エインフェリア召喚
ここら辺で上編ラストかな?
「まあ、だとしても私にはかないませんが、見事だったのは認めましょう?」
ーーと満面の笑みで言い放つ。どこまで本気なのかわからないエアリスーー妖艶の中に人なつっこさを感じさせる。
七瀬はそのやり取りを見つめながら、トールの態度に違和感を覚えた。
いつもの彼なら、もっと強気に出るはずなのに――?
(本気を出していれば、私は負けていたのかな?)
彼女の考えを見透かしたように、エアリスが低く呟く。
「思った以上に、厄介な男のようですね」
彼女の瞳に浮かぶのは、興味か、それとも別の何かか。
しかし、七瀬はそれ以上問い詰めることはしなかった。
従順かつ強い忠誠心とは、私にはやや重苦しいと感じることもある。
やはり彼女の視線から目を外すことはできずに従うようにトールを視線で追うがーーあがら居がたい圧力ーー彼女に手を引かれてその場を後にした。
中庭まで来ると、噴水に腰掛けるトール、それに続いて私たちも腰掛ける。
「俺は、今回のに関してはよくおもっちゃいねえ。だが、手を貸してやるよ。
葵とか言う女生き返ってもらわねえと、全力のイグニスを倒せないからなあ。
ただ、雑魚の相手は簡便だ。相手が小物なら、積極的には加担しないぜ。 俺は俺のやりたいようにやるだけだ。文句は言わせねえ!」
足を組みながら噴水に、乱暴に座る。
それを見ながら優雅な所作でエアリスも少し離れた位置に座ると、ポンポンと脇をたたく。
もちろん隣に座れということなので、逆らうこともできずに吸い寄せられるように座る。
「さて、これから先私たちには強力な敵が待ち構えています。
ヘル様には助力は最低限にするように仰せつかっておりますが、私としては七瀬様の安全を何より優先いたします。
ヘル様には助力は最低限にするように仰せつかっておりますが……私としては、七瀬様の安全を何より優先いたします。
トールが軽く鼻を鳴らす。
「へっ……相変わらずだな」 「私独自の作戦を立てようと思います」
エアリスは構わず続ける。
「まず、セラフたちは兄弟です。
トール、この方はジョーカーとはなりますが、それだけでは弱いですね」
トールは眉をひそめるが、反論はしない。
エアリスとは犬猿の仲らしく、口を挟む気もなさそうだった。
「そこで、ヴァルキリーとしての七瀬様のお力を借りたいと考えております」
エアリスは七瀬の腕に絡めるように寄り添い、微笑む。
「トール様もヴァルキリーとはいえ、向き不向きがありますし――」
なおも挑発を続けるエアリス。
(……単にトールをからかいたいだけなんじゃ?)
トールは鬱陶しそうに目を閉じる。 「……ああ、好きにしろ」
(完全にシャットアウトしてる……)
エアリスはそんな態度を楽しんでいるかのように、わずかに唇を歪めた。
なおも挑発をやめないエアリスーーがトールも黙したままだ。
ついでに私の腕に腕を絡めて胸を押しつけてくる。
トールの反応を見ているのか、単にそうしたいだけなのかは謎だ。上機嫌にクスクスと笑うだけだ。
トールは鬱陶しい奴と内心で思っていそうだが、瞑想しているように動かなくなった。
これ以上、相手にはしていられないという意思表示だろうか?
「さて、七瀬様にはここで、英雄――エインフェリアを集めていただきます」
エアリスは七瀬に視線を向ける。
「セラフに対抗できる人材が、最低でも四名ほど必要ですね」
彼女は静かに続ける。
「適性のありそうな人物を、ヘルヘイムで集めていただけると嬉しいです」
(死者の魂から、強者を呼び出して仲間に引き入れる――そんな作戦?)
確かに理にかなっている。
それに、今までこの案が出なかったのも、少し不思議な話だった。
「試してみるわ」
そう呟き、七瀬は瞳を閉じる。
――死者の声を聞く。 死者の魂が集うここヘルヘイムならば容易といえるのかも?
それは、強い魂を求める瞑想。
ーー明滅する視界。
誰かの過去の思考と人生が、走馬灯のように流れるのを止めて映像化していく。
「私は、ただ、子供を助けたかっただけなの……」
声が聞こえる。おとなしい感じの女性の声だ、金髪のボブカットの傭兵。頭にバンダナを巻いており、ケープを掛けた革の軽装鎧ーー弓を構える彼女は、弓術士のようだった。
彼女の人生はあまりいい物とは言えなかった。
次回以降破エインフェリアの意思に統合されます。 あちらでは七瀬の名前破極力出さないので(新規者でも読めるように配慮しているため)こちらは一旦停止いたします。
また、エインフェリアシリーズが終わった際に、下の再開を予定しています。 中編がエインフェリアの記憶担っております。 ややこしくてすみません。