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雷迅を冠する者

サービス回、長めです。

 ウリエルがさげすんだまなざしとともに、呪詛を吐き捨てる。

 かなりつらそうだが、屈服する気はないらしい。

 それを最後に、彼女は意識を失った。


『ウンディーネ、聞こえる』


「ダメですわ、七瀬様、は私だけを見ているべきです。

 至近距離からかかる甘いと息が再び七瀬野一色を奪う。


 エアリスの誘惑に近い視線を感じるそれを見ると金縛りに遭ったように思考は停止してしまい。 頭が回転するのを阻害するジャマーとして浸透する甘い息ーー


 ウンディーネから呼びかけを聞き取ることができない」



「いちゃつくのは結構だが、いい加減しびれを切らせておるがの?

 ハエが一匹、ふむふむなるほど、これは面白い展開じゃ」


 そう言うと、ヘルが指を鳴らす。 机がせり上がり、城のマップが浮き上がる。


 まるで3DCGのようなホログラムが浮かび上がる。一体どういう仕組みなのやら?

 ーーとそこにヴァルキリーが一人?


 ヴァルキリーがひとり、城の城門前から移動している。


「行くがいいーーわしは戦闘能力がないでな、様子を見させてもらう。

 ククク、このものの処刑はまた後日としようではないか?」


 真のサディストといった手つきで、気を失ったウリエルの首筋に腕を這わして頬をなで上げる。

 楽しそうにおもちゃを眺める子供といった風情。ウリエルはさしずめ、彼女ーーヘルのフランス人形といった感じだ。


 それを横目にみつつ、ホログラムマップの反応のある方向へとカンテラを向けて歩き出すエアリス。


 すでに彼女に逆らおうという意思は折れており、呪縛となって七瀬の行動を制限されている気がする?



「そうそう、ウリエルを含めセラフ一人につき一つの魂を与えよう。


 等価交換というやつじゃの、死者の魂とは決して安くないでの、このウリエルには、彼奴らを呼び出す餌になってもらおう?

 遠からず、次のセラフがここを訪れるだろう、そのときに備えて力を蓄えるのもまた一興よ……」


 重要なことをさらりと言ってのけるヘル。 敵には回したくない存在だと思った。



 城門を出たところに一人のヴァルキリーが立っていた。

 先ほどホログラムに移ったときはずっと遠くだったのだが流石雷迅の名を冠するだけある?

 

 背中を壁に預けるーー彼の名はトール。言わずと知れた。神代の雷霆ーートールのヴァルキリアだった。


「てめえは何をやってる?

 そんなので、イグニスが満足すトールは、腕を組んで不機嫌そうにこちらを見下ろしていた。

雷撃が空間を裂き、七瀬の足元に迫る。爆風で地面が裂け、砂煙が舞う。

「七瀬様には指一本触れさせません!」

エアリスが間に入り、雷を受け止める。しかし、七瀬はその肩を軽く叩いた。

「いいのよ、エアリス。私も少し身体を動かしたいの」

彼女の瞳が獰猛に輝く。

ると思ってるのか!? アンタ、今最高にかっこ悪いぜ! ーー見てきたように一喝すると、非難の言葉を向けてくるトール。


 彼の言葉を受け再び心が動き出す。

 それを制するようにエアリスが腕を回してくるが?

