婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
<プロローグ>
"まだ、戦乱の世界だった昔、二人の王が居ました。
ダグラス王は野心家で策略家、
フィンセント王は商才に長け、心優しく天才発明家でした。
二人は手を結び世界の覇権を狙しました。
一時期大陸を席巻した二人の王は、王国を立ち上げた時こう取り決めをしました。
※王の堕落を防ぐ為、王にはお互いの王家が交互に付くこととする。
※直径の王家はお互いに婚姻は結ばない(交互に王位継承する意味がなくなる為)
※何事も互いの合意の下に政治を行うこと。
それから600年たった今、大陸の半分の領土とはなったが大陸一番を誇る大国であったけれど、その取り決めが全て損なわれてしましました。
3代前から王はダグラス王の家系に受け継がれ、その代わりフィンセント王は当初半分だった領地を国の3/4を王位継承を譲る代わりに確保し、国の軍隊の殆どを掌握していました。
そして、現王(ダグラス王)の王太子とフィンセント家の長女の婚約、
さらに、フィンセント家の承諾なしに、税金の増額など、ことごとく約束を違えたダグラス王でした。
忘れ去られたもう一つの約束事
※どちらかがこの約束を破った時、国を<滅ぼす>
そして国は○○○・・・・”
3代前のロバート・ダグラス王
『のう、リチャード・フィンセント大公、発明が楽しくて仕方がないようじゃの?なんならこのまま次の王も我がダグラス家が受け持とうではないか?発明に専念できるぞ』
『・・・・・・・・うーん・・・・じゃあ、そっちの領土半分ちょうだい!』
『はっ半分じゃと!?』
『大丈夫、税金はちゃんと納めるからさ・・・そうしてくれたら王はダグラス家がずっとしていいよ、僕の
フィンセント家は肩書きは公爵にでもしといてよ、筆頭貴族でいいよ』
『・・・・・分った・・・・』
そして3/4の領土を得たフィンセント公爵は領地を囲むように魔法で隠された高い壁が作り始めたのだった。
====================
「エリザベス、おまえとの婚約を破棄する」
そう言ったのはこの国の第一王子の、ウィリアム・ダグラスだった。
私は、エリザベス・フィンセント公爵令嬢、筆頭貴族の第一令嬢、つまりは王族と同等に位が高い家の長女である。長い金髪をポニーテールし縦ロールに巻かれた髪、青く鋭い目、一応綺麗な部類に入ると思っている。
それに第一王子の婚約者でもある。
今、破棄されてしまったが。
此処は王立学園、卒業セレモニーの真っ最中だ。
ウィリアム・ダグラスの一言で、それまでにぎわっていた会場が静まりかえっていた。
この王子は私が婚約した幼いころから、命を狙われていたことなど、気にもしない。
犯人を見つけようともしてくれない、王様も取り合ってくれない、犯人が分かっているからだろう。
脳裏に浮かぶのは、私を狙った暗殺者から私を庇って死んだ護衛の姿。
泣き叫び、自暴自棄になり自殺も考えた、自分のせいで誰かが死んだ、そのショックは計り知れないものだった。その時私の仲で何かが変わった気がする。
何度、王に婚約破棄を言ったか、父は王に何度も言ってくれたが、聞き入れてはもらえない・・・それ処か、終いには呪いの指輪まで嵌められ、逃れなくなった。
父は大暴れしたが、国一番の強者と言われた父だったが、軍部の皆に抑えられ惨事は免れた、事実上私は王家に人質になったようなものだった。
パリン!
今その呪いの指輪の石が割れた。
これで婚約による縛りが無くなった!
ああ、そうだ王子も成人した王族、その言葉は呪いを解くことが出来るのか。
「ミシェルをいじめて、暗殺まで企てたろう?お前を国外追放とする」
パリン!
もう一つの呪いの指輪、私の行動を制限する、王都内から出れなくする呪いの指輪の石が割れた。
ああぁ・・・これで私は自由だ。
「・・・婚約破棄、お受けいたします。国外追放?罪状は身に覚え有りませんが、受け入れましょう、では私はこれで、失礼しますわ」
此処は学園の講堂、高等部の生徒が集う卒業セレモニーの会場、大勢の目のある場所での茶番、もう逃れようがない周知の事実。
私は踵を返してその場を離れようとした。
「ちょっと待て!ミシェルに謝れ」
ウィリアム・ダグラスが叫ぶ
「?ミシェル?誰ですかそれ」
立ち止まり振り返りながら言うと
「酷い」
そう言って、うるうると可愛い顔をして媚びるように王子に縋りつく女
「ああ、そこの庶民ですか・・・それは貴族を愚弄する馬鹿を認めろとおっしゃってますの?」
「お前はミシェルに****やOOOOOなど嫌がらせをしていただろう?!」
ミシェルと言う庶民の女がされた嫌がらせなどをつらつらと述べる王子。
「王子殿下?そんな小さい嫌がらせを私がしたと?」
私は馬鹿にするように笑って答えた
「お前が他の者にでも言ってやらせたんだろう?」
パシン!
