43. 表彰式
決勝戦には国王陛下や王妃様、側妃様も来られていたらしい。
表彰式の後、陛下が壇上に上がって来られ、大会の労いと祝いのお言葉を述べられた。
そして私は、優勝者の特典である国王陛下への願い事を、この場で申し出る事を許された。
「優勝おめでとう、エマ・ベルイヤ嬢。
アステルの婚約者候補であるそなたが優勝とは意外であったが、魔法の才に恵まれておるのは大変素晴らしい事だ。
何なりと願い出るがよい」
陛下の言葉に、私はカーテシーをしてお礼を述べる。
「過分なお言葉を頂き、恐悦至極にございます。陛下に叶えて頂きたい願いは、わたくしが以前より心から願っていた事にございます。
失礼を承知で願い出る事をお許しください」
「ほぅ、構わぬ。申し出るがよい」
その陛下の言葉に、私は大きく深呼吸をし、改めて陛下に向き直る。
「失礼ながら、わたくしを第1王子殿下の婚約者候補から外して頂きたいのです」
私のその言葉に、会場内はザワつく。
「それは王命であったはず! それを断ると言うのか!?」
陛下の傍付きの大臣らが、口々に怒りを顕にして私を罵倒してきた。
王命であり、普通なら光栄であるはずの事を断るなんて、命知らずのバカのする事だという事は分かっている。
しかし、このまま流されて受け入れてしまえば、強制力通りの結末を迎えてしまう。
ううん。
そんな建前じゃなく、本心からあの王子の婚約者候補だなんて、絶対嫌なのだ。
私は甘んじてその罵倒を受けながらも、陛下の反応を待つ。
陛下が無言で私を見ていたが、片手を上げて周りを制した。
静かになったところで、陛下が私に聞いてくる。
「どうして婚約者候補を降りたいのだ?」
その陛下の言葉に意を決して発言する。
「以前より、第1王子殿下のお心は、もう1人の婚約者候補であるアリア様にございます。
わたくしでは、第1王子殿下のお心を満たす事など到底出来ず、かえってお心にご負担をかける存在にございます。それはひいてはこの国の為にならないのではないかと常々感じておりました」
私はなるべく失礼に当たらないよう、言葉を選びながらそう伝えた。
「そなたとは確かに今のところ、アステルは好意的な関わりを持っていないようだ。
その事でそなたの心にも負担をかけていたようで申し訳なく思っていた。
アステルには十分に言い聞かせておったのだがな」
そう言って陛下は、準優勝の台に立っているアステルをチラッと見る。
試合の時に場外まで吹き飛ばされたが、特に大きな怪我はしていないようだ。
陛下の視線を受けて、アステルは叫んだ。
「陛下! 私からもお願い申し上げます!
どうか、この女……エマ・ベルイヤを婚約者候補から外して下さい!」
アステルの叫びに、陛下は表情を硬くする。
「黙れ、アステル。お前の願いを聞き受ける場ではないわ」
陛下は鋭くアステルを見据え、そして私に向き直る。
「この場ですぐに返答する訳にはいかない願いゆえ、一旦持ち帰る事とする。
それで良いか? エマ嬢」
「ご検討頂けるだけで、有り難き幸せにございます」
陛下に敬意を表しながらそう答えた。
「では、改めて皆に祝いの言葉を述べよう。
見事な魔法大会であった。
この大会で奇しくも敗れた者とて、まだまだチャンスはいくらでもある。
未来ある学生の諸君、君達の今後の活躍を期待する。
この国の為に、今後もより一層励んでくれ」
陛下の激励のお言葉を最後に表彰式は終わり、この魔法大会は幕を閉じた。
ホッと一息ついてグレイ達の所に戻ろうとしていた私に、教会からの使者が声をかけてきた。
「エマ・ベルイヤ嬢、これから一緒に王宮まで来て頂きたいのです。
そこで貴女の魔力と属性を、陛下を始め、大司教様の前で測定させて頂きたい」
きた。
やはり、そうなるよね。
あれだけ大会で色んな属性の魔法を際限なく使ったんだもの。
不思議に思うのは当たり前か。
いつの間にか近くに来ていたグレイ達がこちらを見ている。
私は軽くグレイに頷いてから、教会の使者に返答した。
「分かりました」
教会の使者が私を連れていく様を見て、アステルやアリア達が合点のいった表情でこちらを見ながら罵倒してきた。
「やはり力を調べられるんだな」
「あの女の化けの皮が剥がされる時が、ようやく来たようだな」
「僕達も見に行きましょうよ」
ニヤニヤしながらアステル、レスター、マイクの順でそう言っている。
「さあ、我々も王宮に向かおうじゃないか」
アステルがそう言ってアリアの肩を抱き、マイク、レスター、アストナ先生を連れて歩き出す。
そこにオリバーの姿はなかった。




