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1. プロローグ

病気で若くして死んでしまった恵美。

女神様の力で、異世界に転生出来ることになったのだが、それは断罪され処刑される運命にある悪役令嬢としてだなんて!

何とか自分で運命に立ち向かって、今度こそ長生きしてやるわ!


時を同じくして転生したヒロインが、転生する時に持ち出した女神様の宝玉。

宝玉にはその世界の運命が記されているという。


恵美は、協力してくれる女神様の使いと共に、宝玉の強制力に抗いながら、宝玉を取り戻して運命を変えようと翻弄する。

『…………』 

 

 

『…………』

 

 

 

 何だろう? 遠くから何か聴こえる?

 

 

 

『目を覚ましなさい』

 

 

 

『目を覚ますのです。恵美』

 

 

 

 

 ハッ!

 

 意識が覚醒し、飛び起きるとそこは真っ白な何も無い空間が広がっていた。

 

 周りをキョロキョロ見渡すと、先程から聴こえていた綺麗な声がまた私に話しかける。

 

 

『恵美、気づきましたか?』

 

 その声は辺り一面から響いており、姿は見えない。しかしその声は優しげな女性の声で、心の奥に響いてくるような、とても安心出来るような声だった。

 

 

「ここは何処ですか? あなたは?」

 

 私の声にその声は答える。

 

「ここは魂の通り道。あの世とこの世の狭間と言った方が分かりやすいかしら?」

 

 その言葉に、何故か納得した。

 

 ああ、私は死んだのね……

 

 長い間、闘病生活で病院に入院していた。

 母も私の闘病生活を長い間支えてくれていたが、過労で私より先に逝ってしまった。

 他に家族のいなかった私は、ますます生きる気力を失っていたから……。

 

「やっと死ねたんだ……」

 

 死んだ事を理解して出た言葉がそれだった。

 お母さん、ごめんね。

 やっとお母さんに謝りに来れたよ。

 

「……あなたは、神ですか? 神様なら、私の母に会わせて下さい。私、母に謝らないといけないんです!」

 

 

 私を女手1つで育ててくれた母。

 なのに、8歳の頃より難病を発病した私は、そのまま何年も入院を余儀なくされ、母は仕事と病院の往復で何の楽しみもなかったはず。

 当時は私も、なんで自分だけがこんな目にって、ずいぶんと母に当たってしまった。

 母が過労で亡くなって、その事にようやく気付いたんだ。

 

 

『……その貴女の母親からの願いです。貴女に健康な身体を持って、人生を楽しんで欲しい。皆が経験しているような、友達を作って、恋愛をして結婚をして……そんな人生を味わってほしいと』

 

「えっ?」

 

『貴女の母は、本来まだ生きられるはずだった。でもこちらの手違いで、死んでしまったので、違う世界ですぐに生き返らせる事が出来ると伝えました。

 でも、その時に言ったのです。自分はいいから、その権利を貴女に譲ってくれと。娘は病気で長く生きられないからと』

 

「そんな!」

 

『貴女の母は、最期まで貴女のことを心配していたのよ』

 

 

 涙が溢れてどうしようもなかった。

 死んでからもずっと私のことを心配してくれていた母。

 どうしたら、その恩に報いる事が出来るのだろう。

 母に会いたい。

 

『では、母はどうなったしまったのですか? その権利を私に譲ったら、母は!?』

 

 必死に聞く私に、その存在は優しく声を掛ける。

 

 

『大丈夫です。その尊い霊魂は神々のいる国へと導かれ、そこで霊魂をゆっくり休めてから、また次の転生の準備に入りますから』

 

 

 次の転生。

 良かった。お母さん、ちゃんと天国に行って、ゆっくり休めているんだね。

 

 安心した私にまた、その存在は聞いてきた。

 

 

『恵美。貴女は貴女の母の代わりに、すぐに別の世界に転生出来ます。受け入れますか?』

 

 母からの最後の贈り物。

 無駄になんか出来ない。

 

「はい。受け入れます」

 

『では、その世界に行くのに希望はありますか? 健康な身体というのは、貴女の母からの希望なので、それ以外で』

 

 その言葉に考える。

 健康以外かぁ。なんだろ? 賢い頭脳とお金持ちとかかな?

 

「その世界で困らない程度の能力があればいいかな? あ、お金持ちの家の子供であればもっといいかも!」

 

 ちょっと厚かましかったかしら?

 不安になってきた私に、その存在は答える。

 

『分かりました。その世界で困らない程の能力を授けます。衣食住にも困らない家庭の子供に転生させましょう』

 

 やった! 言ってみるもんだわ。

 

「ありがとうございます! えと、貴方様の事はどうお呼びしたら?」

 

『わたしは女神ディオーネ。貴女のこれからを見守っていますよ』

 

 

 女神ディオーネ様がそう言った途端、私はまた意識が遠のいた。

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