私の持っている鉄製の扇の音が食堂に響いた。
周辺に殺気を巡らせた。
王子の横の庶民の女は冷や汗を流しながら震えだす。
「私が本気でその女を潰すなら、此処に存在出来ている訳がないでしょう?」
「どういう意味だ」
「我が公爵家に歯向かう者を五体満足で今いられるわけがないでしょう?高位貴族を愚弄するものは処刑ですのよ?お忘れになりまして?」
「それは庶民が高位貴族に・・・」
「その娘は庶民ですわ、いくら魔力があっても、聖女候補でも庶民は庶民、婚約者である王子が懇意にされているから無礼を父や公安に言わずにいましたのに・・・・ま、もう私には関係ないですけど、せいぜい庶民になっても頑張ってくださいね」
「?庶民になっても?」
「その者が貴族になることはありません、筆頭貴族の私を法廷を通さずに断罪したことは罪です、王子も処罰の対象となります、多分廃嫡の上庶民に格下げでしょうね、頑張って!」
「え?そんな設定しらない」
そうぼそっと言う庶民の女。
「そんな訳あるか!お前がミシェルをいじめるから」
「いじめてませんわ、貴族のしきたりを言っただけです、死にたいんですか?と忠告もしました」
「そう、そうやって脅してきたんです。」
「真実なんですけど・・・・」
(この女は、高位貴族に詐欺を仕掛けた商人が一族みな処刑されたことを知らないのかしら?頑固な貴族社会のこの国では良くあることなのだけど・・・)
『お嬢様、公爵に連絡付きました、直ぐに行動するそうです』
「だれだ!お前は」
私の後ろにいきなり現れた黒づくめの男にビビる王子
「私の護衛ですわ、そうそ法廷では暗部の護衛の証言は認められませんが、此処で証言してもらいましょうか?私がやって無いって、何なら、王子の護衛にも、その女の監視役にも証言してもらいましょうか?」
「え?監視・・・・」
「あたりまえでしょう?王子に接触してくる身元のあまりよろしくない女の事を監視しない訳がないじゃないですか」
「え?うそ・・・まさか・・・ずっと?」
「護衛なんてしらないぞ」
「・・・馬鹿ですか?王子の護衛は12人、常に横に暗部についてましてよ当たり前でしょう?」
「え?そんなに?」
周りをきょろきょろする王子、周りには取り巻き貴族令息しかいない、
常に居る取り巻き・・・その意味を知らない王子だった。
「はぁ~・・・・王宮の会合に出てないんですか?そこで定期的に護衛代表の紹介をされますのに・・・・成人(16歳以上)されてますのに公務はなされて無いのですか?」
「出席する様に言われているが、行ったことは無い・・・」
「職務怠慢、廃嫡の理由の一つにになりますね」
『お嬢様これを』
護衛が書類を渡してきた。
「私の気が付く護衛が、先ほど言った王子の護衛とその女の監視役の言葉をまとめてくれましたわ」
「か・・・監視役?」
「何か困ることでも?けっこうべったり張りついていたって聞いてますわ」
そして、エリザベスは庶民の女の自作自演、他の生徒からの嫌がらせは、殆どがやられたからやり返したという物ばかり、また他の貴族令息にも粉かけて居る事など言い連ねた
「・・・・・うそだ、お前の捏造だろう」
「それぞれ、偽名ですが、護衛の名前も文章の下に書いてありますわ、法廷では使えませんが、数人の護衛の証言ですわ」
王子に書類を渡す
「べつによろしくてよ信じなくても、自分で自分の目でしかりと検証されてはいかが?私に対する無礼のように先走って、もう後戻りが出来なくなる前にね」
(本当におばかでしたのね・・・此処での様子はもう父や王に伝わっているでしょうね、暗部の方々は優秀ですから・・・)
「姉上、お迎えに来ました、もうよろしいか?」
そこに4つ下14歳の弟が迎えに来た、
(念話でこの学校の中等部の卒業セレモニーに参加していた弟に連絡をしたから直ぐ来てくれたわね、さっさと弟のルーベルトとこの場を離れましょう・・・)
「では皆さん、ごきげんよう、聡明な皆さんでしたらこの後どうなるかお分かりでしょう?早急に家に帰られた方がよろしいかと思いますわよ」
そう言って弟の横に並ぶ、食堂はざわつく
「ルーベルト?、皆は?」
「軍隊の者は全員退職届提出済です、商会も3時間以内に王都から引き上げる準備が完了するそうです、父上達もは、もう準備万端、姉上を待ってますよ」
『軍隊?商会?』
高位の貴族なら知っている、王都を牛耳っている者の正体を、下位の貴族は周りの様子におどおどしている。
元々、王位は現王の家系とエリザベスの家系とで交互に王を輩出していたことは今や若い世代は知らない、3代前から続けて現王の家系が王となっているが、もともとエリザベスの家系は臣下ではない、なのになぜか現王はエリザベスの家を思い通りに動かそうと、呪いまでかけた、しかしそれも愚息のおかげで”ちゃら”だ!
