レルの真実
総駕とドゥクスは大野崎の追走を振り切り車に乗車。
息を整える2人、逸る総駕は思いついたように言った
「なあ急いでんなら転送装置か何かで一気に行けねぇのかよ!?」
「できたらやってるわよ!」
最高速度で走るドゥクスは溜息混じりに返す。
「何でだよレルはテレポートしてただろ!」
ドゥクスは眉間に皺を寄せた…
「…あの子は……特別なのよ…」
「どういう事だ?」
沈黙に包まれる…険しい表情のドゥクスに何も聞けなくなる。
間が開くに連れ様々な思考が頭を覆い尽くすーー
ーーこの先にパラパラが居る…
勝てば総てを変えられる。
…レル…待ってろ
俺も戦う …
勝たなくちゃ………勝たなくちゃ……
勝たなくちゃ行けないんだ…俺は!!。
結衣も…皆んなも必ず元の生活に戻ってこんな殺伐とした世界を抜け出す。
周りの景色が加速する中、総駕の鼓動も早まる。
強張った表情を横目でドゥクスが見る…
ーー今天流寺が感じているプレッシャーは人生で1番大きいでしょうね…
何せ、世界・人々の魂が掛かっているのだから…
ーー貴方のカードを変えた可能性…人を変える可能性…確かに掛けてみたくなる。
けれど客観視してその可能性が有ってもパラパラはきっと届かない存在…。
ドゥクスはスマホの画面に表示されたメッセージをチラリと見て微かに笑う。
あの男が居れば届くかもしれないーー
ー絶対的な力にも。
ー私は何も思わない感じない世界を望んだ
それがどういう訳か今は未来が欲しいと望む自分も居る…。
ーだからこそ神をも凌ぐ人の可能性を見たい。
間も無く目的地に到着そこは高層ビルだった。
思考に深く没頭する総駕が車の停車でハッとする。
緊張した面持ちの総駕と険しい表情のドゥクス、
2人は高層ビルに早足で駆け込む。
エレベーターに乗り込み最上階のボタンを押す。
上昇するエレベーターの中総駕は戦いが迫っている事を更に強く実感した、すると指先がプルプルと震え出す。
それを片手で黙らせるが両手とも小刻みに震えて
深い息を吐いた。
『…16歳の子供には荷が重いか…』
ドゥクスが心の中で呟く。
そしてーーエレベーターの扉が開く。
ーー扉の先には…レル⁉︎
険しい表情で敵を見据える。
既に戦いが始まっていた、
総駕もレルの目線の先を追う…自然と眉間に皺が寄る。
遂に…直接会う事が叶った…。
シルクハットにマスケラ、タキシード姿の男…。
"" パラパラ…""
余裕綽々のパラパラは此方に気がつく
「これだから中途半端な人間は
貴方まで気が変わったのですか?ドゥクス」
「それもあるわね」
微かにドゥクスは笑う。
レルが振り向く
「天流寺…」
レルと総駕の視線が合わさる。
「お前、、どうして奴と戦うんだ…」
"私は誰も悲しまない世界を望んだ"
「誰かが泣いてたからさーー」
ーレルは体を向き直しカードを構えた。
レルの言動に胸が熱くなる。
素早く2枚のカードが解き放たれた
「私はゲート/ミストゲートをオープンアップ」
冷気がフィールドに満ちてゆく
「ディメンションサモン誰にも囚われぬ神秘の蝶
"ミストバタフライ"」
---戦況はレルのフィールドに
サイレントノイズとミストバタフライの2体。
レル TC 12。
対するパラパラはフィールドにモンスターは居ない。
パラパラ TC 10。
両者の手札は10枚近くあり、レルの手札には何故かミストゲートと他のゲートが複数有った。
この状況に総駕は違和感を覚える。
「行けサイレントノイズ」
超音波を操るサイレントノイズのアタックがパラパラのクリスタルに向かう。
「TS グングニルの槍
私はコスト4の疾風・阿の門を手札から捨て
同じコストを持つモンスターを破壊」
カードから神速の槍が飛び出しサイレントノイズを貫く。
超音波がクリスタルを目前に途絶えた。
レル TC12➡️11。
「更にグングニルの槍は私の場にモンスターが存在せず、相手にまだモンスターが居れば手札に戻る」
放たれたグングニルの槍がパラパラのカードの中に自動で戻った。
「まだだ!ミストバタフライのアタック」
"プォオオオオ"
鱗粉のように光る水飛沫が舞いパラパラに向かって飛び立つ。
「TSディメンションガード
アタックを無効にカードを引く」
声色ひとつ変わらずパラパラは余裕を見せつけ攻撃を凌ぐ。
障壁に弾かれたミストバタフライはレルの場に帰還。
「ターン…終了だ」
レルからはもどかしさが感じられた。
