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生と死の循環

グロ描写が少々あります。

 --ここで終わりか。



 柔らかな土草に、男は最後の時を迎えようとしていた。

 男は振り返る。


 ある者は紅色に染まった自分の体に絶叫し。

 またある者は冷たい岩壁に横たわり、その瞳からはやがて命の輝きが失われようとしていた。


 そして男は目の前に佇む影を見た。

 その影は炎のように赤く、歴戦の猛者のような体格であり、まさに大鬼(オーガ)と呼ぶに相応しい姿であった。その手には金棒のようなものが握られている。まもなくしてそれが男を標的とし、振り上げられる。


--恥の多い生涯を送ってきた。



 男は走馬灯のように今までの生きざまをふり返った。

 

 外の世界に憧れ、村を出た事。


 自らの傲慢さと強さを糧に必死で生きてきた事。


 人を愛した事。


 愛したものを失った時の事。.........


 男の記憶には後悔の記憶しか残っていなかった。


 時として一瞬、だがその一瞬であっても男には残り少ない貴重な時間であり、自らの過ちを悔いた瞬間でもあった。


 だが、やがてその時間が終わりを告げ男の腹部に鈍い音と共に計り知れない衝撃が舞い込む。

 男の肉体は宙に投げられ、冷たい岩壁に衝突した。

 その肉体は腹部付近の肉がえぐり取られ、臓器があふれ出し、夥しい量の血液が体を染め上げた。


 助かる状態ではなかった。


--熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い。


 奇跡的に意識を保てている状況で男は困惑した。


--神よ、私は何故生きている?


 その困惑はやがて絶望に豹変し、男の体を恐怖で蝕んだ。

男は縋りつくように自らが身に着けていた銀のロケットを開けた。写真には男と一人の女性、男はそれを見て安堵の表情を浮かべ、数滴の涙を流した。涙はやがて頬の血と混ざり、男の思いを物語った。


--また会うことが出来るとするのならば、必ずその手を離さない。


 死へのもどかしさを感じつつ、男は死に敗北した。

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