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第1話:記憶喪失
目が覚めると、彼はベッドに寝ていた。
フカフカのベッドだ。
彼はゆっくり身体を起こし、辺りを見渡す。
どうやらここは宿のようだ。
木製の壁に囲まれた広い部屋で、洗面台や机がある。
しかし、彼はこんな場所なんか知らない。
それ以前に自分が何者かもわからない。
記憶喪失だ。
そう自覚したが、彼は冷静に思い出せることを整理しだした。
名前はソル。
歳は十五歳。
誕生日は12月17日。
今思い出せるのはこの三つ。
あと、自分が男だということもわかったが、それは 思い出す というより 理解 した。
取り敢えず、現状の理解は出来た。
次は何しよう、と考えていると、
ギィィ…
と木製の扉が開く音がした。
誰かが入ってきたのだ。
「!」
ソルは咄嗟にベッドから飛び降り、姿勢を低くして身構えた。