術中
翌日になって目が冷める。日の光が体内時計がはっきりせず気だるい。
気がつくと、見たこともない天井に、豪奢なベットの上でゆっくりと身体を起こす。
着ているものがシーツだけだった。 さすが洋風文化は違うなあ。
と感じながら、もはや 昨日どうやって寝たのか覚えていない。
とにかく裸ではまずいので、部屋を見渡すと、 エアリスが、出入り口に控えるように立っていることに気づいた。 ずっといたのだろうか、この人?
「七瀬様、今日もお美しくございますね。ですが、あまり見せびらかせると、照れてしまいます。ぽっ。」
「馬鹿、見ないでよ!」
馬鹿やりとりを朝? 朝からしたところで、私自身ずっとこの城で暮らしてきたような、不思議な感覚にとら割れていることに気づいた。
昨日は息苦しい血なまぐさいと感じていた冥界の雰囲気に違和感がない。
とか考えて、見渡していると。
「うふふ、そんなに見せびらかすと、襲っちゃいますよ!? 私はこう見えても、気が短いんです。作りましょう、既成事実をーー」
ーーと覆い被さってくるエアリス、いきなりだったのでよけることができないが、私は弾丸で躱せるヴァルキリーだ。 常人ならどんなタイミングであろうが躱せる。
だけれどもきっちり抱きつかれたところで、そもそもよけれないというのはおかしいな? この人できる?
とか思っていると、いろいろ身体を触られた後に、どさくさに紛れるように、服を着せられた。
すごい大胆なガーターベルトと、大胆な露出の下着。
上はいつもより、派手派手しい、ゴシックロリータに悪魔っぽい衣装を施した、コルセットやらヒラヒラの、衣装を着せられていた。
手際も素早い。 最後にぎゅっとコルセットを締められて、やや強い締め付け感を感じたと思えば、仕上がっていた。
メイドと言うよりは、ゴシック風フランス人形のようなそれを着こなしながら、くるりと一回転。
エアリスが、ダンスの要領で、いきなりうまく回転するように仕向けた結果だ。
そのまま、ペアダンスのフィニッシュのように支えられてからだをあずける。
私がしたいと思ったわけではなく、完全に動きを制された。
操り人形のようなのとは違うは違う純粋な、力の作用をうまく使った結果だ。
「さて、参りましょう、ヘル様がお待ちしておいでです。
朝食の準備もできております七瀬様」
先ほどまでとは違う事務的な口調に戻り、そのまま、腰に手を当て玉前スコートされてしまう。
いろいろと反則スペックを持つエアリスだった。
広間を通過して、食堂へ、上座?とおぼしきところでヘルが待っていた。
「おはよう、今日のご機嫌はいかがかな? 七瀬嬢」
ーー昨日はずいぶん敵対的だった態度が軟化しており、いきなり、朝の挨拶からだ。
「ククク、妾、は、敵対的な相手にはああいった態度をとってはいるが、素はこんな物じゃ、何せ肉体がないでな、あまり威厳ばかり放ってはいられんのじゃよ」
威厳たっぷりのアンデットの王から、ロリばばあ系キャラへとクラスチェンジした、ヘルが陽気に話しかけてくる。
「ふむ、驚いて声が聞けぬと見えるな。
だが、よく考えてみよ。 妾は、こう見えて精神体だけの存在。
まあ、今はおぬしもそうだったかの? だが、おぬしは遠からず、生き返ることになるだろう?
覚悟は決まったかの? うむ、まあ朝食が終わるまではまってやろうではないか、ふぉふぉふぉふぉ」
えらく饒舌なロリおばば(どう見ても年上には見えないが、相手は数千年を優に超える化け物だということを、肝に銘じる必要があるだろう」
朝から、振り回されているので、声が出ない。
朝から、よくわからない冥界のオードブルを食べ終えると、ヘルが、玉座へ戻るように指示を出してきた。
胃の中がかなりいっぱいになった。日本人でなおかつ健康思考でもない私にとっては朝からのオードブルはヘビィだった。
朝っぱらから、ウンディーネとシルフの呼びかけが聞こえてくるが、頭が回らない。 自然と耳には入らずスルーしてしまう。
私はそれにも答えずただ、ぼけーっと部屋を後にした。
「さて、話を再開しようか、貴様というのも無礼じゃの、客人としてもてなしてやろうではないか。
さて、現状我々の置かれている状況について話すところからだ。
身体が痛ーい。 動きすぎのようです。 まあ、それはそれとして、書く時間がとれないので、後編は遅れそうではあります。