりにとても思い遣り深く、集団で協力することを何よりの美徳と考える温厚な種族であった。
それ故にSILKの社会制度は現代でいう「民主主義」に近い―というより、現代社会のどの民主主義国家のそれよりも、より本来の意味に近いもの―であり、民は誰もが互いに尊重し合い、助け合う理想社会であった。
しかしそんなSILK達にも、転機が訪れる。
森の中を歩いていた若者が、偶然にもルルニアの遺跡を発見したのである。
遺跡と遺物の情報を元手に高度な文明を得たSILKはより団結力を高め、世界各地の陸上を支配する超巨大国家「モスリア」を作り上げる。
善意と高度な文明がこの鱗翅目帝国をそれまでにない至高の国家へと仕立て上げたがしかし、生物とは常に進歩と堕落を繰り返す。
心からの善意で動いていたSILKも、モスリア建国から五千年を経てある技術の開発を境に堕落の一途を辿ってしまう。
それは、『同性間繁殖』の技術。
即ち、同性同士での性行為でも子を産む事の出来る肉体を獲得する改造手術の技術である。
同性間から産まれた子供は必然的に両親の性別を持って産まれてくるが、
この技術によりモスリアは女性至上主義社会となり、男性は総じて容赦なく都市外の森林へ追放される事となってしまった。
それから二億年。
男性は森林で生存する為に強靱な肉体を獲得し、都市部で暮らす女性達は高度な文明と引き替えに発生する大量の廃棄物を森に捨て始めた。
それから数日もしない内に、森は当然の如く汚染され続け、到底生物など住めないような環境へと近付いていった。
しかし、ある種の真菌にとってこの汚染状況は増殖に最適な環境であったため、爆発的に増殖し森全域を埋め尽くした。
清潔で徹底した防備システムの存在した都市には侵入できなかったが、その分外部では広大な菌類による森を形成した。
更にその森林に適応したある種の節足動物が、明らかに無茶をしているとしか思えないような急激な臣下を続けた結果、節足動物のような脊椎動物のような謎の生物群として生存。
森林の環境に適応した男性SILKはこれらを総じて「AVADOWN」と呼び、狩り、恐れ、崇め、そして使役した。
そして、そんなこんなで700年が経ったある日。
AVADOWNが突如凶暴化し、ある種の災害が発生。痺れを切らしたSILKの男達は都市への反逆を決意する。
時を同じくして、自然を愛し都市から抜け出してきた一人の女と男とが恋に落ち、女は男性勢に協力する事となる。
都市の弱点を突かれた女性勢に為す術はなく、無条件降伏によって戦争は呆気なく終わりを迎えた。
そしてモスリアは再び、男と女、自然と文明の良さを併せ持った社会の形成を始める。
―2000年後―
モスリアは経済・食料に於ける危機的状況に陥り、感染症まで流行。
工学の進展に限界を感じたモスリア政府は生物学を発展させると、志願者を募りその品種改良を開始。
宇宙進出・深海開拓に着手。
再び活気を取り戻したモスリアは、更なる発展と栄光の元繁栄していく。
―一万年後―
人類などとは比べ物にならないほどの発展をしたモスリアであったが、今となってはその面影は何処へやら。
住民達の形態は大きく様変わりし、貧相になって昨日しなくなった胴体と、対照的に肥大化した脳を持ち、終いには超能力まで扱うようになっていた。
考え方も全盛期のSILKと比べかなり低レベルになっており、そんなわけだから惑星全体が急激な速度で汚染されていった。
一方海中では、嘗て深海開拓を目的として作り出された水棲SILKがマイペースな生活を送っていた。
―約400年後―
地上のSILK達は、絶滅を悟っていた。
そこで彼らは、自分達の最新技術を総動員させて作り上げた巨大宇宙船に、惑星の全てとも言い表せる情報を持たせた記憶装置と、生物の脳と同等の性能を持つ人工知能、そしてそれにより操られる複雑怪奇な機械群を搭載し、宇宙に放った。
「あの船には、偉大なる祖先達が培ってきた知識と技術、そしてそれを扱うのに最適の操縦士が入っている…。
何れあの船が、我々の後継者による新世界を作ることを願うとしよう」
「本当に、良かったのでしょうか?」
「何を言ってるんだ隊員、全てはこれからじゃないか」
「しかしながら長官。
新世界の民が、我々の二の舞を踏まないという保証が何処にお有りで?」
「そう言うな副長官…掛けてみたくなったのだよ、新世界というものにな…」
未来への希望を乗せた宇宙船は、何事もなかったかのように宇宙へ飛び立っていった。
これよりこの船は無人の侭、永遠とも言えるほどの長きに渡る旅に出るのである。
そしてそれから約半年の後、地上のSILK絶滅と共にモスリアは崩壊。
汚染された環境が徐々に回復を始め、惑星nは本来の姿を取り戻していくだろう。
が、しかし。
物語はこれで終わっていなかった。
というか、問題はまだあったのである。
宇宙船内に、侵入者が居たのである。