王都に居る軍隊や国境に展開している警備兵の三分の二はエリザベスの領地の者だ、フィンセント公爵家に忠誠を誓っているが現王に忠誠を誓っているものは少ない。
護衛が死んでから、エリザベスはこの国を滅ぼすことを誓っていた。
自分の保身のために、自分たちにし向けられるはずの敵に対して、エリザベスをおとりにして、最近はさらに逃げられないように呪いまでかけた。
婚約者を婚約者とも思わず、単なる王家存続の為の使える駒と考え、自分の思うようになると勘違いしている王家の人間達。
この裕福な国が永遠に続くと、フィンセント公爵家は裏切らないと勘違いしている王家よりの貴族たち。
馬車が待つ学園入り口に向かうエリザベス達
「ルーベルト!皆にA地点への合流を示唆しておいてくれた?魔法陣は直径300ルカル(メートル)展開可能だから、王都の軍隊は一気に運べるわよ」
「連絡魔道具(携帯電話)で指示は済んでおります、しかし姉上、凄い魔力量ですね、姉上の能力がばれなくて本当に良かったです・・・」
「ふふふ、王室よりの方々は馬鹿だからね、それに闇属性持ちだってだけで光属性持ちでも聖女認定しない教会って・・・称号に聖女って書いてるんだけどね・・・・良いわよ!おかげで要らぬ仕事せずに済んだから」
「称号見ることの出来る魔導師が居ないってのも教会としてどうかと思いますけどね・・・」
「そうそ、お父様は決意なさったかしら?」
「はい、領地に皆戻ったら宣言なさるそうです。」
「そうよかった、工事はもう済んでいるのよね?」
「はい、もう鉄道は全て運行しております」
学園入り口に待機している馬車に乗りこむ
「馬車も乗り納めかもね、自動車も教習済んでるんでしょう?」
「ええ、商人と軍部の者優先にまわしております。」
「辺境の街に向かう飛行船の定期便も運行開始しました、龍人の皆さんのおかげで魔物からの攻撃も防げました」
「龍人族に空の護衛をお願いして良かったわね、給料はずまなきゃ」
二人を乗せた馬車は何事も無く公爵家に向かう。
二人は領地の様子を語り合っていた。
その内容は他の者たちには何のことだか解らなかったであろう・・・
そうこうしている間に公爵家に着くと、休む間も無く旅装束に着替えると館のメイド含め全員で王都郊外に向かう、そこには数千人の軍隊が待ち構えていた。
「此れで、全員?」
そう聞く、エリザベス
「王都に居る軍属は全てです。」
「じゃあぁ送るね」
魔法陣から光が上がると数千いた軍隊と侯爵家に居たものの姿が消えた。
残っているのは、エリザベスのみである。
「・・・無事着いたみたいね」
ぼそっとエリザベスが言ううと
『まてー!』
城門の方から数十人の騎馬隊がやっくる、その向こうに軍人以外の公爵領ゆかりの者と商会の馬車が数台見えた。
「まずいわね、ちょっと拘束させてもらおうかしら」
騎馬の前に蔦がいきなり生えて来て、行く手を塞いだ、スピードが落ちた騎馬の地面から新たな蔦が現れ騎馬を拘束した。
『うわっ!動けない!』
拘束された騎馬の横を公爵領ゆかりの者と商会の馬車が通り過ぎる
『!!おおいっ!お前らも待て!行くな!反逆罪になるぞ!』
無視してエリザベスの所に向かう馬車
「忘れ物は無い?」
魔法陣の中に入って行く馬車に声を掛ける
「大丈夫ですオーナー!置いて来たのはガラクタ!ゴミだけです」
「忘れ物あったら言ってすぐ取ってきてあげる!私一人なら何処にでも移転できるからね」
「はい!」
「未練は無いわね?」
「期待と好奇心で一杯ですよ!」
商会の人たちは未来に夢を描いて居る様だった、目がきらきらしている
「裏切らないよ!きっと楽しい商売が出来る!」
「はい!」
魔法陣が輝くと馬車は消えた