パラパラの第5ターン。
「レル貴方は私には敵わない、天流寺総駕でも」
「クリスタル解放しターン終了です」
レルにターンが切り替わる。
-第6ターン-
「私は全力で最後まで足掻くさ…」
レルがカードを引いた。
「分かりませんね、ただの傍観者でいれば望んだ世界を見れたと言うのに」
「その世界もただ諦めてるだけだって事に気がついたんだよ」
パラパラが笑う
「ハッハッハ響きの良い言葉を並べてるだけですね…」
ーー「結局人は私利私欲の為に戦うんですよ」
「だから貴方達は世界の再構築を望んだ、、
だが…再構築、今の過程で争いを見て気が変わったんでしょう…?それは小さな犠牲に過ぎない」。
「生まれ変わった世界では争いも欲も無い真の平等がある」
ドゥクスは何も言わなかった。
レルが首を振った
「それが人を諦めているのだ!パラパラ」。
「諦めか…少し違う割り切りと言うべきか
既に結果を見たから断言できるんですー
そして嘗ては無かった絶対的な力が今の私にはある…だからやるんだ」。
「勝手な事ばっか言うな」
総駕が声を張る…頭の中に結衣の最後が鮮明に浮かび上がる。
「何が小さな犠牲だ…人を戦うように仕向けてやってる事はめちゃくちゃじゃないか」
「所詮は子供…君如きに理解する事は出来ない」
「納得できるか皆んな必死で今を生きてんだよ」
「有象無象が何をしようが無駄な事
大事なのは何を成すかだ…」
「なっ…有象無象…⁉︎」
「今の権力者達は保守的で自分を守る事しか頭にない屑。そして民衆は自分の境遇に文句を垂れ自らは変わろうとしない。」
「もはや救える余地も無い、今も何処かの国では争いが有る。同族を殺す生き物も人だけ。
人類には修正が必要なんですよ」。
「長話がすぎるゲームを続ける」
レルが手札を突き出し構える。
「おっと、そうやる気に満ちている所申し訳無いのですがレル…貴方には一つ重大な事をお伝えして居なかった」
パラパラが仮面越しだがニタリと笑うのが分かる。
「よせっ、、言うなパラパラ!!」
ドゥクスが焦るようにパラパラに駆け寄る
「…レル貴方は本当の名前を覚えて居ますか…」
笑いを堪えるように言った。
「私の名前だと?…」
「出会った当時覚えていなかったようですので
まぁ最後ですし…伝えておこうかと」
「レルちゃん!奴の言葉聞いちゃダメよ」。
「貴方の名前を調べる時分かったんですよ…
ある事実が…」
「回りくどいぞ」
「じゃあ手短に…
貴方は既に死んで居たんですよレル」
レルは訳の分からない様子だった
「……何を 言っている」。
「この世界では…実態が無ければ戦う事は出来ない…実態を転送するシステムなど無い
なのに何故貴方はテレポート出来るのか!」
「何故私がプレイヤーとコンタクトする時ホログラムなのか?」
「貴様ァァア」
ドゥクスがパラパラの目前に声を張り、後方のレルを見る……
「レルが…死んでいる⁉︎」。
「私が…死…だと」
レルが固まる。
「つまり貴方が霊体という結論に至りました、
…信じられ無いでしょうがドゥクスの反応が物語っているでしょ?」
不安な顔でドゥクスを見る
「ドゥクス…私は⁉︎…」
「そんな訳ないじゃ無い!パラパラのウソよ」。
「嘘ではありませんよ、何故なら私がドゥクスに指示し、貴方の死亡記録を確認したのです」。
「本名はレイナ・キングスレー戦争で死んでいますよ」。
「っ戦争…ウソだ…」
「この世界に来る前をよく思い出して下さい、
匂い 音 色は?」。
レルの記憶が鮮明に甦る。
ドゥクスが感情を剥き出しにする
「パラパラ…ッ何故貴様このタイミングで」
「SEの貴方なら分かるんじゃありませんか?」
ドゥクスが歯軋りをする
「DDTのシステムは脳波と同調しているから…思考の放棄によって自動でターンが切り替わる」
『今思えば全てパラパラの策略通りだった…。
レルちゃんの死亡記録も脳波との同調も全部
パラパラが準備してたんだわ』
「卑怯だぞ…」
総駕は拳を握る。
「レルッ!しっかりしろこのままじゃヤバいぞ」
レルの身体が映らないアナログテレビの様に不安定になる。
「…私は…⁉︎
私が死んでいる⁉︎」…五感の記憶が紐解かれたーー
ーー漂う硝煙の匂い…
煩く爆ける銃火器の音…
辺り一面を覆い尽くす戦火、立ち昇る黒い煙。
「レルちゃんッ」 「レルッ」
総駕とドゥクスの声が届かない。
ターンが再びパラパラに切り替わるーー
「ハッハハハ私のターン」ーー
