61. エピローグ
「あれで良かったのでしょうか?」
“さやか”の質問にディオーネ様が答える。
『ちゃんと恵美は気付いていましたよ。本当に恵美は聡明な子ですね』
その2人の会話を聞きながら、ラケシス様が悔しそうに言った。
『あと5個! あと5個で、完全に元に戻せたのに! 何故あと5個の核の粒子が見付からなかったのかしら!』
『見付かる方が可笑しい次元での所業でしたよ。むしろ、よくぞあそこまで集まったものだと、未だに信じられないくらいですもの』
ラケシス様の言葉にそうディオーネ様が言う。
グレイを生き返らせる為、数百億個に分裂したグレイの核の粒子を集める事は、本当に至難の技であった。
それこそ奇跡の神業だ。
しかし、本当に奇跡が起きたのだろう。
エマや王国の人々が、グレイの事を思って祈ってくれた奇跡が、僅か数年でほぼ集める事が出来たのだ。
それには女神様2人の神力もかなり使っており、暫くは神力を貯めるために眠りにつかなくてはいけないほどだった。
これ以上は流石に無理だと判断され、記憶のない、人間になってしまったグレイだったが、それでも多めの魔力を保持し、属性も以前のグレイが持っていた能力が使える。
この世界の魔物達が弱体化してきたのも、グレイが元々持っていた能力が影響しているのだろう。
「そうですね。たとえグレイさんの記憶が戻らなくても、きっとあのお二人なら新たな関係を築いて、幸せになってくれますよね」
“さやか”の言葉に、ディオーネ様が頷く。
『“さやか”も、そろそろこれからの事を考えなくてはね。アリアの最期を見届けたんだから』
そうラケシス様が言った。
アリアがこの世を去ってからすでに2年が過ぎていた。
“さやか”は、アリアの最期を見届けた後から、よく物思いにふけるようになっていた。
もちろんラケシス様やディオーネ様が、グレイの魂の核の粒子集めを行なっているのを頑張って手伝っていたが、それも一段落ついたのだ。
出来れば“さやか”にも、神界で一旦眠りについて霊魂を休ませた後、また転生して欲しいとラケシス様はずっと思っていた。
『私とディオーネ様は、この度の核の粒子集めで大分、神力を使ってしまったの。しばらく眠りについて力を貯めなくては。
人間界も、エマとグレイに任せていれば安心だし、もう、あの世界は数百年眠りについても大丈夫だと思うの。
だから、今の気がかりは“さやか”よ』
ラケシス様にそう言われ、“さやか”は、少し考えた後、キッパリと答えた。
「エマ様やグレイ様を見ていて、私もやっぱりちゃんと生まれ変わりたいって気持ちになりました。
ラケシス様、私をこの世界に呼んで頂いた事、とても感謝しております。
このように、穏やかな気持ちで自分を振り返る事が出来たのは、みなさんと出会ったおかげだと思います」
“さやか”はそう言って、ラケシス様とディオーネ様に頭を深々と下げた。
「転生を受け入れさせて下さい。
よろしくお願いいたします」
『分かりました。よくぞ吹っ切ってくれましたね。私たちが眠りにつく前に手続きをしておきましょう』
そうディオーネ様が返事をし、ラケシス様も嬉しそうに頷いている。
それぞれの決別と、いつかの出会いを胸にしながら、3人は幸せそうなエマ達の様子をずっと眺めていた。
~完~