「よし!移転完璧、<魔法陣消去>」
魔法陣の光が上空に上って消えた
蔦をどうにか切り刻んで、息を切らせながら馬を置いて来た騎士がエリザベスの前まで来た。
「エリザベス様、今ならまだ間に合います、王宮にお越しになり王に謝罪を」
「?なんの謝罪?私悪いことしてないわ、
皆故郷に帰っただけだし、王子から婚約破棄と国外追放されたので、
もうこの国の人間でも無い、その証拠に王から渡された、宝玉は割れたわ!」
石の無い指輪を見せる
「大人しく来ていただけないのなら拘束させていただきます!」
「貴方達では、私を拘束なんて無理よ、力の差も分からない程低能なの?」
「隊長、無理です敵うわけないじゃないですか、あの怒気が解らないんですか?」
「部下の方が優秀みたいね・・・あまりにも差があり過ぎると気が付かない事があるらしいわよ!くすっ」
「!なんだと!馬鹿にしやがって、」
「だめです!・・・!え?・・・・金色の冒険者プレート?緑の縁取りって!うそだろ」
エリザベスのネックレス、冒険者プレートの色・・・それは世界に3人しかいない金に緑の縁取りのプレート、最高級の冒険者の証だった。
無謀にもエリザベスに殴りかかる隊長らしき男、
するっと避けてのばされた腕を掴むと、くるんと男を背負い投げ、地面にたたきつけるエリザベス。
ドゴッ!
人間が叩きつけられるときに聞くはずのない音がした、
直径2メートルほどのヘコミが男の周りに出来ていた。
「おっと!手加減足りなかったか?」
呆然としている部下達、泡をふいて気絶している隊長、肋骨数本は折れているだろう・・・
「エリザベス様はご令嬢のはずでは・・・」
「まだ、指輪渡されて無い幼少期にうろうろしてたのよ!スタビードも防いだことあるのよ!感謝してもらいたいくらいだわ!名前変えてたから、解らなかったろうけど!」
「小さな黒の聖女?」
「ああ、そんな名前で呼ばれてたわね、」
「スタンビードで傷ついた兵士数百人を一気に治療、闇魔術でS級モンスターを撃破、私も騎士なる前は冒険者してましたから」
「金髪なのに何故黒?って思ったものよ」
「とりあえず、私を拘束は無理だし、国外追放だから、私はもう行くね」
「どちらへ?」
「一度領土に顔を出してから隣国フェルナンデ皇国に行こうかしら、あちらの王子に遊びに来いって言われてたし、世界樹とかエルフの里とかもまた行きたいわね、」
「せ・世界樹!?え?世界樹に辿り着けるのは聖女とエルフだけって」
「え?さっき私こと聖女って知ってたのに驚く?そこ」
「え?あれは二つ名じゃ・・・」
「鑑定持ちに称号見える奴が居てねしっかり見られて、それからそんな二つ名が、教会に邪険にされた聖女で”黒の聖女”って言われたのよね」
「じゃね!隊長の怪我は治しとくけど、意識は戻さないから、そのまま連れて帰ってね」
そう言うとエリザベスの周りに黒い霧が立ち込める
「闇魔法!?」
「異界を通ったほうが魔力少なくて済むの、自分にしか仕えないけどね・・・魔力結構使ったからね」
手を振りながらエリザベスが闇の中に消えていった。
「・・・・・・」
立ち尽くす兵士たち、エリザベスが消えると蔦も消えた為、隊長を馬に荷物のように乗せると、皆無言で王都に帰っていった。
それからは悲惨だった、軍隊は壊滅、商売は成り立たない(物資が入ってこない)、高位貴族たちは王都を捨てて領地に引っ込み軍部を拡張、下位貴族達は狭い領地を捨てて隣国に亡命、王を守る者は居なくなった。
1年後、少ない残った軍隊を率いて王子はフィンセント公爵領、
では無くフィンセント公国の国境の砦の前にいた。
領地に帰ったエリザベスの父は独立宣言をしたのだ。
