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運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~  作者: らんか


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29/61

29. 忍び込み作戦

 

「というわけで、グレイ。今夜、アリアの部屋に忍び込むわよ」

 

 

 放課後、セリーヌと別れた後に私はグレイにそう告げた。

 

 

「は? 忍び込む? どうやって?」

 

 グレイは訝しげに私を見る。

 

 ふふふ。私が編み出した新たな想像魔法をお見せする時が来たようね。

 

 

「今から新しい魔法を見せるわね」

 

 そう言って、周りに誰もいない事を確認してから、私は想像魔法を使った。

 

 

「え? エマ?」

 

 

 グレイが周りをキョロキョロ見回している。

 

 そう。

 私が新たに作った魔法は、透明人間になれる魔法だ。

 

「グレイ。私はここに居るわ。動いていないわよ。魔法で消えて見せてるの」

 

 そう言ってから、魔法を解除する。

 

「ね? これならバレずに忍び込めるでしょ? グレイは元々消える事が出来るから、これで一緒に忍び込んで宝玉を取り返しに行けばいいのよ」

 

 

「……なんか、その想像魔法、何でもありだな。

 なんて魔法をディオーネ様はお前に授けたんだ……」

 

 

 確かに。

 困らない能力を授けるって言われたけど、まさかこんなチート魔法を授けてくれるとは思わなかった。

 ディオーネ様には本当に感謝しかないわ。

 

 

「悪い事には絶対に使わないわ。そんな使い方したら、ディオーネ様の信頼を無駄にするものね」

 

「まぁ、そうだな。悪事に使った時点でその能力は無くなりそうだしな」

 

 

 確かに!!

 うっかり者のラケシス様とは違って、しっかりしたディオーネ様なら、絶対にそうする気がするわ!

 

「ラケシス様の宝玉を取り戻す為の事だから、忍び込んでも悪事にはならないわよね?」

 

 ちょっと不安になってグレイに確認する。

 

「……大丈夫だと思う」

 

 グレイの返事にホッと息を吐く。

 

 改めて想像魔法の使い方に気をつけようと気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 その日の夜、早々に自室に戻り、アリーには今日は特別疲れたからもう休むと言って、下がってもらう。

 

 アリーが部屋から出たのを確認し、すぐに透明魔法を展開して透明になった私は、屋敷の外で待機していたグレイと落ち合った。

 

 透明になった2人で、アリアの住んでいる教会に忍び込み、アリアの部屋を目指す。

 以前アリアの部屋に来た事があった為、容易にアリアの部屋に辿り着いた。

 

 

 (あ、グレイ。部屋の中にどうやって入ろう? 透明になったからって、すり抜ける事は出来ないのよね)

 

 念話でグレイにそう伝えると、グレイは無言のまま私の手をひいて、そのままドアを通り抜ける。

 

『俺と手を繋いだままにしておけば、俺の能力で一緒に通り抜けられる』

 

 そうグレイからの念話が返ってきた。

 

 

 流石は女神様の遣いの幻獣様。

 能力は人間より段違いだわ。

 

 

 部屋に入ると、アリアがいた。

 どうやら、アストナ先生から出された聖属性の宿題をしていたらしい。

 

『で、これからどうやって宝玉を取り戻すんだ?』

 

 グレイがそう聞いてくる。

 

 私はアリアの様子を見て、まだある事をしていないことにホッとしていた。

 

 (それはね……)

 

 私が計画を念話で話そうとした時、アリアの宿題が終わったようだ。

 

「あ~疲れた! 真面目に勉強するのも本当に疲れるわぁ! さて、ゆっくりお湯につかるとしますかぁ!」

 

 

 そう言って、バスルームに向かった。

 

 (待ってました! )

 

 

 私が念話でそう叫ぶと、グレイはまさかといった様子でこちらを見る。

 

 因みにお互い透明になってると見えなくて不便だから、お互いは見えるように魔法で調整してあるのだ。

 

 

『お前、まさか風呂に入っている隙に宝玉を盗ろうとしてたのか!?』

 

 信じられないものを見るような目で見てくるグレイに、当然といった顔で頷いた。

 

 (流石にお風呂に入っている時は、脱衣室に宝玉を置いておくでしょ? 何で今まで思いつかなかったのか、今までの私を叱ってやりたい気分だわ)

 

 そう言って、グレイの手を引きながら脱衣室に向かおうとする。

 

『ちょっ! やめろ! 俺は行かないぞ! 女の入浴を覗く趣味はない!』

 

 (何言ってるのよ。入浴は覗かなくていいわよ。脱衣室から宝玉を持って帰るだけなんだから。グレイがいないとドアを通り抜けられないじゃない)

 

 

 呆れた様に言う私に、まだ抵抗するグレイの手を強く引きながら脱衣室に入る。

 

 

 脱ぎ散らかした服を見て、案外だらしないなと思いながら、宝玉の入った巾着袋を探す。

 

 (あ! あった! )

 

 巾着袋を見つけ、すぐに中身を確認するが、中に宝玉は入ってなかった。

 

 (え!? 宝玉がないわ! )

 

『よく捜せ! 俺は目を瞑っているから探せないんだ!』

 

 グレイは、紳士道を貫くつもりなのか、脱衣室に入ってから全く目を開けない。

 

 幻獣なんだから、人間の女の入浴くらいで何をそんなに動揺しているのかと、呆れてしまう。

 

 (何、呑気な事を言ってるのよ! 宝玉を見つけないとこの世界がなくなるのよ! )

 

 私がそうグレイに諭していると、バスルームの中からアリアの声が聞こえてきた。

 

 

「本当にこのラッキーアイテムのおかげよね。順調に婚約者候補になれたし、アストナ先生も私の味方になってくれた。

 あとは、オリバー様を私に振り向かせたら、ほぼ原作通りに進むんじゃない?」

 

 アリアがそう言っているのを聞き、アリアが前世の記憶を持っていることを確信した。

 

 

 私は嫌がるグレイの手を強く引きながら、バスルームに入る。

 グレイは激しく抵抗しているから、私だけがバスルームの扉をすり抜けて入る形となっているが、その時に見てしまった。

 

 

「女神様。お願いします。

 どうかオリバーの気持ちを私に振り向かせてください。

 どうか、あの小説と同じ運命を辿ることが出来ますように」

 

 

 そう言って宝玉を両手で祈るように握りしめ、一心にお願いしている姿を。

 

 そしてその願いを叶えるように、宝玉が黒く光る。

 

「あら? また大きくなった気がする? お願い事をする度に大きくなっていくわね?」

 

 

 その宝玉を目の前にかざす様に手で持ってアリアがそう呟く。

 

 

 その宝玉は前に見た時より更に濁った色になっており、ビー玉サイズからピンポン玉くらいの大きさになっていた。

 

 

 

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