 今度は、なんとも思わない。どうやら、テンプテーション(誘惑術)が弱まったようだった。


 自覚はあったけど、相当、ヘルにやられていたってことね。

 頭をいじられたような感覚からぬけだし、エアリスを見つめると。


「そんなに見つめないでください。 照れてしまいます」

ーーごまかすように笑うと、機嫌を損ねたようにそっぽを向かれた……



 トールは、また無言になり、機嫌が悪そうに、こちらを眺めている。



「いいぜ、一丁渇を入れてやる。消化不良だぜ!」 そう言うや否や、轟音とともに雷が迸る。

「いつぞやの続きだ、真剣勝負といこうじゃねえか!」

「行くぜ、トールハンマー!」

 ――電光石火、雷撃が空間を裂き、七瀬の足元に迫る。爆風で地面が裂け、砂煙が舞う。

「七瀬様には指一本触れさせません!」


 エアリスが間に入り、雷を受け止める。しかし、七瀬はその肩を軽く叩いた。

「いいのよ、エアリス。私も少し身体を動かしたいの」


 獰猛な輝きを帯びた瞳―― 七瀬は、久しく忘れていた闘争心を呼び覚ます。





 久しぶりとなる、サバイバルナイフを召喚。二対、四本の刃が水と風を纏い、空間を裂くように飛び交う。


高速回転するナイフがトールを襲うが、雷を纏った拳が全て弾き返す――。

その瞬間、七瀬は即座にスナイパーライフルを召喚し、狙撃体勢に入った。


水の波紋が七瀬の身体を包み、時間の流れが歪む。


 私の力量じゃ、一度に4本のコントロールが限界ようだ。

 コントロール型の綾瀬のようには行かない。



 飛び交う、ナイフをはじき返すも、その瞬間動きが止まる。

 瞬時にスナイパーライフルを召喚して、狙撃体制に入る。



「ウンディーネ、応えて! リップルフロー・アクセル!」

(流水流転)タイム・アクセラレイト――!

 水の波紋が七瀬の身体を包み、時間の流れが歪む。





 水の流れは時と例えられるという、本来なら、水の力によって時間の流れを制御するのは大技かもしれないが、今の私ならできる気がするーー!


 


 水にの流れに例えられる強引な時間の操作により、時間短縮を行うことでスナイパーライフルが顕現し、彼女は一瞬で狙いを定めた。


 ヴァルキリーの戦いというのは何も魔力だけが限界値ではない。

 イメージの力が大きく作用するのだ。



 元々夢である、ヴァルハラシンドロームの中において、思い込みの力イメージの力は大きな力を持つことが理解してきている。

 それにより、水の流れと時にイメージをミックス、できたイメージにより時を流転する。

 スナイパーライフルの照準が一瞬で定まる。

「狙うは腕――!」

 大口径の流水弾が、轟音とともに炸裂した。

 しかし――大口径の流水弾頭を、トールの腕に狙いをつけ発射ーー


 腕を破壊すれば、これ以上は戦えないはず? と踏んだのだった。

 ーーだが、そう簡単な相手ではない。


「甘ぇな!」

トールが雷を纏った拳で弾丸を受け止める。

――時間が止まる!?

七瀬の目が見開かれる。

「俺だって水の精霊は使えるんだよ!」

トールの手のひらが淡く輝き、七瀬の時間加速を無効化する。

水の流れを制する力を、トールもまた持っていたのだ。

「テメェだけが時間を操れると思うなよ!」

勢いを失った流水弾が、雷の拳によって弾かれる


トールは同じ水の精霊の力を用い、時の流れを抑制したのだ。

「テメェだけが時間を操れると思うなよ!」

勢いを失った流水弾が、雷の拳によって弾かれる。

七瀬は舌打ちしつつ、即座に切り替える。


 彼もまた水のヴァルキリーだ、見よう見まねで時を強引に停止させる!

 トールが水の弾丸に触れた瞬間ーー時は止まる。

 ーー勢いを相殺された弾丸は、雷の拳で弾き飛ばされた。


 属性一致による妨害行為、流石、一流のヴァルキリーー!


 イグニスには及ばなくても一応最強クラスのヴァルキリアだ。 雷神トール決して侮ってはいけない相手だった。

「なら、これはどう!? ウォーターウォール!」

 水の障壁を展開し、雷撃を誘導する。








 お返しとばかりの雷撃と、ウォーターウォールーー水の障壁が瞬時に形成され、雷撃を誘導する。


「雷を無効化するつもりか? なら、こっちも全開で行くぜ!」

 トールの拳が唸る。轟音とともに電撃が炸裂し、七瀬の水の障壁を吹き飛ばした。


 電流を逃がしこちらも相殺することでおあいこだ! 雷撃を避雷させてかいくぐる。


 瞬時に、風の精霊をを使い空を掛けるーー!

 空中で攻撃を受け止めている間は、いかにトールとて対抗手段がないはずだ?