隣国は快く承諾、貿易や人間の交流が盛んに行われ始め、隣国は潤い始めていた。
「何なんだ!この高い壁は」
「フィンセント公国の、魔物の森以外の国境ぞい全てがこの壁になっておりました。だから、攻撃など不可能だと何度も言いましたよね」
参謀になった、元取り巻きの子爵3男、ルーファスが言う、逃げ出したかったが、エリザベスにしたのと同じ拘束魔具を付けられていた、意見は言えるが逆らえないのである。
ずっと王子の護衛として王子のそばに使えさせられていた。
「入国にはかなり厳しいらしいですよ、でも入国できたらもう国外に出たくなくなるそうです、幸せすぎて・・・・」
「どうしてこんなことに」
「それは、私が聞きたい、婚約破棄なんて聞いてませんでした、側室にするものとばかり・・・彼女を取り込むための婚約だったのに、国を保っていく為の!そんなことも知らなかったなんて・・・本当に私は”選択を間違った”」
「お前、それもう口癖だな・・・・」
ルーファスは、殆ど王子を敬ったりしていない、家族はさっさと亡命して一人王都に残されてふてくされていたのである。
指輪を貰った時は王子に本当に使えるつもりで、誇らしいほどだったのに・・・。
実際は騙されたと思っている。
「好きだった女が処刑されたのに、結構平気でしたね」
「それが、あんなに好きだったのに彼女が死んだら気が失せたというか、良く分らないが悲しみが飛んでしまっていたよ。
あの女のせいで、王家から侯爵に、・・・家臣になってしまったが、これで武勲を挙げれば王家に復帰させてくれると父に言われた・・・んだがな・・・・無理だな・・・・拠点に戻ろうか」
王子はルーファスへの事はかなり信頼して居る、ルーファスがどう思っているかは気がつかない、殆ど諦めて、いずれは自分は王子の盾となって死ぬんだろうと思っていた。
そういう呪いの指輪だった。
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ミシェルは国家反逆罪、貴族侮辱罪、偽証罪、詐欺罪、殺人未遂で処刑されていた。
卒業セレモニーの後直ぐに王子とミシェルは残った近衛隊に拘束された。
フィンセント公爵令嬢を愚弄して反旗を翻えさせたとして反逆罪に、調べるとエリザベスがしたという嫌がらせは捏造と解り偽証罪、暗殺者を雇って他の令嬢の命を狙ったことが解り殺人未遂罪、
すこしやりすぎたミシェルだった。
ミシェルの処刑の日、荷車に乗せられ処刑台に向かう彼女の体はカタカタと震えが止まらないでいた。
民衆から、石を投げられ罵倒が飛び交う。
『痛い!・・・私が処刑?なんで?王妃でしょう?どうして?王道ルート行ったはずなのになんで!うそよー!』
ぶつぶつと訳の分らないことと叫んで、ギロチンの露と消えた。
王子は騙されたとして、廃嫡降家で済んだがしばらくは牢屋の中で反省させられていた。
王子は庶民にはならなかったが、一代貴族で、領地なしなので軍部に席を置いて収入を得るようになった、
暮らしはずいぶんと変わったが、あまり気落ちしていない・・・すこぶるマイペースで順応力が高かった。
「今日は葡萄パン作ってきたぞ!」
軍部の詰め所に自作のパンを持ってくる元王子だった。
(私がこんなに薄情な人間だと思わなかった・・・でもなんであんな女が好きだったんだろう?解らない)
ミシェルを思い出して考えていた。
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拠点に着くとフィンセント公国の使者が来た。
「こちらへはどの様な御用向きでいらしたので?」
使者に聞かれどう答えようかと困るウィリアム
「ま、それはどうでも良いのですが・・・」
(いいのか?)