ーー「クリスタル解放…」
「まずいわ…レルちゃんの身体がッ
このままじゃ消滅する…」
「こんなの無効だ!本気で戦え汚ねぇぞ」。
「フッフフ、うまく行きました…
私はね…気味が悪いと思ってたんですよ」
「何ですって?!」
ドゥクスが眉間に皺を寄せ嫌悪した。
「ゲームでは私の勝利は揺るぎませんが、
非科学的な存在が不安要素だった」。
「だから私は初めからあの女をどうやって消すかまで考えてましたよ」
この世界で初めて出会った時から奇妙に感じて居た、だから情報を引き出した。
「ドゥクス…バーナム効果を知っていますか?」
ドゥクスはハッとした「まさか」、
総駕は首を傾げる。
「…誰にでも当てはまる事をさぞ自分を分かったように言ってしまう事ね」
「心地いいでしょう、自分を多く語らずとも内面や過去全てを理解された気になるのは…」。
「初めは警戒心の強かったレルも次第に自分の事を話すようになり、自分の故郷や経験した事まで知る事が出来ました」。
ドゥクスが怒りを露わにした
「天流寺いつか私はパラパラを光郷院と同じだと言われ否定したわ、けど奴は同じ悪そのものよ…」
「何と言ってくれても構いませんよ
貴方の功績は大きいフフフフ」。
レルが手札を落とす
「イヤッ! 皆んな…何で…」
頭を両手で抱える。
精神が不安定になる様が分かる…周りの声も届かない。
身体の歪みがひどくなってゆく…
--レルが発狂 ーーーーーーーー
叫び声は彼女の悲痛な最後を想像出来た。
やるせない…総駕とドゥクスが立ち尽くす。
パラパラが悦に入り高く笑う。
レルの身体が崩壊…消滅を始めるーー
ーー駆け寄る総駕とドゥクス…。
両肩を掴もうと手を伸ばす総駕。
その瞬間…甲高い叫び声を上げーそれは断末魔になった…儚く粒子となり総駕の両腕が空を切る。
突如--月明かりが差した…。
ミストバタフライも消滅する。
前のめりに転んだ総駕は両手を見るーー
ー光る粒子が月の元に逝く。
プルプルと両手が震えた…。
理解できない状況に声が漏れる
「…ァ、、アァァァァ」
言葉が出ない…。
空の両手を握り、ゆっくりと立ち上がった。
両目から涙が出て頬を伝う。
…こんなのアリかよ…。
パラパラを見据える総駕。
渦巻く感情を言語化する事が出来ない。
自然とホルダーに手が伸びて行く。
「パラパラ、、、」
震える声で言った。
パラパラがカードをホルダーに集約する
「呆気なかったですね…まぁ後がつかえてたので丁度良い」。
「何で平気な顔してこんな事出来る」
「手の内を明かす事も無いですし合理的でしょう?」
「話にならねぇ」
手がまだ震えてる…緊張じゃ無い-怒りだ。
「始めるぞ…」
2人は対峙しつつ構える、その時ー
ーー後方の物陰から現れる1人の男…。
カツン…カツン…
その足音にドゥクスが頷く。
カツン…カツン…
総駕が振り向く。
ダークブロンドの髪…覚悟を宿した瞳
紺色のシャツに黒のズボン。
「貴方が来るとは」
パラパラが言った。
ディザスターが手に持つホルダーを此方に向け現れた
「この勝負俺も混ぜてもらおうか」。
「貴方は終局の主役だと思ったのですがね」
「ここが終局だ…」
「お前いつから…!!」
総駕が驚きを露わにした。
「奴が戦う少し前からだ」
「ドゥクスが招待したんですね」
「ええ貴方の実力が本物かどうか確かめる為に」
「いいでしょうちょうどサードステージのテストにもなる2人纏めて掛かって来るといい」
「サードステージ…そんなものは無い」
「ここで終わらせるんだ…」
ディザスターと総駕が顔を見合わせた。
「行くぞ」
ディザスターの掛け声がトリガーとなる。
「「「 ---タイムクリスタルーーー
ーーーセットアップ」」」
連なるクリスタルがホルダーから放射、3者のクリスタルが衝突し夜空に弾け頭上に展開された。
「「「サバイブ」」」
掛け声と同時に屋上の床に時計板の模様が浮かび上がる。
ディザスターが6時、総駕が8時に、
そして、パラパラが頂点の12時の位置。
「さぁ…初めましょうか…」
パラパラが悠々と構える。
ディザスターは器を測るように言った
「こっちは挑戦者だ先攻は貰うぞ」
「構いませんよ」
パラパラが即答。
ターンの流れは
ディザスター→パラパラ→総駕→パラパラ
の順に決まる。
「天流寺…俺のスピードについて来い」
正面を見据えるディザスター。
総駕の士気が高まる。
『行けるコイツとなら…
…勝てる…必ず…』…。




