39. 新たな仲間
次の対戦はシード権を持ったアリアと私の対戦だ。私は連続となるため、一旦小休憩が設けられた。
「エマ・ベルイヤ様」
声を掛けられて振り向くと、同じE闘技場で一緒に特設闘技場まで上がってきた、水属性の2年生の女子生徒が話しかけてきた。
「突然申し訳ございません。
わたくしは2年のレイラ・アスティと申します。少しお時間宜しいでしょうか?」
アスティ伯爵家の令嬢ね。
この令嬢には興味があったので、すぐに了解する。
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
令嬢の後をついて行くと、闘技場の裏手でグレイが待っていた。
「あれ? グレイ?」
私がグレイに声を掛けるとこちらを向き、
「来たか」
とレイラを見た。
「え? 2人は知り合い?」
困惑しながら聞くと、レイラが話し始めた。
「エマ様、わたくしはラケシス様の遣いの者でございます。ラケシス様より御二方の手助けをするよう言い遣って、こちらに参りました」
思ってもみない言葉に、私は驚いた。
「ラケシス様の遣い? という事は、あなたは本当は人間ではないの?」
私の質問に、グレイが答える。
「現在は人間の身体だ。手助けをする間、この娘の身体を借りているらしい」
「えっ!? その娘に憑依してるって事!?」
ビックリしてそう叫ぶ。
そんな私にレイラは説明する。
「私はまだ魂だけで身体を持っていないのです。
なので、誰かに身体を貸して頂かなければなりませんでした。
この人間の身体は、私ととても相性が良いようです。魔力も強いほうなので、この娘の力でここまで勝ち上がる事も出来ました」
「え……。でも、その子の身体を借りている間のその子の意識はどうなるの? あなたがその身体から離れた時、その子はその間の記憶がなかったらパニックになるんじゃない?」
その娘が心配になって、そう聞いた。
レイラはクスッと笑って大丈夫だと言う。
「いま、多分この会話を聞いていると思います。
この子は、家族からの壮絶な虐めにて自殺を図りました。幸い私がすぐにこの身体に入り、命を取り留める事が出来ましたが、この娘は生きる気力を失っていました。
だからあの家から独立して1人でも生きていけるよう協力をするということで、身体を借りる事に同意してくれたんです」
自殺!?
しかも家族からの虐め!?
「え!? なんで家族から!? 今は大丈夫なの!?」
「ええ、私がこの身体に移ってからこの娘の力が開花したので、身を守る事が出来ております。
どうやら幼い頃に父親が再婚し、それからは父親は義母や義姉ばかりを大切にして、この娘の事は居ないものと扱っていたようです。
また、義母や義姉から壮絶な嫌がらせを受けて育ったようで、限界だったみたいです。
でも、今は私が返り討ちにしていますので」
と、にっこり笑ってレイラはそう言った。
「そ、そうなの……まぁ、良かった、のかな?」
「この大会に出場したのは、エマ様へのお近づきの挨拶と共に、この娘の力を義姉に見せつけるためですよ」
そうなのね。
本当の身体の持ち主が、これをキッカケに強く生きてくれる事を祈るばかりだ。
「貴女の事情は分かったわ。それで、ラケシス様からの遣いっていうことは、やっぱり宝玉を取り戻すため?」
私の質問にグレイが不満げに答える。
「どうやらそうらしい。俺達では埒が明かないと思われたのだろうな」
「あ、ラケシス様は御二方を信用されてますよ。
ですが宝玉の爆発までの期間がどんどん早まって来ておりますので、人手がいるだろうと私が派遣されたのです」
そうレイラが話し、改めて挨拶をした。
「これからは私も御二方と共に宝玉を取り戻す事に協力致しますので、なんなりとお申し付け下さい。
よろしくお願いしますね」
頼りないとラケシス様に思われたと少しショックだが、確かに全然取り返す事が出来てない為そう思われても仕方ない。
それに協力者が増えた事は素直に有難いわ。
早く取り戻す為にも、力を合わせて頑張らなきゃね。
「こちらこそ、よろしくね。心強いわ」
「ああ、よろしく」
私とグレイも挨拶をし、改めてこれからの事を話し合うのはこの大会が終わってからと、闘技場内に早々に戻った。
闘技場内に戻ると、ちょうど次の対戦が始まるアナウンスがある。
「じゃ、行ってくるね」
「ご武運を祈っております」
一緒に戻ってきたレイラに軽く手を振りながら、私は試合会場に向かった。