「王が是非、皆さんにわが国を見学していってもらいたいとおっしゃいまして、武装解除していただければ直ぐにでもご案内いたします」
「?なにを!?」
王子はその言葉に畏怖を感じた。
<がちゃがちゃ>
何の音かと後ろを振り返ると、兵士たちが鎧と剣を地面に次々に置いていく。
「おっおい!お前ら!指示は出してないぞ!」
「ウィリアム様・・・目の前の光景を見て武装解除以外ありますか?」
「ルーファス・・・」
目の前・・・使者の後ろの鉄の乗り物、どうやって動いているのか?馬も引き手も居ない
そして、その後ろからぞろぞろと出てきた兵士らしき者達、緑の服を着て、ウィリアムが見た事も無い武器を手に持っている。
「あの武器は見たことがあります、フィンセント公爵が試作品として我々護衛や騎士に見せられた、遠くの標的を寸分たがわず命中させ、硬いオークキングの肉を貫通することの出来る武器です、それを全員が持ってます・・・・我々の鎧なども貫通してしまいますよ・・・」
そう顔を青くして話すルーファス
そうして、ウィリアム王子とルーファス他、兵士達は鉄の乗り物に乗って壁の中に入っていった。
壁の中・・・・そこには広大な麦畑が広がっていた。
「これほど広大な畑を管理するのにどれだけの人出が居るのだろう・・・」
そうルーファスが言ううと
「人手はほとんどかかりませんよ」
そう公国の使者、ギルバスと名乗る男が言う。
元々領地のフィンセント公爵家の執事だったらしい、
今は外交大臣だそうだ。
「機械を使います、楽な仕事ではありませんが大勢の人の手は必要ありません、一区画2人から多くても10人くらいで種まきから草刈、肥料、水の管理、刈取りもその人数でやります」
「機械!?」
「あそこに雑草を刈る機械を動かしてますね」
遠くに大きな車輪のついた赤い機械が動いていた
「大きい」
「人が乗ってる?」
壁を抜けてどれだけ経ったか、鉄の車は早かった馬よりも確実に早い。
整備された道を猛スピードで走っていた。
「王子・・・向こうにまた壁が」
「あの壁からフィンセント公国の王都となります。今までは農業と工場地域でこれからは商業区になります。」
「壁の中に農地?さらに内側に壁?」
「有事の際に二重の防壁になります。農地も壁の中なのは魔物の被害を防ぐためです。」
その壁の中も放射状に線路が引かれており、線路は一段高くなっていた、それも防壁になっているのだと言う。
その内側の壁を抜けると様子は一変した
「なんだあの絵は?絵が動いているそれになんて高い建物だ」
建物の壁に動く絵があった。
「あれはビジョンという電気で動く新しく開発された物です、小さい物が殆どの家に有り、情報収集や娯楽に使われてます」
他に、自動車、列車、動く道路、エレベーター、携帯電話
見たことも無い者が溢れていた。
魔道具らしき物もあったが、魔道具で無い物もある、どうやって動かしてるのか分からなかった。
「なんなんだ・・・この技術の差は」
おどろきすぎて口が閉まらない王子とルーファスだった。
お金も腕輪に情報が入っている物を渡され、王子とルーファス、幹部兵士達は他の兵士達と別行動になった。
この技術の差、それは転生者を集め研究開発させたからであった。
エリザベスがこれを思いついたのは、記憶に前世が加わった5歳の時、
目の前で殺された仲の良かった護衛の死を目の前に、気絶して高熱を出した後だった。
気絶するとき、叫んでいたと思う、
『やだ!置いてかないで!一人にしないで!』
日本語で叫んでいたらしい、それをメイドや従者が聞いていた。
『日本語!』
言ったのは、何人もの公爵家で働いていた者達だった
目覚めると、その者達が自分は前世では技術者だった、列車の設計をしていた。
音楽家だった、パイロットだったとカミングアウト。
銃が好きで構造の勉強をしていた者、学者や研究者も・・・
「我が家の雇い人の7割が転生者って向こうの人間、どれだけ死んだのよ!?」
「地面が揺れたな」
「山が崩れたわ」
「飛行機が落ちた」
「海外旅行中に爆弾テロに巻き込まれた」
しかし、死んだ年代や場所、理由は決して一緒ではなかった。
エリザベスの最後の記憶は、交差点に突っこんで来た暴走車だった、一緒に歩いて居た妹は多分助かったと思う。妹を庇って引かれたから・・・エリザベスの前世は経済学部の大学4年生だった。
両親に捨てられ、叔父の家に引き取られ肩身の狭い思いをしていた二人、奨学金で大学に通い卒業後は独立して妹と共に暮らそうと思っていた、6つ下の妹の面倒を見ようと思っていたのに・・・・