「空を制す――!」

七瀬は風の精霊の力を解放し、瞬時に跳躍。

風を蹴り、空を駆け、レーザーブレードを召喚する。

「――くらいなさい!」


 ーー同時に、斬りかかる勢いのまま回転蹴りを叩き込む!

 剣の方の斬撃を予想していたトールがわずかに呻くーー!


 剣閃がトールの肩をかすめる。

「おっとォ!」

 トールは即座に反撃。掴まれた足が空を裂き、地面へと叩きつけられる。

 背中に激痛が走る。


 だが、彼はこちらの足をつかんだかと思うと逆に空中で振り回して、地面にたたきつけてきた。

 流石に膂力差がある。 この攻撃はかわせず地面にたたきつけられた。


「くそっ、やるじゃない……!」


「ハッ、たぎってきたぜ! いい成長じゃねえか!」

トールの目が獣のように光る。


 そろそろ俺も暖まってきた。

 いいぜ、シルフィード。 かかってこい!?

 おまえがどこまで成長するのか見届けたくなってきたぜ!」 


「いきなり、襲いかかってきて、その言い草はなによーー!? 野暮な男に興味はないのよーー!?」


「うるせえ、てめえが不抜けてるから、渇入れてやってるんだよしゃんとしやがれーー!」



 言葉選びがいちいち少年コミック風なトール。


 仮にも女の子相手に言う台詞ではないが、彼が私を女性扱いするかはかなり微妙だった?


 例え意中のイグニスにだったとしても、紳士的な彼は想像がつかないところだけれど……



 面倒なので戦いたくないのが本音だけど、本気出しても勝てなさそうな相手だ。相手は、雷と水。こちらは風と水の二重属性だ。


 ウンディーネの力の本流である. 私が彼女にに命じればトールの属性を封じることはできるかもしれないが? それはやらないのが私なりのプライドというものだった。



 たたきつけられた状態から、側転して起き上がる。今度はサブマシンガンを二丁召喚して、ムーンサルト・ブレイズ!

七瀬は即座に反撃。二丁のサブマシンガンを召喚し、跳躍しながら乱射。

弾丸が螺旋を描き、風の流れに乗る。


 

 でたらめなようで、多角的に空いた空間から多角的にトールを狙いながら飛び回る。

 本来マルチロック対隊複数である動きだが、それを、風と水の力で誘導する!

 弾丸の火力自体は落ちるものの、垂直に追尾させることが可能だーー!



 飛び回る弾丸は角度を変え地を駆るトールに殺到するーー!

 蜘蛛の巣のように、飛び交う弾丸を前に、トールはだが避けきるーー流石、まだ余力があるようだーー!


 「小細工が過ぎるぜ!」

 トールの手のひらが輝き、雷の磁場を展開。 風の弾丸が吸い込まれ、威力を削がれる


 「そういう小手先の技じゃ俺は倒せないぜ! トールハンマー(審撃の雷霆)ーー!」



 今までのより出力を増した雷撃が、瞬時に水の弾丸を捉える。

 それにより攻撃の半分は止められてしまう。先ほどと同じ触れれば水の力を無効化する属性一致による防御だ。


 だが残り半分風の弾丸は正確に彼を捉える。筈だったーー!?


 それらの弾丸も雷による磁場により勢いを殺し耐える。

 単純な地力での防御ーーだがこれで大技はいなされた。

 彼の耐久力は伊達ではない。 ーー計10発近い風の弾丸を受けても、崩れ落ちはしなかった。


「甘いなーー! そんな攻撃じゃ、ワンコロだって倒せやしねえぜ!

 もらった!  締めだーートールハンマーーー!」


 遠距離型のレールガンだろうか? 銃弾を磁力により反発させて撃ち出す即興の遠距離弾薬。

 私の打ち出したものを逆に使い彼がいくつかの弾丸をこちらへとはじき返した。

 これはまずいかも? 生半可の手段では対抗できないと察して

 ーー瞬時ーー新たな能力を発動!