専門家が多かった転生者、工業に芸術に文化に大きく変化をもたらした
世界が変わった。
王子は工場や町の様子を目を輝かしている、そして此処に居たいと思うようになっていた。
「面白い・・・惣菜パン!?・・・私も作りたい」
そして、ダグラス王の元に派遣された兵士達、王子も含めだれも帰ってこなかった。
ウィリアム王子の父、フェルナンド・ダグラス王の元に怪しい男が訪問していた。
『令嬢を盾にするとは、たいした王だな、さっさと王位を私に渡せばよかったものを』
「ジーン・・・我が弟よ、お前はもう家臣になってる、跡継ぎはウィリアムだ」
『あの馬鹿にか?あいつも家臣にしたんじゃないのか?・・・・それと、税をまた増やしたらしいな』
「遠征費用が必要だったからな・・・遠征から戻ったら、あれの地位は元に戻す、成果は期待はしていない・・・ルーファスが居るからな、あれは死なない」
『まあ・・・(この国は終わりだから)もういいか・・・』
「?ジーン?」
『私は領地に引き込まらせてもらいますよ、では兄上・・・ごきげんよう』
弟が王の部屋のドアを閉めると、大きく溜め息を吐く王
「ふっうー・・・・昔から得体の知れない奴だ、あの威圧どうにかならんかね・・・しかしウィリアム・・・遅いな」
王の弟が訪問、帰ったことは王都中に知れ渡っていた、もうそれほど多くない住民、そして王宮に居るメイドや従者がひそひそ、ぼそぼそ・・・そして・・・・
次の日の朝
「・・・うーん・・・?」
王は自室で目覚める、しかし何かが可笑しかった
「誰も起こしに来ない?だいぶ日が昇って居る様なのに・・・?」
枕元のベルを鳴らす・・・・誰も来ない・・・
「?どういううことだ!?」
どうにか自分で着替えると部屋の外に出た
「警備の者は?この静けさは何だ!?」
何処がどうと言ううことは無い、綺麗に清掃はされていた廊下、少ない人数での掃除はさぞかし大変だろう・・・などと思う王では無かった、それが当たり前だったから・・・
王は隣の王妃の部屋に向かった
コンコン
普段は従者か警備の者がノックをして中のメイドに取り次ぎをしてもらうが、居ないので自分でノックをした・・・反応が無い・・・ドアを開けて中に入る。
誰も居なかった
「どういう事だ?・・・マーガレット!居ないのか?」
部屋を回って探す王・・・メイド部屋、クロ-ゼット、浴室・・・そして書斎
「手紙?」
”フェルナンド・ダグラス様
この!愚王!おおおばかやろう!死ね!
離婚だ離婚!国を滅ぼしやがって!
実家に帰ります!絶対に迎えに来ないで!来るなよ!入れないよ!
王女と、侍女侍従は連れて行きます。
のたれ死ね!このえろじじい!”
「・・・・・・」
彼女には好意を持っていた婚約者がいたが、隣国の王女である彼女のその美貌に目を奪われた、当時王太子だったフェルナンド・ダグラスが無理矢理・・・略奪婚だった。
歳の差18歳、先の王妃が病気で亡くなってすぐの事だった、当時王妃は15歳。
そのことを20年ずっと根に持っていた王妃。
呆然と手紙を眺めていた王
グゥ~
お腹が鳴ったので我に返り、そこにあったベルを鳴らす・・・しかしやはり誰も来ない
そう、王宮に王位以外誰も居なかった、唯一残っていた幹部の宰相もメイドも護衛も、そして料理人も
食物庫にはわずかに食料は残っていたが、料理の出来ない王にはどうすることも出来ない。
そして、王都の街の方から
キエェー
魔物のの声が
「!王都の結界が消えている・・・・」
魔導師も居なくなっていた。
もぬけの空になっている魔導師の部屋
結界用の魔石は、魔力の供給がなされないので、色を失っていた
「・・・・どうすれば・・・」
町にも人が誰も居なくなっていた・・・住民一人だけになった王都がそこにあった。
綺麗に掃除されたいた廊下は魔物の糞だらけ、どろだらけの壁、壊れた城壁・・・魔物の巣になっている民家。
異臭と、魔物の小競り合いで壊され続ける悲惨な元王都。
王宮の王の壊れた部屋の奥に、腹をくちぎられただろう王の死体が、だれに埋葬されることなくあった。
「夜逃げ?」
「はい、準備はしていたんでしょう残っていた人間、王宮と町中全員です」
密偵が、フィンセント公国に戻り報告をしていた
「ジーン殿か・・・・」
「殆どの王宮の者がジーン殿の領地に向かっているのを確認しております。王都に残っていた民衆の殆どが火事場泥棒達だったので、逃げるのは早かったですね。」
「娘を散々狙っておいて・・・・」
「攻撃を仕掛けるのでしたら私も参加させてください、兄の敵討ちとうございます」
あの死んだ護衛の弟の密偵の男が言う
「王は見捨ててきました、護衛は任務に含まれてませんので」
「・・・構わん・・・王子は?どうしてる?」
「王子の監視の者の報告ですと、パン屋の店主に気に居られて楽しく働いているようです」
「王の事、伝えてくれ、その反応によって今後を決める」
「かしこまりました」
王子は涙を浮かべたが、それ以上の反応は無かった、見捨てたと素直に言った密偵のことを、怒るでもなく罵るでも無かった。
「私は捕らえられるのか?苦しめた国民に何と詫びればよいのだろうか・・・遠征の費用よくあったなと
思っていたら、少ない国民から搾取していたなんて・・・知らなかった・・・というのも罪だな・・・パンを作るのが料理が好きだった、でもやらしてもらえなかった、家臣になって自由になって好きな料理が出来るようになったと浮かれていた・・・」
「申し訳ない・・・」
王は王子を名前と身分をはく奪してそのままパン屋に置いた、その後支店を増やし大手企業とし、賞味期限間近の物を無料で孤児院や貧しい人に配ったり、長持ちするが柔らかい災害食のパンの開発を手掛けたり、社会にも貢献する企業となった、王子は発案開発したが、ずっと研究室室長のまま、企業の頂点に立つことは無かった。その横に常に居るルーファス、呪いの指輪は王が死ぬより前に解除されていた、呪いの指輪を作った魔導師が解いてくれたのだ、その後もルーファスは王子の友として、一緒に過ごしたのだった。
「リアムおじさん!うさぎパン美味しい」
ウィリアム改め”リアム・ベリドット”となった王子はルーファスの家に訪問していた。
ルーファスの一人娘リリィがお土産の動物パンを美味しそうに頬張っている。
元王子は独身のままだった。
頭をなでると嬉しそうにしているリリィ
「リリィ、ちゃんとこっちに座って食べなさい」
ルーファスの奥さんが言う
「はーい」
と母親の元に行くリリィを微笑ましくみているリアム
「エリザベスの結婚が決まったらしいな」
「リアム・・・不敬罪になるぞ、呼び捨ては」
「そうだな・・・フェルナンデ皇国の第一王子だっけ?」
「長い間アプローチしていたみたいだな、第一王子なのに縁談断ってたみたいだし」
「俺と婚約中も、手紙貰ってたらしい、当時のエリザベスの方は眼中になかったらしいが・・・」
紅茶を飲みながらため息をつく
「未練でもあるのか?」
「訳ないだろう・・・いや、あんなおっかない女の何処が良いのかと」
紅茶の波紋を眺めながら
「ジーン公爵の領地に攻め入り滅ぼしたエリザベス、容赦なくジーンの首を切り落としたらしいぞ」
そうリアムが言う
「散々付きまとわれ命を狙ってたからな」
「父に、エリザベスを守ってくれるように頼んだ時、可笑しいと思ったのに見ぬふりをした、冷たく何時も叱責するエリザベスに嫌気がさしていたから、今度は私が狙われるぞと言われて黙ってしまった・・・私はエリザベスの影に隠れてんだ・・・利用した・・・・往復ビンタで済んでよかったのかな・・・!?」
「・・・ビックリしたよ、エリザベスが宮殿に戻ってる話をしたら直ぐに謝りに行くって飛び出していくから」
「3日寝込んだけどな・・・でも殺されなかった・・・エリザベスの幸せを願うよ、おこがましいと言われそうだが・・・」
「あのポンポンに腫れあがった顔は私でも怖かったよ・・・」
無敵のエリザベスは、フェルナンデ皇国の第一王子の猛アピールに陥落していた。
「反則よ!さっきまでの凛々しい王子は何処に?きらきら王子スマイル!顔は好みなんだから!ワンコみたいで可愛い!年上なんだけど可愛いじゃないの!」
王子はメイドなど周りの人間にリサーチ、エリザベスの好み情報を取得していた。
可愛い笑顔と従順年下男の子、プライド高い男は嫌い、凛々しさと可愛さのギャップがあればなおよし!
と側仕えのメイドから数年かけてやっと情報を得ることが出来た。
歳はどうすることも出来ないが、年下風は出来そうだ、エリザベスに甘えられるし・・・部下達には見せれないが・・・
そうしてエリザベスの膝の上に頭を乗せて撫でられる極上の幸せを掴んだフェルナンデ皇国の第一王子だった
あまあまの二人を部下達は見て見ぬふりをしていた。
研究室で皆と日本語で会話
『ざまぁ感凄いね!宣言通り滅んだね~』
魔導師の女の子がウキウキと話して来る
『何?指輪に王家に反応とかいうトラップこっそり仕掛けてくれてたのありがたいけどさ、国は滅んだ❗私のせい?知らんがな!あれは結局自業自得っしょ!?』
それから激甘な結婚生活にどっぷりつかり幸せになったエリザベスだった。
完