 タイムーーフリーズーー

 リップルスロウ(時間鈍化)間一髪水の力で弾丸を遅くし避ける。

 長い髪の房が持って行かれる。 がしかし、

 ーーここで、空中ダッシュして反転のかかと落とし。

 


 空中で姿勢を変えるのは予測がつきにくいーー瞬時の判断でトールのかかと蹴り、防御せざるえずバランスを崩すーー!

 追撃ーートールの拳が唸り、轟音とともに電撃が炸裂。

 水の壁が破壊され、七瀬は即座に跳躍する。

 風の精霊が力を解放し、空中を駆ける。



 

 読まれていた!? だが、負けじと追撃ーー

「ならば――!」 瞬時に地面を蹴り、七瀬は再び接近。

 目にも止まらぬ速度でレーザーブレードを振り下ろす。

 「空を制す――!」 一瞬でレーザーブレードを召喚し、突撃。

 「――くらいなさい!」

 最初から狙っていたとばかりにレーザーブレードで2撃目!


 ーー最後の最後真剣白刃取りで、受け止めようとするトールーー

 


「……!」ーー瞠目するトール!

超反応でトールが白刃取りの構えを取る。だが――

「無駄よ、それは物理攻撃じゃない!


 高周波の刃が閃き、トールの手のひらをかすめる。


 だがこちらの武器はレーザーブレードである。無刀取りは成功せずむなしく空を切った。そこに正確な剣劇を叩き込む瞬間にーー


 ーー「――そこまで!」

 場を割るようにエアリスの声が響く。



「……これで決まりですね。」



 七瀬は、まだ昂ぶる鼓動を抑えながら、トールの態度を見つめた。

 その問いに、誰も答えない。

 静寂を切り裂くように、エアリスが続けた。


「でも、本気だったら、どうなっていたか……気になりますね?」

 エアリスがとぽつりとつぶやくとーー



 といって差し出したのは、レーザーブレードの刃先に走ったトールの手のひらの痕跡だった。


 レーザーブレードとはいわゆる高周波ブレードのカテゴリーである。

 物理攻撃ではないーー


 雷によって水と雷の共鳴による微細振動の制御さえ可能だったトール。

 全力なら止められた。 それを示さんばかりにーー痕跡が異彩を放つーー!


 エアリスが微笑む。

「最後の一撃、お見事でしたね」 「でも……本気だったら、どうなっていたかしら?」

彼女は七瀬のレーザーブレードの刃先に残る焦げた痕跡を示す。

「手加減した?」 「いや、予想以上だったんで……止められなかっただけだーー!」

トールは気まずそうに肩を竦める。それに対して、エアリスは嘲るように微笑む。

「意外と優しいのですね」 「……うるせぇよ」

トールは面倒くさそうに背を向けた。


 とぼけているつもりだろうが、トールの態度はどこかおかしい。

 ーー器用な男でないため、とぼけたようで、全然見抜かれているーー証拠にエアリスは全く信じていない問い体で一瞥する。



 レーザーブレードに残された痕跡、それをまじまじと眺めつつーーエアリスがつぶやく、 トールに注意と敬意をみせる。

 ーーと意外な反応を見せる。 意図せず興味深い者を目にした? そういった反応だ。



 無関心かと思われたトールへの敵意にも近い反応は、違和感を覚えつつも、それ以上は追求しなかった。


「まあ、だとしても私にはかないませんが、見事だったのは認めましょう?」

 


 ーーと満面の笑みで言い放つ。どこまで本気なのかわからないエアリスーー妖艶の中に人なつっこさを感じさせる。


 七瀬はそのやり取りを見つめながら、トールの態度に違和感を覚えた。

 いつもの彼なら、もっと強気に出るはずなのに――?

(本気を出していれば、私は負けていたのかな?)

 彼女の考えを見透かしたように、エアリスが低く呟く。

「思った以上に、厄介な男のようですね」

 彼女の瞳に浮かぶのは、興味か、それとも別の何かか。

 しかし、七瀬はそれ以上問い詰めることはしなかった。

割と成長してきてるかなと感じるところではある? 次ぐらいでこの話はいったんおしまいかな?

 調整いたしました2025/03/05現在更新。

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